応急処置 | ナノ



応急処置(調和オール、オニティナ(バツティナ?))


今までに見たこともない綺麗な森に、一行は足を踏み入れた。
コスモスにこの世界に召喚されてから、木は多少あった気がするが、森など見たことがない。
カオス勢もいないしイミテーションもいなかったので、一行はこの森で休息を取ることにした。
ライトは岩に腰掛け、フリオニールが持ってきたミネラルウォーターを口に入れる。
バッツ、ジタン、ティーダは森の中ではしゃぎ、スコールが諌めようとするが逆に引き込まれてしまう。
その様子を遠目から見ていたのが、セシルとクラウドだった。
2人もライトと同じように岩に腰掛けて、アイテムの管理を行う。
その近くでオニオンナイトと歩いていたティナは、森に咲いている花や草を眺めていた。


「綺麗ね」
「ティナは花が好きなの?」
「ええ。フリオニールの持っている、のばらも素敵だと思うわ」


ティナの発言を聞いてしまったフリオニールは、顔を赤くした。
フリオニールは自分の夢であるのばらを知られるのを恥ずかしがっている。
それを知っている仲間で調子のいい男たちが、フリオニールをからかっていた。
全く子どもなんだから、とオニオンナイトがフリオニールたちの様子を見て溜息を吐く。


「あなたは、どんな花が好き?」


ティナが微笑を浮かべてオニオンナイトに話しかけた。
オニオンナイトはうーん、と考え込んでしまう。


「…正直、花を愛でたことないんだけど。あんまり種類も知らないし」
「そうなの?」
「うん。ティナが好きなのは?」
「私は…そうね、」


ティナは少し歩いた先で、小さな白い花を見つけた。


「これとか…可愛い」


ティナはしゃがみこんで小さな花弁に触れた。
その時に、花の後ろに潜んでいた体長2メートルの蛇が突如彼女の腕に絡みつく。
ティナは思わず悲鳴を上げた。


「きゃっ!」
「ティナ!」


ティナの様子にいち早く気付いたオニオンナイトが、雷の呪文を唱えた。
感電するその前に、蛇がティナの細い腕に噛みつく。
ティナは痛みに顔をしかめたが、巻きついた蛇は逃げていきほっと息を吐いた。


「ティナ、大丈夫?」
「ええ…ごめんなさい。注意力散漫で…」
「良かった…」


オニオンナイトは安堵の息を吐いた。
ティナの悲鳴にほかの仲間も2人のところに集まってきた。


「どうした!?イミテーションか!?」


ライトが武器を構えて殺気を放つ。
ティナは首を横に振った。オニオンナイトが苦笑を浮かべて経緯を話す。


「でかい蛇が襲ってきたんだよ。みんなも気をつけてよ」
「…蛇?」


ティナの悲鳴を聞くまでふざけていたバッツが、眉を顰めた。
隣にいたセシルがどうかしたの?と声を掛ける。


「いや…何でも…」
「ティナー、腕に巻きついてきたッスか?布が破けてる」
「…!!!」


ティーダの何気ない一言に、バッツは目を瞠った。
すぐに前にいたスコールを退かし、バッツはティナの蛇に巻かれた腕を凝視した。
突然のバッツの行為に、仲間は驚く。
バッツは仲間の驚きを気にせずティナの腕にある噛まれた傷口を確かめて、眉根を寄せた。


「フリオニール、綺麗な水はまだあるか?」
「へ…?あ、ああ…ここに」


フリオニールから水の入った容器を受け取り、バッツは口で蓋を開けた。
ティナの腕を取り、そのまま上からミネラルウォーターをかける。
何をしているのか、フリオニールは納得した。


「ティナ、蛇に噛まれたのか?」
「え、ええ…少し。だけど、大丈夫かと…」
「セシル、毒消しは?」
「あるよ」


セシルはすぐにバッツに毒消しを渡した。
毒消しを患部に流し、少し緩めに包帯で縛り手当は終了した。
噛まれた本人はよく分かっていなかったが、バッツの手当てにより毒が全身に回る前に回復出来た。


「よしっと。ティナ、蛇の毒を甘く見ちゃだめだ。昔おれが噛まれた時は、熱が出て暫く動けなくなったからな」
「ええ…ごめんなさい…」
「ま、暫く安静にしてくれな」
「うん」


ティナはありがとうと述べた。
どういたしまして、とバッツは言いティナに微笑みかける。
2人の微笑ましい様子を見て、ジタンはそうかと手を打った。
逆に2人のやりとりを側で見ていたオニオンナイトは、落ち込んでいる。


「…そういや、バッツは旅人だからな。手当すげえ早かったな」
「うん、そうだね。…はあ…」
「なんだよ玉葱、溜息なんか吐いちゃって」


分かっているくせに、ジタンはオニオンナイトに絡む。
十中八九楽しんでいるのだろう、オニオンナイトはジタンを睨み、頬を膨らめた。
そこにぼそりと呟いたのは、クラウドであった。


「お前が蛇から彼女を守ったのだろう」
「クラウド…でも、僕がもっと早く退治出来ていたら…」
「過ぎたことを悔いても仕方ない」


ジタンの隣に座っているスコールが返す。
それでもオニオンナイトの気分は晴れなかった。
ジタンは内心ここで俺たちが何を言ってもだめだろうな、と感じていたのでそれ以上何も言わなかった。
バッツと話し終えたティナが、オニオンナイトの方へと向かってくる。


「あなたも…ありがとう。びっくりして動けなかったから、本当に助かった」
「え…ティナ…!」


恋心を抱いているティナに感謝されて、オニオンナイトの機嫌はよくなった。
先程までバッツにいいところを取られて泣きそうになっていたのが、嘘のようである。
現金な奴、とその場にいたジタンを始め3人はそう思っていた。
素直に喜んだオニオンナイトは、行儀が悪いがバッツに向かって指を差した。


「バッツ!僕負けないからね!」
「お、何だ?手合わせのことか?それならおれも…」
「違う!!」


そして相変わらず鈍いバッツを見て、周囲はオニオンナイトに同情した。


「早食い、なのかな?」


更に天然少女の発言に、脱力したのは言うまでもない。


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