彼らの週末事情 | ナノ


眠い。
ここ最近仕事は少し忙しいがきちんと眠っているし、そのせいでがつがつもせず至って健全な、もう本当に健全で坊さんのような生活を送っている。
最近の坊さんがどうかは分からないが最近の坊さんのイメージだ。昔の坊さんは稚児はべらして………いや、やめておこう。最近民俗学だけでなく日本の古典にはまっていて文献を読む機会が多々あるが、あれは衝撃的だった。高校の古典の教科書で一番最初に挙げるものではないと思う。
話が逸れてしまったが、とにかく眠い。歳なのだろうか…いや、歳なら早起きになる筈だ。第一俺はまだ、そんなに歳ではない。
まあ今日は休みだし昼まで寝るか…と寝がえりを打ったところ、オタマを持った俺の奥さん…いやいや、同棲している相手…同居人が無表情で立っていた。
薄目で見てみる。正直な話怖い。もともと顔が怖いからしょうがない。でもそれだけじゃない気がする。
同居人は無言のままオタマを振り上げ…あろうことか、オタマの先を俺の頭にぶつけようとした。
嫌な予感を察知し何とか逃げ出していたので助かったが、傍にあった俺のお気に入りのハロ型目覚ましが見るも無残なことになっている。
加減を知らなさすぎる。


「せ、刹那…!俺のお気に入りの目覚ましになんてことを…!」
「お前が逃げるからだろう」
「そんな勢いで頭叩かれたら、頭蓋骨が粉々になるわ!」


黒のエプロンを着てオタマを持つ刹那は立派な主夫に見えるが、当番制なので主夫云々あまり関係がない。
未だばくばく鳴っている心臓辺りをスウェットの上から押さえ、大袈裟に溜息を吐いた。


「いつまでも寝ているな。朝飯が出来たからさっさと顔と手を洗ってこい」
「えー俺、その前にせっちゃんを食べ…」


全てを言い終える前にベッドに逆戻りした。
刹那ったら過激…とか冗談を言おうとしたが、目が既に映画で見るヤクザとかマフィアのようだったので言葉を唾と一緒に呑み込む。
刹那は片足をベッドに乗り上げ、超絶不機嫌そうな顔をしていた。


「あまり馬鹿が過ぎるとお前のソレ、切り落とすぞ」


俺の下半身付近に視線をやった刹那が、酷く物騒なことを言った。
そうしたら刹那が困るんじゃないか、とか、そんな冗談が頭の隅にあったが、自重しておいた。
命は大事である。そう、「命大事に」だ。
「ガンガン攻めるぜ」は夜だけにしておかないと……これも心の中の声である。
つんつんな刹那にはこういう冗談全てが通じないのだ。


「すぐに行くから待っててな」


とりあえずそう言って額に口づけると、問答無用で俺の顔にオタマがめり込んだ。





夜だとでれっでれな刹那だが、朝は厳しい。
規則正しい生活をしていないと今朝のようなことになる。
休みの日は世の中の駄目親父よろしく寝ていたいんだが、刹那はそれを赦さない。


「朝8:30から洗濯機のスイッチを入れる。前のようにソ●ラン忘れるなよ。その後干して…10:00から部屋の掃除だ。お前が寝ていると掃除が全く出来ないから寝室は埃だらけだ。途中でタイムサービスの卵とキャベツを買いに行く。お前も当然行くぞ、何せおひとり様1パックまでだからな。その後風呂場のカビ取り、洗濯ものを入れる……」
「だあああああ!!」


刹那のあまりの主夫具合に、ニールは叫ばずにはいられなかった。


「何だそれ!家を改装する勢いか!俺は刹那といちゃいちゃしながらだらだらごろごろしたい!」
「普通だ。それにごろごろなんてしていたら、時間がもったいない」
「もったいなくないだろ?最近坊主のような生活してるんだぜ!?刹那が足りないんだよー!お前もだろー?せつなー」
「肉を食べているだろう。3大欲求の内ひとつぐらい欠けていてもなんとかなる」
「ならないってば!人の話聞けよ!」


まあ結局俺の意見など通る筈もなく(うちはかかあ天下だからさ)、刹那の言う“普通”に付き合わされることになった。
洗濯物を洗濯機の中に入れ、洗剤を入れる。刹那に言われた通りソフ●ンも忘れずに、だ。
その後脱水出来るまで少し休もうかと思いきや、食器洗い地獄である。自動食器洗い器を今度買おう。あとで刹那に強請ってみる。
食器を洗い着替えると、既に洗濯機の仕事は終わっている。
型崩れしそうなものはハンガーにかけ、色の濃いものは裏返しにして外に干す。
そして寝室の掃除だ。
その頃刹那はついでとばかりに布団を干すため二回目の洗濯をする。これでいちゃいちゃごろごろ生活は物理的に暫く出来ない。
俺はというと、窓を開けて叩きをしてから暫く待つ。
埃が落ちたところで掃除機をかけ……実際、もうへとへとだった。
少し休憩をしようと腰を下ろそうとしたところに、布団を干した刹那がエクシアのワッペンか何かがついたマイバッグ持参で買い物に出掛ける準備をしていた。
くどいようだが亭主(仮)は妻(仮)に頭が上がらないので、車を走らせ近くのスーパーへと向かった。
荷物持ちをさせられ、レジに並ばされ……帰る頃には更にへとへとである。
昼飯の炒飯を食べた(刹那が作ったもの)その15分が唯一の休憩であり、再び食器を洗い、掃除となった。
家中綺麗にして満足げな溜息を吐いた頃には布団を取り入れ、洗濯物も中に入れる。
すっかり忘れていた風呂場のカビ取りをマスク装着で行い、あまりにもやる気が出なかったので刹那と一緒に入れることを夢見、鼻歌を歌いながら作業をする。
そのまま風呂を洗ったあとは息つく暇もなく、夕食の準備。
大好物のマッシュポテトに感激し、刹那に抱きつくと問答無用で蹴られる。
邪険にされながらも皿の用意等をし、食べ終えた頃に一緒に風呂に入らないかと誘ってみるが、あえなく撃沈。
仕方なく一人(+ハロのおもちゃ)で風呂に入る。
長湯で刹那に怒られ、交代する。その間に髪を乾かし3度目の食器洗いを行う。
刹那はあまり湯船に浸かりたがらないので早く出てくるから、食器洗いの途中で出てくる。
こちらに寄ってきてスウェットを引っ張るので振り向くと、髪の濡れた刹那が瞳を潤わせ(ニールのフィルターON)でれっでれな科白を吐いた。


「今日は御苦労だった。……そ、の……寝…るぞ…」


傍から見たらどこがでれているのか分からないかもしれないが、これはかなりのものだ。
刹那から誘われて一気にテンションの上がったニールはスキップしながらベッドに入り……消灯。アーメン。
ニールに尻尾があれば人間に懐く犬のように振っていたに違いない。

そんな彼らの週末である。

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同棲通り越して夫婦かよって話です。
リア充目指したらこんなことに…(笑)
あとトイレ掃除も入れたかった。車洗いとかマッサージも入れたかったけど入らなかった…
クロ様、素敵なリクエストを残念にしてしまいすみませんでした。求めていらっしゃったのはこんなんではなくもっとべたべた甘いのだったと思うんですが…気に入らなければもちろん直しますので!
リクエストありがとうございました!



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