01:中には不仲なコンビもある | ナノ




01:中には不仲なコンビもある


「ティエリア。お前をここで駆逐する」
「はっ、出来るものならやってみろ」


宿で一晩過ごした後いきなり街中で戦闘態勢に入る刹那とティエリアに、アレルヤとライルは慌てた。
何しろこの2人が喧嘩すると、周りに多大なる被害が及ぶ。
刹那が勇者としての証の勇者の剣を一振りするだけで風を巻き起こし、時には竜巻を起こす。
ティエリアは十中八九攻撃呪文を使う。しかも弱い敵にも容赦なく最大呪文を唱えるので、そんなことになったら街は火の海だ。
身体を張って何としてでも止めなければならなかった。


「おい、2人とも…どうしたんだよ」


ライルが当たり障りなく(だがさりげなく刹那の腰を抱いて)、問い掛けた。
刹那は問答無用でその手を叩き落とす。勇者の剣を振るわなかっただけ、相手と街のことを少しは考えてはいるらしい。


「ティエリアが俺たちの集めた金を魔法少女ヴェーダのDVDのために使った」
「魔法少女…?」
「発売日でどうしても欲しかった。だが僕の持っている金では足りなかったので拝借したまでだ」


堂々と言っているが、良くないだろう。
ライルは眉根を寄せた。何しろ昨夜は酒場やカジノに行きたかったのに刹那に止められたからだ。
貧乏パーティーなので金の無駄遣いはするなという暗黙の了解があった。
だから、ライルは我慢した。
それなのに。


「てめえ、ティエリア!いますぐDVD返してこい!俺だって酒飲みたかったんだぞ!刹那からのチューで我慢したけど」
「何だと!?いつの間にチューする仲になったんだ!」
「お前の妄想に俺を引き出すな。ティエリアもつっこむのはそこではない」
「(ちっ、ライルの妄想だったか…)…いやに決まっている。貴様仮にも僧侶の癖に酒を飲むな」
「酒と賭博は男のロマンだ!払えないんだったら身体売ってでも何とかしろよ!」
「僕を冒涜する気か!僕の身体は神聖なんだ!誰が下賤な奴に…!」


ライルの怒りは治まらず、刹那も唖然とした。
アレルヤは街の人と一緒にことの次第を見守っていたが、そろそろ追い出されそうな雰囲気だったので自分がなんとかしなければならないと思った。


「やめてよ、皆!こんな街中で恥ずかしいと思わないの!?」
「変態が常識人ぶるな!」


ティエリアの一言で、場が凍る。
アレルヤはじわっと瞳を潤わせて、その場に女の子座りした。
顔が心なしか赤い。
刹那たちがやばいと思った時にはもう遅く、アレルヤの病気が始まった。


「もっと罵ってください、ティエリアさま…ww」
「気持ち悪い!近付くな!」


座り込んでいるから近づいていないが、ティエリアは思わず自分の武器である鋼の鞭を取り出してアレルヤを打つ。
アレルヤは言うまでもなく、恍惚とした表情を浮かべていた。


「はあはあ…いたっ、もっと…!」
「この淫乱めが!」
「………刹那」
「…ああ」


刹那とライルは公開SMを始めたティエリアとアレルヤを街の外に排除すべく、引き摺り出す。
街の人は猥褻罪で訴えようかと思っていたが、勇者の肩書にやめておいた。





街から出た4人(と一匹ハロ)は、とりあえず金の確認から始まった。
すっかり怒る気をなくした刹那は、数えてふうと息を吐いた。


「ティエリアが使ったのは3000G…その分戦闘で力を発揮しろ」
「了解した」
「3000も使ったのかよ…そんだけあれば俺の武器が買えたのに…」
「ライル、君は大して戦闘で役に立たないくせに金がかかり過ぎる」
「何だと!?誰がいつもひ弱な坊ちゃんを回復してやってんだ!それにお前の防具だって金かかってるだろ!」
「誰も頼んでなどいないし、僕はひ弱ではない!」


草原で再びぎゃあぎゃあと喧嘩をし始めたティエリアとライルに、刹那は額に手を置いた。
その傍らで寝転がり悶える男が一人。
刹那は八当たりを込めてその男を踏みつけた。


「せ、刹那…!?なに?…もっと、踵で…ぐりぐり、して…」
「………興がそがれた」


本当にどMだな…と刹那は天を仰ぐ。その下で「放置もいい…」とアレルヤは悶えていた。
仲間に恵まれないため、早く魔王を倒して(そんな物語だったのか)マリナの元へと帰りたかった。
少し離れて、刹那は巻き込まれないように3人の様子を見守ることにする。
勇者の剣の傍らにふよふよと浮く、ライルとそっくりの顔の男が憐れむように刹那の頭を撫でた。


『仲間が3人もいるだけいいだろ…俺はハロだけだったんだぜ?』
「ハロはレベル99だから充分だろう」
『まあそうだけど』


そう言って言葉を濁したニールも苦労したに違いない。


「とりあえず、お前の肉親ぐらいどうにかして欲しいが」
『ライルか…どこで道を間違えたんだろうな…』
「せつなー!次の街に行くぞ!」


既にティエリアと仲直りしたらしいライルがこちらに手を振る。


「まあ、退屈ではないな」
『そっか』


刹那はライルに手を振り返し、アレルヤの首輪に繋がっている紐を引っ張った。


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