振り回される日々 | ナノ



「ねえねえ、君格好いいね。私たちと少し付き合わない?」
「そうだよー、今一人でしょう?」
「……」


喋る機関銃とは、このことを言うのだろうか。
刹那は、気の強そうな女の子たちからナンパをされていた。ちゃらちゃらした男がするものだと思っていたナンパを、まさか自分がされるとは思ってもみなかった。
刹那自身さっさとこの場から去りたかったが、3人の女の子に囲まれて逃げられない状態である。
いっそのこと力技で…と考えたが、「女性に優しく」がニールのモットーであり、弟分である刹那にもしっかりと受け継がれている。ということでその方法はパスだ。
刹那はちっと舌打ち、断る正攻法でいこうとしたところ、助けになる男が後ろからやってきた。
刹那が顔を向けると女の子たちもそちらに視線がいき、黄色い声を上げた。
助けになると思った男…ニールは服のセンスはともかく顔だけは様になっているので、騒がれてもしょうがない。刹那はよく分からないがスメラギたちが言っていた気がする。
ニールは刹那を見て、その後彼を囲んでいた女の子たちを大雑把に見た。


「刹那、何やってんの?」
「……何も」
「ふーん…連絡ないし待ち合わせ場所に来ないから心配しただろ。遅刻は厳禁だって、言ったよな?」


にこりと笑っているが、瞳の奥は笑っていない。
刹那の背中に冷汗がつたる。
一緒にいるようになってから分かったことだが、彼は案外子どもなのだ。
自分を優先しなかったらすぐに拗ねるし、基本的に情緒不安定である。そのくせ大人だからか、やることが汚い。
刹那は早く彼の機嫌を取らなければ、とニールに声を掛けようと手を伸ばした。


「ロックオ…」
「きゃあ!お兄さん、彼の知り合いですか!?」
「かっこいい!」
「……この子たち、誰?」


ニールが困惑した様子で刹那に話し掛けるが、知り合いでもないし刹那は通りすがりとしか言えなかった。
しかし、刹那が話す前に女の子たちが言葉を発する。


「お兄さんも、私たちと少しお茶しませんか?彼は行くって言ってくれたから…」
「おい、俺は行くなんて一言も…!」
「行きますよね?」


有無を言わさずにじり寄る女の子たちに、ニールは苦笑を浮かべると刹那を見た。
刹那はマリナやフェルトのような女性は珍しかったんだな、と心の中で溜息を吐く。
顔を上げると、戸惑うニールと視線があった。

(…俺では無理だ。なんとか断ってホテルに帰還したい)

視線で訴えた刹那の想いが通じることはなく、ニールは女性受けしそうな笑みを浮かべた。


「お嬢さんたち、ちょっとだけね」
「わあ、ありがとうございます!」


刹那は先程まで助けてもらえるとニールを信じたことを後悔した。
いっそのことニールに全てを任せて逃げようとしたが、女の子二人にがっちりと腕を掴まれ、そのまま喫茶店へと連れて行かれることになったのだ。





結局解放されたのは6時間後で既に夜は更けていた。
刹那は始終無言でポーカーフェイスを貼り付けていたが、ニールは律儀に会話に参加していたので刹那より数倍疲れたらしい。
女の子たちを帰して2人になった途端、盛大な溜息が聞こえてきた。


「あの子たち、強すぎるだろ…」


刹那は隣を歩いていたニールが止まってしまったため、足を止めて後ろを振り向いた。
ニールは刹那の方を見ておらず、どこか遠くを見つめている。
踵を返してニールの近くに行けば、唇を尖らしたニールの顔がよく見えた。
刹那は手のかかる子どものような大人に小さく息を吐き、ニールの左手を取った。


「何故自分が選んだことなのに、落ち込んでいるんだ?」
「お前がべったべたに触られてただろ…昔なら触るなって怒ったくせに」


刹那が抗わなかったのは既に諦めの境地に達していたからなのだが、ニールは抵抗しなかったことが赦せなかったようだ。
対人に関して潔癖症とまで皮肉られた自分とティエリアを治した本人のくせに、嫉妬が絡むと駄目らしい。


「…お前がいやなら、誰にでも触るなと言う。これでいいのか?」
「違う。…悪い、俺…余裕なさすぎるな…」


ニールが自分の右手で顔を覆い、そのまま項垂れた。
刹那は握っていたニールの手に、少し力を入れる。


「そんなことは知っている。だが、俺はお前を見ていると何度言えばいい?」
「うん…ごめんな。何度も同じこと言わせて」
「別に。いやなわけではないから」


刹那はやっと自分が恥ずかしいことを言っていることに気が付き、そっぽを向いた。
ニールは表情こそ見えないが耳まで真っ赤になった刹那を見て、珍しいと感嘆の声を上げる。


「刹那、顔が茹で蛸みたいになってるぞ」
「う、五月蠅い!お前は先にホテルに戻っていればいい、俺は頭を冷やして…」


最後まで言えずに刹那はニールに繋いだ手を引っ張られた。
刹那はいきなり前に引っ張られたことで身体のバランスを崩しこけそうになるが、何とか踏ん張りついていく。


「おい、ロックオン!」
「刹那が頭冷やすなら、俺も付き合うぜ。ぶらぶらしようか」
「は…?おい、」


先程まで疲れた表情をしていたニールはとても元気に刹那を夜道へと振り回していった。


****
木葉様のリクで、「二期のニル刹、逆ナンされて困っている刹那を偶然見つけて助けに行くニール。(結局助けられなくて逆ナンしてきた人達と刹那とニールで一緒にお茶していた後ニールの嫉妬)」でした。偶然じゃない。助けにいったわけでもない…あまりリクに沿えてないですね(最低)
刹ニルっぽいですがニル刹です。二期のクールさが全くない不憫刹那(今サイトに大量発生中)と攻めなの…?ニールになっちゃってすみませんっ!!
ナンパが男っぽくて旧式で更にすみません…お茶してる場面は長くなりそうだったので飛ばしちゃいました。
木葉様リクエストありがとうございました!!


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