210の日! | ナノ


※210未満、多々捏造有


カオス勢との戦いとなったためセシルとクラウドとはぐれてから、随分時間が経った。
万が一のためにセシルからひそひそうをティーダが託されていたためすぐに連絡は取れたが、思ったよりも距離がある。
しかももう辺りは薄暗い。昼夜の感覚があるところは限られているが、ここ…皇帝の城とも呼べるべき場所は昼夜があった。
仕方なく野営の準備をする。もちろん辺りに不穏な気配はないか、万が一の場合すぐに応戦できる、あるいは逃げられるかを考えた場所で、だ。


「明日にはセシルたちと合流したいッスねー…」
「そもそもお前がジェクトのところへ突っ走るからだろう」
「へへ…セシルもそれが分かってたから、これオレに渡したのかもな」


苦笑いをしながら後ろ頭を掻いたティーダが持っているのは、先程連絡を取り合うために使ったひそひそうである。
初めて逢った時にティーダに渡したセシルは、あらかじめこういうことが起こると予測していたのかもしれない。
それか、一番迷子になりそうなのがティーダと判断したのかもしれない。
どちらにしろ、今の状況の中助かるアイテムであった。
フリオニールはそこらにあった木を集めて火をおこし、荷物整理を始めたティーダに温かくするように言った。
ティーダは頷き、荷物を持ったまま火のところまで来た。


「あったけー…やっぱ寒かったッス…」
「ああ…あと飯をどうにかしないとな」
「うーん…干し肉ならあるけど、これじゃあ足りないよなー…」


荷物の袋の中を見て呟くティーダに、フリオニールは苦笑を溢した。


「それは取っておいた方がいいだろう。…まだ真っ暗ではないから、狩りに行くか」
「フリオの夜目と弓が活躍ッスね!」
「ティーダが囮になるんだぞ」


足の速いティーダを見込んで言うと、彼は了解のポーズを取った。




辺りが薄暗いことであまり獲物は獲れなかったが、それでも腹の足しにはなる程度はあった。
少しは干し肉にし、あとは丸焼きにする。
狩りを終えたあとティーダが始終静かなのがフリオニールは気になっていた。
ティーダは普段とても明るく、皆を元気づかせているが、その反面落ち込みやすい。すぐに浮上することが多いが。
それでもなんとなくフリオニールはティーダの元気がない姿を見ると、なんとかして元気づけてやりたいと思っていた。
手のかかる弟のような存在だからかもしれない。
フリオニールは手早く丸焼きにしたものを食べ終え、少しスペースを空けてティーダの隣へと座った。


「…元気ないな」
「…分かるッスか?」
「普段が普段だろう?だからお前が凹めば誰でも分かる。何か心配ごとでもあったか?」


フリオニールは言葉の選び方はともかくなるべく優しく問うた。
自分自身は人の悩みを聞く機会があまりなかったように思える。元の世界の記憶はあやふやであるが、少なくともこの世界に来てからクリスタルを集めるまでの間クラウドの悩みには戦うことしか出来なかったし、ティーダの場合は……上手く叱咤激励出来たのかも分からない。セシルやティーダの方が得意そうに見えた。
フリオニールの言葉にティーダは両膝を立てて顔を埋める。


「…情けないなって、」
「ん?」
「オレのせいでフリオニールまで巻き込んじゃったしさ。自己嫌悪に浸ってるんだ」


どうやらこうなってしまった状況について言っているらしい。
フリオニールを巻き込んだというのは、正しくない。皇帝を蹴散らした後むしろ自分から彼を追った。
一人消えて心配だったのもあるが、それだけではない気がする。
今心の中で少しずつ動き始めている感情を上手くまとめることは出来ないが、ティーダのせいではないことだけは自信を持って言える。


「お前のせいじゃないさ」
「うそだ。オレ、親父のことになると目の前のことすらも怪しくなるし……周りなんて、余計…だから…」


うわあー、と奇声を上げるティーダの頭を、がしがしと乱暴に撫でた。


「ばかだな。そんなこと考えてたのか」
「ばかって何だよ!」
「そのままの意味だ。何のために仲間がいるんだ?自分だけで何もかも出来るわけないだろう」


フリオニールの手から逃れたティーダは、思ったよりも彼の表情が真面目であったことにやっと気付いた。
ティーダは一度瞬きをし、フリオニールの瞳を見つめる。


「お前がジェクトと対峙している時は、俺たちが周りを見てやるさ」
「……フリオも猪突猛進だから、周りが見えてるかどうか…心配っちゃ心配だよな」
「何を!?この、」
「うわあっ!」


フリオニールの腕に頭を抱え込まれ、ティーダはこめかみの辺りをぐりぐりと押された。
フリオニールはもちろんギブギブ!と言うまで赦さなかった。


「いってえ……フリオ、ばか力ッスね!」
「じゃあ、加減しなくていいな」
「うそうそ!冗談!」


ティーダは迫ってくるフリオニールに対して両手を振って誤魔化した。
フリオニールは笑い声を上げ、再び地面に腰を下ろす。
ティーダもつられて笑った。


「…フリオニール、ありがとな。お前がいてくれて、良かった」
「お前には借りがたくさんあるからな」
「借り…ッスか?なんかあったか?」
「まあな。それに……お前を追ったのは、俺の意志でもあるしな」


それが何を示すのか分からないが、仲間を想う気持ちに変わりはないとフリオニールは思った。
フリオニールは知らない。ティーダがその言葉を聞いてどう思ったのかを。


ティーダはフリオニールが何のことを言っているのか正しく理解は出来なかったが、いつも通り恥ずかしいことを言っていることだけは分かり、首をぶんぶんと振った。
火に近付いているからかもしれないが、異常に頬が熱いからである。


「そういうの、ティナに言ったら駄目だからな」
「は、ティナ?何故彼女が出てくるんだ?」
「……どっちもぼけてるから、別にいいッスかね…」


ティーダは初対面の時に感じた通り、フリオニールのようなタイプは少し苦手だと認識を改めた。
妙に調子が狂うのは、フリオニールの言葉が直接的であり、心に響くからだとティーダは結論づけた。


****
210の日に間に合いませんでした…!くっ!
油断するとティーダが乙女ちっくになってしまう…
因みにひそひそうとPHSどっちにしようか迷い、電波がなくても良さそうな前者を選びました。前者は4のキーアイテム、後者は7のです。

追記:校正したつもりが直っていなかったのでしました。すみませんでした(2/12)


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