理想と現実 | ナノ


※双子でニルライ


「可愛いな、この子」


ニールは自室でぱらぱらと雑誌を捲りながら、独り言のように呟いた。
実際独り言だったのかもしれない。
ライルはニールの座る椅子に両腕を凭れ、後ろから覗く形でその言葉を拾った。


「なに、どの子?」
「この子」


ニールが指したのはグラビア雑誌の、一記事に映る姉御肌のような少女だった。
胸は大きい部類に入るだろう。雑誌の中では小さい方であったが。
ただスタイルは抜群によく、俗に言う「いい女」を表しているのではないか。
あいにく、ライルは包み込んでくれるようなタイプは好きだがお姉さんタイプはあまり好きではなかったため、食指が動かなかった。


「そっか?俺はこっち」


ライルが指したのは、清純そうで白いワンピースの似合う少女だった。
胸はでかいのに汚れを知らない…そんな顔立ちである。


「ばかだな、ライル。こういうタイプほど厄介だろ。清楚な顔して裏で何やってるか分かんなかったり、本当に清純で結婚迫られて断ったら訴えられそうになったり…!」
「…兄さん、それ経験談?」
「…半分は」


熱が入っていく言葉と違い、顔が真っ青になるニールに、ライルは肩を竦めた。
以前第三者に聞いてみたところ遊んでいる様子があるのは不本意ながら俺の方だというのに、双子の兄は影で何をやっているか分からない。
そんなことを繰り返したから、タイプが変わったのかもしれないと思った。


「で、結局姉御タイプ?」
「まあな。弱った時に甘えたいんだよなー出来れば豊満な胸の中で。「頑張ったわね、ニール」とか言われたい」
「それは俺もあるかも」


笑いながら同調すると、椅子に深く腰掛けていたニールが背凭れに片腕を回してこちらに身体ごと向ける。
雑誌から視線だけをニールの方へと向ける。


「どうした?」
「ライルは俺に甘えればいいじゃん。「頑張ったな、ライル」って言ってやるよ?」


本気で言っているのか、何故か顔を輝かせているニールに呆れることしか出来ない。
兄貴気質だから甘えて欲しいと言うのは分かる。そればかりでは疲れるので母性の強い女に甘えたいと思うのも。
だが、男に…弟に甘えられて嬉しいものなのか。
自分が逆の立場でニールに甘えられたら……一瞬考えて、すぐにやめた。
不気味すぎるからである。


「俺は女の子がいいんだけど」
「えー!」
「えー!じゃないだろ。俺も柔らかい胸がいいんだよ。あんたのじゃ、厚い胸板だろ?」


それで嬉しいと思う奴がどこにいるのか。少なくともライルは喜ばない。
ばっさりと切り捨てると、ニールは顎に手をあてて何やら考え始めてしまった。
十中八九どうでもいいことだろう。
そんなことを考えるぐらいなら、新しい彼女作るために時間を使った方が有効的な気がする。
あほらしい、とライルは両腕を椅子の背もたれから外してリビングへと行こうとした。
兄に背後を向けた瞬間、椅子から乗り出したニールに頬を掴まれた。
無理矢理ニールの方へと顔を向けられ、身体のバランスを崩し、慌てて椅子の背凭れを掴んで体勢を立て直す。


「何する…っ!」
「でも、お前は女じゃ満足できないだろ?」


髪を掬われたと思うとふっと左の耳元に息を吹きかけられ、耳朶に軽く歯を立てられ…背中に寒気が走る。
すぐに頬を掴むニールの右手を振り払い、左耳を押さえた。
ニールは面白くて仕方がないのか、くつくつ笑って椅子から立ち上がり、こちらに近付いてきた。
頭の中で警報が鳴り響いて止まない。捕まえられたらもう逃げられないのに、足が上手く動かずゆっくりと一歩ずつしか下がることが出来ない。
思った通りすぐに追いつかれて逃げ場を失った。
それでも、ただではやられたくないと思うのは、兄には負けたくないからだろうか。


「…ったく…、趣味、悪いよな…」
「俺のこと?それともお前のこと?」
「……っ…どっちもだよ!」


くってかかるように言い放ったところで、吐息すら誰にも渡さないとばかりに唇に噛みつかれた。

****
クリスマスのとおちが似通った…いつものことだから、気にしない。
私と誕生日も血液型も同じ、某お方に一方的にこっそり捧げます。なんという迷惑!

わわわ、ナカさん(名前出してるじゃねーか)が続きを書いてくださったよ!
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