04:手際が良すぎて暇人発生 | ナノ
04:手際が良すぎて暇人発生
暗くなってきたので、野宿の準備をする。
一日中草原を歩いてきた刹那たち一行は地図によると街までまだ距離があるので、早めに切り上げてしっかり休むことにした。
刹那はアレルヤとテントを張り、ライルは薪を集めにハロと出かける。
その中でティエリアはいつも手持ちぶさただった。
「刹那、僕は…」
「ああ、休んでいてくれ」
「……食事の用意は僕が…」
「しなくていい」
一刀両断されて、ティエリアは口を尖らせる。
刹那は刹那なりにティエリアに気を遣っていた。ティエリアは身分が高く、こういう旅をするのに自分たちと比べて体力が少し劣る。
だから早めに切り上げたり、ティエリアが休んで次の日に疲れを残さないように注意していた。
それが裏目に出るとは知らず。
「いつもいつも何故だ!僕だって出来る!」
「…そうだな」
「だったら何故…」
ティエリアは泣きそうだった。
刹那は何も言わずに杭を打ち、アレルヤはその横で2人の顔を交互に見てあわあわしていた。
刹那の態度にティエリアは憤る。
「もういい!僕は君たちとは違うところで寝る!」
「ティエリア…!」
ティエリアはずんずんと大股で森の方へと行ってしまった。
刹那はテントを張り終えると溜息を吐く。
「いいの?」
「……」
「…君の言うことは正しいよ。でも、ティエリアには言い方があるかもね」
アレルヤが目を細めて言った。
刹那は何も答えず食事の準備に取り掛かる。
アレルヤは苦笑を浮かべると、ティエリアが行ってしまった森の方へ歩みを進めた。
一人になると、ニールがふよふよと刹那の近くに寄ってきた。
『…勇者はパーティをまとめるのも仕事なんだ』
「ここのところいやと言うほど分かった」
『うーん、刹那は分かっているんだろうけど、実際には出来ていないな』
「…知っている」
ニールの言葉に刹那は苛々し始めた。
(俺だけが悪いわけではない。ティエリアが自分の体力を顧みないから…)
ニールが悪いと言うなら、どうすれば良かったのだろう。
刹那は食材を用意したところでテントの側に座り込んで俯いた。
「悩める少年発見」
暫くすると薪を両腕に抱えたライルとハロが帰ってくる。
刹那はライルたちの姿を一瞥して、すぐにまた下を向いた。
「どうしたんだ?」
「別に」
「別に…ね。そんなに俺たちは頼りないってことか?」
ライルの怒ったというより呆れた声に、刹那は顔を上げた。
「頼りない…?そんな風に思ったことはない」
「そっか。でもお前はさ、いつも独りで頑張ってるから。役割を決めたり俺たちをまとめたり…」
「……」
「けど、全部頑張る必要はないと思うぜ?」
ライルはそう言うと刹那の頭をぽんと撫でた。
そのまま座り込んだ刹那の横に自分も座る。
「たとえば力仕事はアレルヤに任せるとか、知恵が必要ならティエリアに頼むとか」
「…ライル、お前はなくていいのか」
「俺は…刹那専用の癒し役?」
「…ばか」
刹那がふっと笑うと、ライルは首を竦めた。
「笑うと可愛いな」
「…嬉しくない」
「そ?褒めてるんだけどなー」
ライルは立ち上がると、刹那に手を差し伸べた。
刹那はライルの手に自分のものを重ね、立ち上がる。
「お前、ティエリアが怒るところから見ていたな」
「ばれた?」
「悪趣味だ」
ばしっとライルの背中を叩くと、ライルは苦笑を浮かべる。
アレルヤまでとはいかなくても刹那の力は強い。
じんじんと痛む背中に気付かない振りをして、ライルは笑った。
「さ、女王様を迎えに行こうぜ」
手を繋いだまま、ライルは刹那をティエリアの消えた森の方へと引っ張っていった。
『…仲がいいのはいいことだな』
「ナカヨシ、ナカヨシ」
『俺とお前には負けるけどな』
「ハロ、ロックオントナカヨシ!」
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