02. 死との約束 | ナノ


02. 死との約束


ご丁寧に毛布の上に痛み止めを置いていったティエリアに、苦笑を浮かべる。
それから刹那は、痛み止めを半分飲んでベッドから下りた。
このままでいてはいけない。いつイノベイターやアロウズが襲ってくるかも分からない。
ラッセも撃たれており、トレミーは多大なる被害を受けている。人手不足にも程がある。
刹那は部屋を出て、スメラギ達のところへ目指そうとした。


「…刹那・F・セイエイ」


部屋を出たところで反対側から向かってきたソーマ・ピーリスに声を掛けられる。どうやらアレルヤは一緒ではないらしい。
このところすれ違っている彼らを見ているので何分違和感は感じないのだが、彼女が話し掛けてくるとは思わなかった。


「何だ」
「あの男を見ていないか?」
「あの男?」


誰か分からず刹那は首を傾げる。
すると刹那の様子にソーマ・ピーリスは少し苛立ちを露にした。


「…アレルヤ・ハプティズムだ」
「アレルヤ?知らないが」


自分はライルのすぐ後に立ち去ったのだから、側にいた彼女の方が知っていると思う。
知らないと伝えると、ソーマ・ピーリスは一層目をつりあげた。


「知らないのならいい。全く人を呼び出しておいて…」


ぶつぶつと言いながら去っていく彼女の言葉と彼女自身を見て、刹那は何故かその時に厭な予感がした。
背筋が凍る感覚である。


『あなたを引きとめてしまう仲間は消えてしまえばいいわ』


悪夢での科白が頭の中に駆け巡る。
夢は所詮夢だと言い切りたかった。しかし、最近どこかおかしい気がする。

(そう、アニュー・リターナーの位置が正確に分かったり、聞こえない筈の声や歌が聞こえてきたりした)


「…ソーマ・ピーリス、俺も探す」


彼女の背中を追いかけると、酷く驚いた顔をしていた。


「…私は、あの男を探すとは…」
「…厭な予感がする」


刹那がそう言うと、ソーマ・ピーリスは前を行こうとする刹那の腕を掴んだ。
彼女の強い視線が刹那を射抜く。


「お前は何者だ?」
「……?俺は、」


ガンダムマイスターだ、と言おうとした瞬間、物置部屋の扉が唐突に開く。
何故いきなり開いたのか分からず、刹那は物置部屋の方に振り向いた。
濃い闇が物置部屋内を覆っており、中の様子は分からなかった。
ちょうどその扉の前で話をしていたソーマ・ピーリスの身体を人間ではありえない真っ黒な手が掴む。一方は腰に、他方は口元にあてて。
強い力で引っ張られ彼女の手が刹那の腕から離れ、黒い手に抵抗する事もままならず闇に消える。
手を伸ばしたが、彼女に届かなかった。


「…!!ソーマ・ピーリス!」
『…これで2人目』


夢の中の母親と同じ声が、闇の中から聞こえて刹那の鼓膜を刺激する。


『必ず貴方を私の元に連れていくわ、ソラン』


くすくすと女の笑い声が響きわたり、闇は霧散した。
物置部屋は前に確認した通りのままである。
ただ、今まで話をしていたソーマ・ピーリスが跡形もなく消えた。
暫く彼女の姿を探したが、物置部屋のどこにもいない。周辺にもいない。

(俺は、夢を見ていた?彼女と話を本当にしていた?)


「一体…何が…」


何が起こっているのだろう。
刹那には全く分からなかった、むしろ頭がついていかなかった。


『そして、ソラン?こちらで一緒に暮らしましょう?今のように辛い事なんてない世界で、一緒に…』
「まさか、本当に…?」


刹那はすぐに他の仲間の元へと向かうために床を蹴った。


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -