Tragedy = Comedy3 | ナノ




Tragedy


目が覚めた時、夢の世界にいるのかと思った。
すぐにそれは違うと分かった。
ひとつは心臓に呼応するような怪我の痛みがあったこと、もうひとつは夢ならば川があって故郷を夢見ていると思った。昔親父が笑いながら言っていた気がする。
それは冗談だとしても、少なくとも、こんな瓦礫の積もる場所ではない。
バッツは起き上がり、仲間のところに戻ろうとした。


「…動いては、だめ」
「……!!」


瓦礫の山を飛びながらこちらに向かって来たのは、ティナだった。
カオスに操られている筈では、とバッツは怪訝に思う。
よく見ると実際に思った通りだった。ティナの表情は変わらないし、頭にケフカにつけられたあやつりの輪があった。
バッツは今度こそ殺されるかと思い、魔力を溜めようとしたが左腹の強烈な痛みに呻いた。
エクスデスと戦った時に穴が開いた筈だったが、傷は塞がっており手当をされている。
かなり出血した筈だが、まさかティナが回復してくれたのだろうか。


「…これは、ティナが?」


左手で自分の傷を指しながら言うと、ティナはこくりと頷く。
本当は操られていないのでは…?と疑った。
でなければ、彼女は今カオスについている。おれたちは仲間だと思っているが、彼女にとってはおれは敵だ。
怪訝な顔をすると、ティナが持っていた毛布をバッツにかけた。
そして微量の魔力を溜めたかと思うと、小さな氷の塊をつくり、もうひとつ持っていたタオルに包んでバッツの額にのせた。
バッツは驚愕する。


「…何、で…だ…?」
「…熱、出てるから…今は傷も塞がっているけど、無理をすれば開く」
「違う……何でおれを助けた…?」


バッツの言葉に、ティナはそっと目を伏せた。


「…分からない。あなたが倒れていて、気がついたら、身体が動いていた」
「それは…」


操られているが、自我が戻りつつあるのでは?とバッツは感じていた。
とにかくここからティナを連れて、自分も脱出しなければならない。
彼女を操っているケフカが帰ってくる前に行動に移したかったが、一足遅かった。
ケフカは高いところからバッツとティナを見下ろしていた。


「二度も命拾いするとは…悪運が強いですねぇ」
「!?ケフカ!」


バッツは剣を出そうとしたが、血の足りていない頭に眩暈がしてうまくいかなかった。
ケフカはそんなバッツの姿を見て、にやにやと笑う。


「気まぐれに僕ちんのおもちゃがお前を拾ってきたけど…役に立ちそうですねぇ」
「はっ、お前のいいなりにはならないぜ?」


バッツは虚勢を張ると、ケフカはすっと表情をなくした。
そんな顔も出来るのか…と思ったところですぐに口角が上がった。


「そう言ってられるのも今だけだじょー?」
「なに…っぐ、うああ!」


突如頭から電撃のような痛みが走り、額から退かし手に持っていた氷を包んだタオルが落ちる。
電撃のようなものが落ち着き再びケフカを睨みつけると、楽しくてしょうがない表情をしていた。


「お前にも僕のお友達と同じあやつりの輪をつけてやったんだぁ☆」
「あ、やつり…?」
「そ!でも同じじゃつまんないー。だからさー…さっきみたいに逆らったらさぁ」


ケフカは、ちらりとティナの方を見た。


「…?いやああああ!」
「ティナ!!…っやめろ!」
「お前が逆らうと人形にも電流が流れるように連動性にしておいたのさ!逆らう度に電流の強さが増すんだ。楽しいだろう?」


バッツはケフカを睨みつけることしか出来ない。
自分だけなら良かった。仲間に迷惑がかかるぐらいなら、死を選んだと思う。

(しかし、ティナにまで電流が流れるとしたら…おれは…)

バッツは唇を噛んだ。
どう足掻いても、自分の思い通りにはいかない。こんな身体ではティナを助けられない。
仲間と敵対する道を選ぶ外、バッツに残された道はなかった。少なくともバッツにはその方法しか思いつかなかった。
バッツは一度目を閉じて、それからケフカを見た。


「…お前の、思う通りにすればいいのか?」
「そうそう!って言っても…まあ、おもちゃを守ってでもやればいいからさ」


ケフカは僕ちん優しい!と自画自賛をして、踊っていた。
バッツは腹の傷の痛みを無視し、頭を押さえて座り込んでいるティナのところへ這って向かう。


「ティナ、大丈夫か?」
「…平気。私は、彼の人形だもの…」


抑揚のない声で彼女が呟き、バッツは痛みに耐えながら、起き上がって彼女の身体を抱き締めた。
されるがままに、ティナはバッツの身体に凭れる。


「なら、おれは…その騎士だな…」
「騎士…?」
「ああ」
「そう」


(ごめんな…みんな…ティナ…)

バッツはティナの肩口に自分の額をつけて強く抱きしめた。

側で「美しき友情…なんて、やめて」という言葉が聞こえたが、全部無視をした。



****
混沌についたバッツとティナでお送りします。ケフカ難しすぎる…好きなのに。
アクションは結構省きました。無理だ。
因みにタイトル、悲劇=喜劇です。
一応タイトルのグラデーションには意味があり、白(コスモス)〜赤(カオス)へということです。イメージです。


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