03:持って行きたくても無理だから | ナノ




03:持って行きたくても無理だから


『刹那、それ無理だから』


ニールは仲間が言う前に刹那に忠告した。
しかし、夢中になっている刹那はニールの言葉が聞こえなかった。否、わざと聞かなかった。
刹那が夢中になっているもの、それは壊れた飛行機体エクシアの一部だった。
伝説の飛行機体エクシアに惚れこんでいた刹那は、それを見つけた時天にも昇る気持ちだった。
ただ、それは伝説であり今は壊れている。直せる人間もいない。
だから伝説のエクシアもただのガラクタなのだ。


「これを持って帰る」
「無理だよ…」
「無理じゃない」


アレルヤがやんわりと止めるも、刹那は聞かなかった。
目の前にあるエクシアの残骸で頭がいっぱいなのだ。
刹那が駄々を捏ねるのは珍しいので、アレルヤもティエリアも困っていた。
その中でライルがふと疑問を述べる。


「刹那、そのエクシアをどうするんだ?」
「持って帰る」
「どこに?」
「マリナのところ」
「どうやって?」
「魔法の絨毯で…」
「無理だろ。重量オーバーで絨毯もただの布になるぜ?」
「……」
「大体何に使うんだ?」
「……うう」


ライルに持って帰れないことを理解させられて、刹那は涙を流した。
まさか泣き出すとは思わなかったライルは焦り、刹那を抱き締めてよしよしと背中を撫でる。


「ごめんな、俺が悪かった!持って帰れるよう俺も説得…って、いってえ!」
「何故貴様が丸めこまれてるんだ!」
「だってさ、俺刹那の味方だから」


ティエリアに殴られたライルは、ぶつぶつと言い訳をして更に頭を叩かれた。
馬鹿になったらどうしてくれるんだ、と叫ぶがもともと馬鹿だろうというティエリアの言葉にぐっと押し黙る。


「ひでえ…刹那、慰めて。出来れば身体でさ」
「触るな」
「…相変わらずだよな…お前」


ライルが項垂れる。
刹那はライルから身体を離し、ティエリアに視線を向けた。


「どうしても駄目か?」
「駄目も何も、持っていく方法がない。無理だ」
「……」
「そんなチワワみたいな目で見ても駄目だ」


刹那はちっと舌打ちをする。
アレルヤは自分には聞いてくれないのか、としょぼくれていた。
しかし放置プレイにも快感を覚えるので、むしろ悦ぶ。
アレルヤが悶える傍らで、ニールは呆れた表情を浮かべていた。


『だから言っただろうが』
「…エクシア」
『…お前、マリナさん以外に執着するものあったんだなあ』


ニールは感慨深く呟く。
刹那はむっとしたが、確かに持って帰る方法も置いておく場所もないので諦める方向に向かっていた。
ライルに宥められながら、エクシアの残骸の埋まるダンジョンを後にした。



※おまけ

ティ「刹那、本物のエクシアは駄目だが、フィギュアを作ってみた」
刹「エクシア!」
ラ「すげえ精巧だ…さすがオタク」
ティ「僕に出来ないことなどない」
刹「ありがとう、ティエリア」
ティ「…っ!!!」
ラ「おい、刹那に惚れんなよ?」
ティ「ちが…っ!惚れるわけないだろう!」
ア「そうだよーティエリアが調教するのは僕だけ…痛い!」
ティ「お前は出てくるな!この醜いブタめが!」
ア「はあはあ…もっと強く…!女王様…!」
刹「(無視)エクシア…」
ラ「良かったな、ママが作ってくれて(さわさわ)」
刹「俺に触るな」


『ハロ、俺はお前が仲間で良かったよ』
「ハロモ、ハロモ!ロックオン、ロックオン」

ニールは4人を見ないように、ハロと戯れていた。



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魔法の絨毯…空を飛べてらくらく移動できる絨毯のこと。(ここでは)


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