壊れた関係 | ナノ


※FF4のネタバレと妄想が入ってます。


この世界に来て、やっと皆に逢えた。
皆もクリスタルを手に入れることが出来た。
カオスに加担する者たち…兄さんも含めて、僕たちは戦っている。
コスモスの意志を継ぐため、カオスを止めるために。
一番後ろを歩いていた僕は、ふと仲の良いバッツとスコールとジタン、そしてティーダを見た。
じゃれあっている姿は、とても微笑ましい。
そんな状況ではないが、バッツやジタンあたりはみんなを暗くさせないためにやっているのだろう。
そんな気遣いの出来る人たちは単純に凄いと思った。
それと同時に、スコールをからかったり背中を叩いたり、本当に仲が良くて友だちはいいものだなと漠然と感じた。

(僕は、僕自身の誤ちでなくしてしまったけれど…)

クリスタルを手に入れてコスモスが僕たちに託してくれたあの日から、少しずつ元の世界での記憶を思い出していった。
たった一人の親友。そして、幼少の頃から彼の心を痛め続けていた自分は、彼にどんな風に見えたのだろう。
僕は彼に謝ることが出来なかった。彼がプライドの高い人間だということ、加えてまた拒絶されたら僕らの関係が粉々になってしまうかもしれないから。
彼の二度の裏切りは相当応えた。しかし今までの彼の苦悩を考えれば、赦すことは自分には当然だった。
それでも、冷え切った心は戻らない。最悪の事態を考え、そうならないために距離を置いた。互いに。
彼は修行をすると言って以来バロンに帰ってこない。僕は使者を送ったが、自分から逢いに行こうとしなかった。
僕たちの関係は、崩れかけたクリスタルのようだった。そっとであっても触れてしまえば壊れてしまう。かろうじて繋がっている…そんな状態。

(小さい頃は、あんな風に彼女も一緒に遊んだけれど…あれは、本当だったのかな…)

僕には楽しい思い出だった。それすらも彼が厭わしく思っていたら…
壊してしまうのは簡単だ。元に戻すのは難しい。無理なのかもしれない。
セシルは立ち止って仲の良い四人を見つめた。

(傍から見たら僕らも仲が良かった。だが、壊れてしまった。…君たちも、そうなる時が絶対に…)

セシルはそう考えて、はっとなる。

(今、僕は何を思った?…彼らの不幸を願った…?)

セシルは愕然とする。
自分が上手くいっていないからといって、人の不幸を願うと思わなかった。

(最悪だ…どうかしてる…)

セシルは立ち止ったまま顔を押さえた。
ティーダが振り返り、首を傾げる。


「セシルー、どうしたッスか?」


その声に、皆も立ち止り少し遠くで立ち止ったセシルに振り返った。
暗黒騎士であればもっとうまく誤魔化せたかもしれないが、今はパラディンだった。
皆を心配させてはいけないと思ったセシルは、精いっぱいの笑みを溢す。
元の世界で王となって以来、笑顔という仮面を取りつけるのは苦難ではなくなっていた。


「何でもないよ。ごめんね」
「…それならいいッスけど」
「皆もごめん」


セシルは早足で追いつき、一番前を歩くライトに先を行くように促した。
再び歩き始めた一行に、セシルはほっと息を吐く。
仲間にこの感情を知られたくなかった。仲間だけでなく、誰にも。

(…今は、カオスを倒すことだけを考えなければ…)

セシルの苦悩を映し出す顔を、バッツとクラウド、フリオニールが見ていたことに彼自身は気付かなかった。


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