vo.フリティ | ナノ


Aティダロイド…(言いにくい)


「フリオニール…のばら!」
「…何だよ」


最近インストールした…機械に強くないからあまり覚えていないが、実体化し歌うソフトが、とても偉そうに俺の名前を呼ぶ。
そのソフトはインストールした人間のことを名前で呼ばない。更に呼び捨てにしない。更に更に渾名をつけたりしない。と説明書に書いてあった。
…どういうことだと最初は思った。ティーダは平気で俺を呼び捨てにするし、不名誉な渾名で呼ぶ。
バグかと思い、「マスターだ」と教えたが上手くいかない。
運営者に連絡したら、アンインストール後インストールし直すように言われた。
しかし、ティーダが泣いて嫌がったので(俺にはそういう風に見えた)やめた。
ティーダはもしかしたら心に変わる何かを持っているのかもしれない。
それからは単なるプログラムとしてこいつを見ることはせず、高校時代に過ごした寮の、ルームメイトのような存在として見るようになった。
不思議なことだ、見る目を変えるだけで偉そうな態度のティーダが可愛い弟のように思えるのだから。
我儘もあまり苦にならなくなった。


「暇、暇ッス!」


駄々を捏ねる姿を見て、俺は無意識に溜息を吐く。


「歌は?さっきまで楽譜見ながら歌ってただろ?」
「オレの好みじゃないッス!それにオレは、のばらの作った詞がいいんだ」


ティーダは不貞腐れて、ベッドに横たわった。
フリオニールはティーダの何気ない一言に固まる。
趣味の範囲で歌…作曲は出来ないので、詞を作ってきた。今はほとんど作っていない。
それは周りから、詞が臭いだの、童帝臭いだの…とりあえずこてこての詞に憤死しそうになると言われたのがきっかけだったのかもしれない。
だが、ようは才能がないからだった。だから自分の目の届かないところに隠してきたのに、ティーダは押入れの収納棚からわざわざ探し出してきて、目を光らせるようにして歌いたいと言ってきた。


「それは何度も言っただろ?あれはもう…」
「フリオニール、前に言ってたじゃん!バット……?ハッチ、だっけ?同じ大学にいる先輩が作曲家として有名だってさ。そいつに作曲してもらおうぜ!」
「バッツだよ。有名だから忙しいだろ…?諦めろ」
「いや、だ!諦めないッス!」


今度バッチに直接頼みに行くからな!と意気込んでいるティーダに、苦笑が漏れる。
バッツの名前すら覚えられないのに、俺の長い名前は一発で覚えたこと。
素直だが意地っ張りで、でも人懐っこいところ。
俺の詞を歌いたいと言ってくれること。
全てが愛おしく、ティーダのいる今の生活がとても楽しい。


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