クリスマス企画ニルライ2009(おまけ) | ナノ


※おまけなので本当に中途半端。


不幸の始まりは、双子の兄が突然自分の部屋に来たことからであった。
厭な予感はかなりしていた。いつもより100倍ぐらい不気味な笑顔を浮かべていたし(大抵良からぬことを考えている)、手に持っているものがコスプレグッズだったのだから…




「ライルー!ハッピークリスマス!」
「……兄さん」


呼び鈴が鳴り誰かも確認せずに扉を開けると、そこには兄がいた。
焦げ茶色のコートを羽織り、降り始めた雪を思わせる真っ白なマフラーを緩く巻いている。
いつもよりはましなコーディネートだな、とライルは心の中で呟き、寒い中来たニールを邪険にすることもなく部屋に入れた。


「どうしたんだよ、今日仕事じゃねーの?」
「つれないなあ。仕事は終わり。忘年会は一次で抜けてきた」
「何やってんだか…」


とりあえず身体を温めるものをと思い、冷蔵庫を開けて未開封のココアを取り出した。
ライルは自分でココアのような甘ったるいものは飲まないが、以前顔に似合わず甘いものが大好きな幼馴染の刹那が置いていったものである。
刹那は今日、大学で出来た友達の一人、ティエリアと出掛けている。よく一方的にティエリアが彼に文句を言っているが、彼らは別に仲が悪いわけではなさそうだ。
面倒なのでこれまた勝手に刹那が置いていった牛乳でココアを作り、レンジに入れた。
スプーンで掻き混ぜて、ソファに座っているニールにココアを持っていくと胡散臭そうな笑みを浮かべて受け取った。


「ありがとな、ライル」
「それはいいけど、あんたがわざわざここまで寄ったのは何で?言ってくれれば飯も用意したのに…あ、忘年会で食ってきたか」


ライルはニールと少し間を空けて2人用のソファに座り尋ねる。
以前は同じ部屋に暮らしていたが、ニールの転勤と諸々の事情が重なり互いに1人暮らしをすることになったのだ。
ライルは今まで2人で暮らしていた部屋にいる。
明日も仕事ならば、ここから仕事場まで通うのは辛いだろう。
するとニールは酔っているのか思ったのとは違う返答が返ってきた。


「ライルとクリスマスしたいなって。ほら、サンタとトナカイの衣装」
「…?」


ニールは胡散臭い笑みを浮かべて紙袋に入った赤と茶色の衣装を取り出した。
クリスマスを過ごすために何故コスプレグッズが必要なのか…
なんとなく厭な想像をしてしまったライルは思わず逃げ腰になる。
ソファから立ち上がろうとした時、魔の手は既に自分の腰へと伸びていた。
つい先程感じた厭な予感が更に強くなる。
いや、もう予感ではない。確信である。


「サンタに調教されるトナカイプレイってことで、ひとつどう?」


ひとつどう?とかそういう問題ではない。
けれどもここで嫌がる素振りを見せれば、相手の思うつぼである。
長年一緒にいるのだから、いやという程兄の性格は理解していた。
ここは相手が呆れるか萎える発言をするしかない。


「俺がサンタならいいけど」
「えー、じゃあトナカイに下剋上されるサンタプレイ?」


上になるならばいい、と遠回しに言ったが、兄の方が上手だった。
そもそもサンタやトナカイのコスプレしてやりたいものではない。
気が抜ける発言をした兄にライルは、「どっちでもいいよ…」と半ば諦めの科白を吐いた。


どっちでもいい、なんて発言は取りやめるべきだった。
トナカイの上下の衣装(茶色の全身タイツじゃなくて良かった)を着ている横で、ニールはサンタの服を素早く着た。
ボタンが固く、手こずっているライルを手伝う振りをして、両腕と身体を一纏めに縄で縛られた時、さすがに噛みつく勢いで文句を口にした。


「おい、何で縛るんだよ!逃げねえよ!」
「プレイの一環ってやつかな。気にするな」
「気にならない方がおかし…うわっ…ぷ、」


ニールは暴れるライルを器用にソファの上に転がし、縄を自分の身体の方へと引く。
ライルの両腕に縄が食い込み、突然の痛みに苦しげな声を上げることしか出来ない。
うつ伏せにされたまま顔だけニールの方へと睨む形で向けると、彼の方は愉しくて仕方がない様子だった。
害のないような顔をしておいて、本性はどSなのだから手に負えない。
ニールはつ、と背中に指を這わせ、ライルが身体を震わせたことに更に笑みを濃くした。


「じゃあ始めようか。俺の方に尻つき上げて、肘つかないようにな」


思ったのはただひとつ。
「あとで覚えてろ」という、捨て科白だった。

****
続かない(笑)


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