想い出の品 | ナノ


※実は、ティナ誕にしようと思っていたもの。


野営の準備を終え食事を摂り終えたコスモスの戦士たちは、束の間の休息を取っていた。
バッツは先程から姿の見えないティナを探し、あたりを見回す。
すると少し遠くに大きな岩に腰掛けている彼女を見つけ、バッツは駆け寄った。


「こんなとこにいたのか」
「うん…ここからだと、みんなの姿が見えるの」


ティナはバッツに顔を向けて、笑う。
バッツも笑みを返してティナの隣に座った。
ティナはみんながいる場所を指すと、バッツに説明を始める。


「ほら、ティーダとあの子が仲良く話してるでしょう?その近くでフリオニールとセシルは最初の見張りの準備をしていて、クラウドとスコールは隣に座っていても必要なこと以外話さないみたいで、ライトとジタンは尻尾について話してるのかな…?ライトがジタンの尻尾を触ってるから」
「本当だ」


実際にはオニオンナイトがティーダにひとり怒っていたり、フリオニールはセシルと武器の話をしながら見張りの準備をしていた。
バッツはこんな風に仲間の姿をじっくりと見たことはなかった。いつも側にいる仲間をからかっているかふざけ合っているかどちらかだった。おそらく見られている立場なのだろう。


「ティナはみんなのこと、よく見てるんだな」
「うん。近くにいる時と違ったみんなが見えるから、忘れないようにと思って」
「…そっか」


旅はもう終盤である。
カオスとの戦いは目前であり、もしかしたら明日決戦かもしれない状況である。
自分たちには時間が残されておらず、焦ってはいけないが立ち止まることも赦されない。
ティーダがライトに言っていた、「オレたちのこと忘れないでほしい」というのを、ティナは自分にも言い聞かせているのかもしれない。
バッツもそんなティナを見習いもう一度仲間たちを一人一人じっくりと見た。
急に黙ってしまったバッツにティナはどうかしたのかと思い、彼の方に顔を向けた。
思ったよりも真剣な表情を見て、ティナは少しの間目を瞬かせた。


「バッツの知らない一面も、見れたわ」
「…え、今?」
「そう、今よ」
「間抜けな顔してたとか?やっべえ、今油断してたからな…」


バッツが後ろ頭を掻く姿を、ティナは横から見つめて微笑んだ。
微笑んでいる筈の彼女の顔が徐々に曇っていくことに、バッツははっとさせられる。


「私…バッツの色んなところ忘れないよ」
「…ああ、おれも忘れない」


ティナの頭を引き寄せ頭を撫でるが、横向きになっての前のめりの体勢が苦しい様子だったのですぐ離した。
そしてまるで今思い出したかのように、バッツは腰のあたりに提げていた袋からコンパクトなアメジスト色の四角い箱を取り出した。
バッツはティナの両手を取り、それをのせる。
ティナは瞬きを繰り返し、首を傾げた。


「…これ、は…?」
「オルゴール。昔おれの家にあったものなんだ…今は違う奴が住んでるんだけど、そいつがわざわざ持ってきてさ…」
「…思い出した、の?」


バッツは少しだけ、と付け加えて頷いた。
スコールを始めとして仲間のおそらく半分ぐらいが元の世界にいた記憶を思い出していた。
バッツは相棒のお守りの話をしていたから最初から少し記憶が残っていたのかもしれない。
しかしティナはバッツと元の世界の話をしたことがなかったため、驚いた。
バッツは照れくさそうに後ろ頭を掻くと、一番言いたかったことを述べる。


「それ、ティナにやるよ」
「え…、でも…大事なものでしょう…?」
「だから、持っててほしいんだ」


思ったよりも近くにあるバッツの真剣な表情に、ティナは一瞬止まる。
その後ティナはバッツの顔と手の中にある紫色のオルゴールを交互に見て、そっとオルゴールを握った。


「うん……ありがとう。開けてみてもいい?」
「ああ」


ティナは後ろにあるゼンマイを数回回し、ゆっくりとオルゴールの蓋を開けた。
どこか物寂しいメロディが心地よい音で流れていく。
バッツの故郷に伝わる曲なのかもしれない、とティナはまたバッツの新たな一面が知れたことを嬉しく思った。


「綺麗なメロディね…」
「ティナにそう言ってもらえると、嬉しいぜ」
「そうかな?…バッツ、本当にありがとう。私も何か送りたいけれど、何もない……」


わ、と最後まで言えずにティナは固まった。
バッツの手が頬に来たかと思うと耳朶を擽るような形で触れていき、その手は上へと昇っていく。
最終的に頭の頂に辿りつき、そのままひとつで束ねていたリボンを解いた。
ティナの髪は重力に従ってふわりと落ちる。


「…バッツ?」
「このリボン貰ってもいいか?代わりにティナの髪はおれの装備していたリボンで結ぶからさ」
「え?ええ…でも、」


「それでいいの?」と聞くと、「ああ」と返事をしたバッツの満面の笑みにティナは何も言えなくなり、頷くしかなかった。
バッツは自分の右腕にしている薄い藍色のリボンを解くと、立ち上がってティナの背後へと回り髪を結ぶ。
何だか気恥ずかしく思えたティナは、おとなしくバッツが結ぶのを待っていた。


「よし、出来た」
「バッツのは私が結ぶよ?」
「そっか?じゃあ右腕に頼むな」


ティナは頷きバッツから貰ったオルゴールを自分のアイテムや大事なものを入れている袋へとしまった。
ティナはバッツの方へと振り返り、差し出している右腕に自分のつけていたリボンを結んだ。


「綺麗に結んでくれてありがとな」
「私こそ…オルゴールもリボンも…大事にするね」


バッツはティナの言葉を聞き、「おれも」と付け加えた。



****
物々交換。
オルゴールはFFXから。リックスの村の曲本当に良い曲で、どうにかして絡ませたかったんです(そしたらgdgdに…)。絶対吟遊詩人(元クラウザー家に現在住んでいる人)がバッツにあのオルゴールを返したと思うんだ。
あとバッツの右腕に青いリボンみたいなものが結んであると私は思うんですよ。リボン装備する場所かと思ってます。腰のところかもしれないけど…

因みにコスモス勢はバッツとティナをなるべく視界に入れないようにしていると思います。邪魔しないように(笑)


「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -