クリスマス企画フリティ2009@ | ナノ


クリスマスなんて関係ない。
むしろ12月は治安が悪くなるので、仕事が増える一方だ。
ティーダは遠い昔、家族3人でクリスマスパーティーをしたことを思い出し、すぐに頭を振って思い出を消した。
今からパトロールなのだ。
最近『コスモス』の縄張りに入り込み、薬を売り殺人事件等騒ぎを起こす連中のせん滅が今回の任務の内容だった。
ティーダがいつもより落ち着かないのに対し、彼の相棒であるフリオニールは黒の手袋をはめて、口笛でも吹きそうなぐらい機嫌が良かった。


「どうした?元気ないな」
「そんなことないッス。それよりも……調子乗って飛ばすなよ」
「……ああ。だが、ティーダと組んでからは結構普通だろ?」


普通…何が普通かは分からないが、ティーダにとってフリオニールの存在は普通ではなかった。
フリオニールは血を見ると我を忘れて興奮し、手当たり次第殺したり等本能まっしぐらになる厄介な男だった。ただ毎回というわけではなく、ティーダと組んでからのフリオニールの理性はいつもよりも保たれている、らしい。司令塔であるライトが言っていた。
似たような症状を持つ仲間がもう一人いるが、その仲間の方がまし…だと思われる。
ティーダ自身はその仲間と仕事をしたことがないためよく分からないが、噂から判断するとそう思える。


「まあ、そうなったら殴って止めるからいいッスけど。ライトは何て?」
「ターゲットは6人だが、バックに何がいるか分からないから警戒しておけ…と」
「了解」


ティーダも黒の手袋をはめて、小型銃や自分にとって扱いやすい長めのナイフを腰に着ける。
弾を確認し、予備も多めに懐へ入れる。
軽く息を吐くと、既に準備が出来ており扉に凭れかかって待っているフリオニールと目が合った。
理性の壁が崩壊した時の視線とは違い、優しい瞳に心臓が高鳴る。
ティーダは自分の感情を誤魔化すように頭を振り、フリオニールのところまで駆け寄った。


「うっし、よろしくな。相棒」
「ああ」





で、だ。
パトロールと称したせん滅作戦は、ターゲットのバックに小さいが些か力のある組織がついており、2人ではなかなか厄介であった。
ライトに自分たちの見た真実を伝えたあと、人相の悪い男たち数十人に囲まれていわゆる絶体絶命?という時になり、ヘリでセシルとクラウドが駆けつけてくれた。狙ったとも思えるグッドタイミングである。
セシルは相変わらず自分で改造したランチャーで敵を威嚇し(ただし、ノーコンなのでオレたちも危なかった)、クラウドは極度の乗り物酔いと戦いながらヘリを操作していたと思われる(時々おかしな方向に揺れていた)。以前同じ任務をこなした時に車ですら酷かったので、ヘリもおそらく駄目だと思う。
2人の助力により助かった。が、死体の処理やら後始末をしようとフリオニールに振り返ったところ、セシルによってやられた奴らの血と死体を見て興奮したようだ。
目が据わっており、舌舐めずりをしている姿はいつものフリオニールからは想像出来ない…が、偽物ではなく本人なので困る。

(今興奮すんなよ…!!!)

ティーダはライトから伝授された、「とりあえず殴って意識を失わせる作戦」に出ようと右手の拳を鳩尾に叩きこもうとしたところ、容易く拳を受け止められてしまう。
やばい。非常にやばい。
この作戦の成功率は半分程度である。作戦が失敗したとなると、もう残されている道はひとつしかない。
因みにフリオニールに殺される、という選択肢はない。殺し合うというのも、やったことがない。
ティーダが覚悟を決めようとしたところで、フリオニールは拳を受け止めたのとは反対の手でティーダの首を壁に押し付ける形で絞めた。
咄嗟に対応出来なかったティーダは突然の圧迫に咳と唾を吐き、酸素を取り入れることだけに集中する。


「おい、ティーダ。舐めた真似してくれるな、」
「うっ…し、してな……ッス…」


と言ってもフリオニールにとってはいきなり殴られそうになったのだから、仕方がないのかもしれない。
大抵いつも言われる科白にティーダは笑った。
ティーダの挑発するような笑みに、フリオニールの眉がぴくりと動く。
彼はそのまま首の手に力を入れた。
流石に息苦しくなり頭に酸素が回らず意識が遠くなりかけた時、これまたいいタイミングでセシルがメガホンを持って叫んだ。


「君たち、邪魔だから帰ってからにしてくれる?ここは僕たちがやるから」
「チッ、」


大きな舌打ちをしたフリオニールがセシルの言う通りにするためティーダの首から手を外した。出来れば助けて欲しかったが、それは胸の内に秘めておく。
これでもセシルの言うことを聞くようになっただけ、かなりの進歩である。もしかしたらかろうじて理性が残っているかもしれないし、セシルを怒らせると自分たちの武器に影響するため本能で悟ったのかもしれない、と後からティーダは思った。
ティーダはその場に座り込み、咳を繰り返す。
意識が朦朧とする中、フリオニールに首根っこを掴まれ、荷物を運ぶスタイルで腰を抱えられた。


「わ、な…なん、」
「行くぞ。お前に天国見せてやるよ」


珍しく、殴られなかった。
首を絞められるだけで済んだティーダは自分の幸運に感謝し(前が酷過ぎるだけとか、思ったりはしない)、とりあえず頷いておいた。
逆らえば面倒だからである。
どちらかと言えば地獄だよな、普段のフリオニールからは絶対出てこないエロゲの科白だよな、と…諦めにも似たような感情になり、ティーダはさっさと終わらせてほしいと願った。

→(R18)


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