vo.バツティナ | ナノ


@ティナロイド


「あーあーあーあーあ、」
「三番目の一番高い音、上ずってる」
「ごめんなさい、マスター」
「イメージとして下から上げるよりも、上から合わせるといいよ」


私は音を合わせたりリズムに乗ったり…とにかく歌うことが苦手であり、そのため廃棄処分対象の予定となっていた。
ただ、力や魔力が強いため護衛にはなるということで、今までインストールしてもらえた。
だが、力の加減が上手く出来ずやることなすこと極端で例えばお茶もろくに出せないため、すぐにアンインストールされてしまい、今のマスターに渡った。
今のマスター…バッツ・クラウザーはとても気の長い人間のようだ。
歌が苦手な私を一から丁寧に教えてくれたり、歌手の歌を作曲して学費を稼いでいるため忙しいのに私のための曲も書いているらしい。
今までの人形の扱いから一転してしまい、戸惑いを隠せない。
音の高低を出したあと、マスターは二度手を叩いた。


「じゃあ、休憩な。飲み物何がいい?」
「マスター、私は人間ではないわ」
「そうだったな。でも、休憩はしようぜ!」


マスターは明るく笑って二人掛けのソファに座り、私を隣に座るようにソファの座る部分を軽く叩いた。
私は逡巡したが、やがて小さく頷いて浅く腰掛ける。
ソファに座ったことなどなかった。柔らかい生地に慣れない。


「ティナ、今の上達振りならそのうち短い簡単な歌を歌えるようになる」
「私、上達してるの?」
「もちろん。歌えるいい声になってきたから、おれの夢がもうすぐ叶うかもな」


マスターはそう言って頭の後ろで両手を組んで、ソファの背に凭れた。
マスターの夢…?


「マスター」
「ん?」
「マスターの夢って…」
「ティナと一緒に歌うこと」


マスターのはにかんだ笑顔とその言葉に、私は胸の奥が疼いた。
エラー?…インストールに失敗したのかもしれない……私はその痛みが何を表すのか分からない。


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バッツは吟遊詩人と踊り子をマスターしていると思われる。
自分好みに育てていく、さすがジョブマスター(黙れ)


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