03. 招かれざる客 | ナノ


03. 招かれざる客


刹那は宇宙空間である事が歯がゆく思うぐらいに、焦っていた。今自分の足で走ることが出来たらどれだけ楽なのだろう。
先程の夢で呟いた母親の言葉だけが、頭の中で繰り返される。

(何故、俺だけではなく…仲間まで…)

両親が自分の事を憎んでいて当然だと思っている。その咎をまだ受けてはいないが、刹那はどうしてもそう問わずにはいられなかった。

(これもそれも、自分が招いた罪に対する裁きなのだろうか)
(…だがそれでも、仲間は関係ない)

刹那は、とりあえずブリッジまで行ってスメラギ達の安否を確認する事にした。

刹那が曲がろうとした瞬間、自分よりがたいのいい男とぶつかった。
しかし尻もちをつくことはなく、ぶつかった相手が支えてくれたらしい。


「…っ、すまない、急いでいたから」
「……何処へ?」


誰にぶつかったかも確認せずに謝罪を述べると、苛立ちを抑えたような低い声が聞こえた。
ぶつかった衝撃で痛んだ頬を押さえ顔を上げると、ライル・ディランディが無表情で立っている。
刹那は彼に対して色々な思いがあったが、何よりも彼自身が消えてなかったことに安堵した。

(ライルは無事だ)

ほっと息を吐くが、彼だけでは安心は出来ない。
彼女は2人目だと言っていた。1人目はおそらくアレルヤだろう。そして、2人で終わることもないと思う。
刹那は考えごとをしていたせいで、ライルの質問に答えていなかったのを思い出して口に出した。


「…ブリッジへ」
「そうか」


それだけ言うと、ライルは踵を返した。
刹那は彼の後ろ姿を見て、はたと気付く。
そう言えば、ティエリアにライルの様子を見てもらえるように頼んだのだった。
人手不足だから後回しにしたのなら、何も問題はない。
しかし、動悸がして寒気までしてくる。厭な予感どころの話ではない。


「…ライル!」
「あ?」


話などしたくない、と感情の滲み出た表情で、ライルは刹那の方に振りかえった。
一瞬心がズキンと痛むが、それを無視して刹那は続ける。


「ティエリアはお前のところに来たか?」
「来てねーよ」


急激に体温が下がったような気がした。
唇は半開き、わなわなと震え、身体まで振動が伝わってしまいそうだった。
刹那の尋常ではない様子に、先程まで距離を置いていたライルは、複雑な想いに駆られながらも心配になって刹那に駆け寄った。


「…どうした?痛むのか?」


頬が痛むと思ったライルに、刹那は首を横に振る。


「違う…何故、」
「…刹那?」


刹那は心配するライルを通り過ぎて、ブリッジに向かう。


「ちょ、おい!」


何が何だか分からず、アニューの事で、そして刹那に対するやるせない感情でぼろぼろになりながらもライルは刹那の後を追いかけた。

自動ドアを開けば、ブリッジ内は閑散としていて人の気配は全くなかった。


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