フラグ→またフラグ | ナノ


※ニール→ライル要素あり

ひとつの問題が解決された瞬間にまた次の問題が浮上する。
刹那の今の状況は、まさにその通りだった。
浮気疑惑が解消されたかと思いきや、ライルの双子の兄であるニールに腕を引かれ車に乗せられ、あっという間に喫茶店に連れてこられた。
双子の兄だけあって、ライルと変わりない強引さに溜息を吐く。
ホットコーヒーを頼みテーブルに置いてもらった後、ライルと同じ顔で愛想よく笑っている男に問い掛けた。


「で、何のためにここに?」
「特に用はないけど、ライルの恋人と親交を深めようと思って」


目の前の男は化粧をしないと普通に喋り、昨日のニューハーフの印象が強かった刹那は戸惑いを隠せない。
また、白々しく親交を深めたいと言った男のことを信用出来なかった。
昨日の自己紹介の際に一瞬だけ見せた、戸惑いと嫌悪の視線が気になっていたからだ。
自分がライルの恋人であり男だからだと思っているが、本当のことは分からない。
刹那はさっさとニールの本性を暴いて、真実を知りたいと思った。


「長く付き合う予定だから、そうだな…よろしくお願いします。お義兄さん」
「……」


仕事でもないのに苦手な営業スマイルを浮かべて、刹那はニールの観察に入った。
ニールは眉を少し動かしたが、笑みは絶やさなかった。
埒が明かない。刹那は営業部に所属していても短気な方であったため、核心に触れていくように仕向けることにした。


「お義兄さんのことはライルから聞いています。とても優しくて頼りになると…ライルよりはるかにもてるようですし、」
「へえー、ライルがそんなことを…でも俺は昨日刹那が見た通りだしな。そんなことはないよ」
「なら、ライルが付き合う度に振られて俺のところに愚痴に来たのも、貴方が関わっていないと?」


緊張とは違う汗を掻いて喉が渇いたので、コーヒーの入ったカップに口をつける。
確証などないが、おそらく何かしら関わっていると刹那は見た印象等から感じていた。
刹那はニールの目を見て、視線を外さなかった。
ニールは企みをする時のように口角を上げ、優しい笑顔の仮面を取り去った。


「…分かるもんかな?」
「全部推測だ」
「ふーん…でもまあ、話は早い。ライルと別れてもらおう」


思った通りの科白に刹那は眉を顰めた。
何故そんなことを赤の他人…ではないが、当事者ではない奴に言われなければならないのか。
刹那は苛立ちを隠し、ニールの顔を見続けた。


「いやだと言ったら?」
「あらゆる手段で別れさせるよ。男は駄目だ。女でもまあ、顔だけでついてきたって分かる奴ばかりだったから、別れさせるために俺が取ったんだけど」


案の定ほいほいついてきたから、こっ酷く振ってやったよ、とニールは苦々しく呟いた。
刹那は何故ニールがライルに対して過保護になるのか、考える。
そして、ひとつの結論に達した。

(もしかしたら、こいつは……)


「……あんたの手で、あいつを幸せにする方法は考えなかったのか」
「俺は駄目だ。兄弟、だからな…血の繋がりって結構大事でな。男ってのもあったし…お前らには悪いけど」
「…いや。あんな格好で仕事をしていても、そう思うのか?」
「そ。世間は冷たいからよ。…で、お宅はこれだけ聞いても別れる気はないようだな?」


ニールは意地の悪い顔をしていた。
刹那は頷くと、ニールは何故か安堵の表情を見せた。


「それじゃあ、俺は本気で別れさせることが出来るな」
「……おい、」
「妥協はしないぜ。ライルのことは勿論だが、お前にも少し興味があったりする」
「な、……」


ニールの言葉に驚いた刹那は、暫く何も言い返せなかった。
目を見開く刹那を見たニールは、作り物ではない笑顔を見せた。


「堅物かと思ってたけど、結構表情が変わるもんだな」
「五月蠅い。大体はじめにあんたを見た時も驚いた」
「そうだったな。痴話喧嘩してたの忘れるぐらいだったからなあ…」


あの口紅事件(※前回参照)を聞いていたのか。心底意地が悪い。
刹那は返事をせずにコーヒーを飲み干し、席を立った。


「では、話は終わりだな。帰る」
「送ってくよ」
「結構、ここならすぐ近くだ」


全く逆の方向であったが、刹那は一刻も早くニールと離れたかったため嘘を吐いた。
刹那は自分の分のコーヒー代を机に置き、店を後にするとすぐニールが追いかけてくる。
腕を取られて振り返った瞬間、頬にキスをされた。
刹那は何が起こったのか分からず、とりあえず条件反射でニールの顔を殴って手を振り切り、自分の住むマンションまで走った。
ニールはもう追いかけてこなかった。

(………やばい、仮にも恋人の兄を殴ってしまった…)

刹那は今しがた頬にキスされたことも、その場所が人気のほとんどないところだったから誰にも見られていなかったことも、すっかり頭から抜け落ちていた。



※おまけ
いつも通りニューハーフパブで働いた後のニールに、苦笑を浮かべながらティエリアが話し掛けた。


「今日は随分機嫌がよろしいようで」
「分かるー?実は面白いことがあってね」


ニールは片付けをしながら、ティエリアとの話を続けた。


「今度の弟の恋人が手強そうでね、燃えてるのよー」
「そうですか」
「いっつも連れないなあーティエ子は!」
「変な渾名をつけないでください」


ティエリアは顔をしかめた。
そんなティエリアを気にせず、全部の片づけが終わったニールは鼻歌を歌いながら帰宅の準備をする。
ニールたちと同じくパブの従業員のアレルヤがティエリアに声を掛けた。


「ニールの弟さんとその恋人、前の人に比べると結構長く続いてるよね」
「…君は彼の弟の恋人を知っているのか?」
「うん。だってハレルヤと同期だし、ハレルヤ迎えに行く時に一緒に歩いてるの見たし…」


ソーマが一言漏らさなければ恋人だって分からなかったけどね、とアレルヤは付け加えた。
ティエリアは自分の胸の前で腕を組み、右手を顎にあてる。
アレルヤが不思議そうに見ていると、ティエリアは真面目な顔で彼の方を向いた。


「…今度、見に行くぞ」
「ええ!?どうして、」
「よくは分からんが、気になるからだ。お前ももちろんついてこい」
「ええー!!」


ティエリアはアレルヤの厭そうな声を無視し、店の消灯へと向かった。



****
アレルヤまでパブの要員に…このパラレルだとアレマリ(大佐と同居設定)なのに…マリーと大佐涙目。でも案外マリーは懐が深そうだから大丈夫←何が
書き切れなかったんですが、パブでは3人とももちろん女装…(ry
ニールのニューハーフ設定がいまいち活かされてないです…
あと、本当はニールをガチに弟溺愛にしようと思ったんですが、ここライ刹(微々…ニル刹)サイトなので自重…これでもしました(笑)だからなんか中途半端だ…


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