友情と嫉妬 | ナノ


※(気付いたら小説)TA後。
 セシルのキャラが大分違います。


「はい、これ君の」
「……?」


セシルの…王の部屋の前で呼びとめられたカインは、紙袋を二つ持ったセシルにそれを押しつけられた。
困惑したのは条件反射で手を差し出したカインだった。
セシルはカインの様子を気にも留めずに紙袋の中に入った贈り物と思われるものを取り出しながらべらべらと話し始めた。


「これがルカから、あとこれがポロムからね。それとこっちがリディアからで……」
「…何だ?これは」
「カインへの贈り物だよ。三日前、君の誕生日だったろう?」
「…ああ」


すっかり忘れていた。
しかも今日赤い翼は帰還したばかりだったので、報告等忙しく更に忘れていた。


「君たちの任務遂行中に届いたんだ。わざわざバロンに持ってくる健気な女の子もいたけどね」


セシルの言葉に少し…いや、かなり棘を感じる。
一体何が原因なのか分からなかった。だがおそらくこの紙袋が原因なのだろう。


「…セシル、何を怒っている…?」
「何も怒っていない。君への贈り物をするのに仮にもバロン王である僕を介したり、僕に逢うのはついででカインが目的だったり…僕は寛大だからね、何も怒ってないさ」
「……本音が分かるぞ」


いつも溜めていると思われるだろう本音というか愚痴を、セシルはいつもにこにこ笑って隠していた。
しかし、時々自制が利かずにぼろぼろと本音が漏れる。
最初の頃はローザと共にセシルは腹黒ではないか、と疑ったりもしたが、そうではなくストレス発散をしていると言った方が正しいのかもしれない。
何年経っていようと変わっていない親友を見て、カインは苦笑を浮かべた。


「大体君さ、もういい年なんだよ。僕もだけど。それなのに何この量、何でダブルスコアになりそうな子たちからもててるんだ?下手したらエッジになるぞ。ああ、せめてポロムにだけはやめておいた方がいいって言っておけば良かった…」


ぶつぶつと文句を言うセシルをスルーし、カインは感謝の言葉を述べた。


「まあいいさ、ありがとう」
「どういたしまして。セオドアもさっき僕に聞いてきて君に渡したいものがあるって。息子って理不尽なものだよね、「何でカインさんの誕生日教えてくれなかったんだよ、バカ!」って言われたよ。僕に向かってバカだって。…カインには懐いてるのに」
「…親に甘えているんだろう」
「相変わらず、君は優しいね」


セシルはやっと落ち着いたのか、自暴自棄のような笑みを浮かべた。


「セシル?」
「ごめん。ただの嫉妬だ」
「嫉妬?」
「僕のやることが空回りしていたりするからさ。あーあ…みっともないな…」
「いや、そうではなくて。セシルが俺にな」


素直に驚いていると、セシルはきょとんとした顔でカインの方を見た。


「当たり前だろう?僕だって君に妬くことはたくさんあるよ?」
「……そうか」


よく考えれば、セシルだって人間(半分は月の民だが)なのだから嫉妬等しないわけがない。
思えば、自分だけローザが愛しているセシルに嫉妬していると勘違いをしていた。
セシルだけが…と思っていた過去は、どうやら自分の中の嫉妬心が生んだ誤解らしい。
今セシルから訊いた彼の本心に、カインは心底安堵した。


「僕はまだ言ってなかったね」
「?」
「誕生日おめでとう。そして、お帰り」


セシルの笑顔に、カインも釣られて微笑んだ。


「ああ。ただいま」



※おまけ

「今日夜にローザたちが君の誕生日を祝いたいって。空いてるかい?」
「ローザが?ああ」
「そう、良かった。実は兄さんにも声掛けておいたんだ」
「…無理だろ。たとえお前の誘いでも、ここまで来るのは不可能だ」
「そうだと思ったんだけどね、黒竜を送ってくれるって」
「…欲しいな」
「え?」


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