殺したいほど愛したい | ナノ


※(気付いたら)TA後


殺したいと愛したい…二つの感情は相反することなく俺の中に存在した。
愛する女は親友を愛しており、愛しさ余って殺して自分のものにしたいと何度も思った。
対する親友の方は愛する女を奪われ殺してやりたいと何度も思ったが、愛する女と同等かそれ以上に愛しいと感じていた。


「いつまでたっても…無防備、だな」


王になった今でも、セシルは気を赦した相手には無防備だった。
熱のあるセシルを無理矢理寝かしつけたのはカインだった。彼らの子どもにも移っているためローザに頼まれた。
ローザはもちろんセオドアの面倒を見ている。
砂漠を越える時にかかるあの熱よりはまだましらしいが、随分荒い呼吸を繰り返していた。
カインはセシルの額に手を置き熱の高さを確かめて、先程濡らしてきたタオルを額に置いた。
セシルの苦しむ表情が少し和らぐ。
カインは目をすっと細める。
自分の中でまた愛と殺意が湧いてきた。
カインはセシルの首に指を這わせた。
少し汗ばんだ彼の首を撫で、喉のあたりを親指の腹で優しく押す。
セシルは少し呻いた。人間の弱い部分を他人に晒しているから当然だろう。

(このまま…)

カインはもう片方の手もセシルの首に添えた。
苦しむほどではないが、ゆっくりと力を入れていった。


「……お前は、いつも抵抗しないんだな」


カインは思ったよりも低い声で呟いた。
セシルがゆっくりと目を開く。瞳は少し濡れていた。
思ったよりも熱が辛い、らしい。もしかしたら、俺が首を絞めている事実で、かもしれないが。


「……君に、は…そうする…理由がある…」
「王が兵士に殺される…それを放置するのはどうかと思うが?」


自分のやっていることを棚に上げて、カインは呟いた。
セシルはカインを睨むように見つめていたが、熱のせいか覇気のない声でぼそぼそと喋る。


「それで…も…僕は、」
「…狂ってるな。お前も、俺も」


くっと笑ったカインは、両手をセシルの首に添えたまま上体を屈めた。
影が濃くなり、セシルはカインが何をするのかじっと見つめる。
カインは舌でセシルの唇を舐めてそのままこじ開けた。
熱い。おそらく熱のせいだろう。
融かされそうだとカインは他人事のように感じていた。
そのままセシルの唇に歯をたてて、ぷつりと血を出す。
唾液と血の混じったものがセシルの顎をつたり、流れる。
それを首の手を外して掬いとり舐めると、セシルはどこか遠くの方を見ているようだった。
それが過去の自分と彼なのかは分からない。


「…カイン、うつ…るよ?」
「それほど柔ではないさ」


つっこむところが違うな、と思いつつもカインはそれ以上何も言わずに天蓋付きのベッドに腰掛けて、セシルの頬を撫でた。


「…お休み、セシル」


先程のキスの時に睡眠薬を含んでおいたので、セシルはすぐに目を閉じて寝息を立てた。


「俺はお前を…殺したいほど、愛しているんだ」


カインはそれだけ呟いて、ベッドから離れた。


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