刹那誕生日2009(ライ刹)2 | ナノ




ニールから貰ったホテルのチケットを侮っていた。
車から降りてロビーに入った時点で、庶民には一生縁がない場所だと刹那は思った。
とにかく広くて煌びやかなシャンデリアがたくさんついていて、派手である。
ニールは多分高級なホテルで俺が困ることも分かっていたと思う。

(絶対面白がっている)

ニールに彼女が出来たら、ライルと邪魔してやろうと心の中で思った。
ライルが受付に行っている間に、刹那はソファに座って一息吐いた。
このソファも相当いいものだと思う。
苦学生が次に行けるか分からないので、刹那は誕生日だということもあり色々な経験をしようと思った。


「何やってんだ、行くぞ」


座ってゆっくりしていたら、ライルが頭を叩いた。
案内をしてくれる女性がこちらを苦笑して見ている。
ここで喧嘩するわけにもいかないので(周りの目があるし、せっかく来たのだ)、渋々女性についていくライルの後ろを歩いた。
部屋について諸々の説明を受けごゆっくりと言い、案内係の女性は去った。
刹那は話の半分も聞いていなかった。
スイートでもないのに、部屋は下宿先より広くて(当たり前だ)……場違いだ。
逆にライルはこういうホテルがとても似合う。
卑屈になりそうだったところ、ライルが肩を抱いて顔を近づけてくる。
車の中では頬にしかキス出来なかった男が、今まさにしようとしているのか。
せめて一言欲しい。いきなりは心臓に悪い。

(平常心平常心平常心…)

顔には出ないと分かっているのに、刹那はひたすら呪文のように心の中で唱え続けた。
吐息がかかりこのままキスするのかと確信していたのに、ライルは額をあてて熱を測る。


「元気ないな?熱ないよな?」
「……」


期待をした自分が馬鹿だった。
結局待っていても駄目なので、自分から行動するしかないのだろう。
それが裏目に出るのでなかなか行動出来ず困っているのだが。


「…元気だから離れろ」


結局刹那はそう言って、ライルの腕を掴んで離させた。
ライルの顔がみるみる内に不機嫌になっていく。


「…あっそう」


言葉の素っ気なさとは裏腹にライルはしていたネクタイを解き、刹那の両手首を纏めて縛り拘束した。
縛られてから刹那はことの事態に驚き、ライルを見る。
ライルは無表情で刹那の手を持つと、入口に近い方のベッドに刹那の身体を放り投げた。
衝撃は少なかったが、ライルがその上に乗り上げてきて、刹那はやばいと本能的に感じた。


「ライルっ!!」
「元気なら、一回痛い目見といた方がいいと思ってな。簡単に男を誘うし?」
「だから、それは…!」


ライルだから、誘ったのに。
ライルは纏めた手首を刹那の上の方にやり、その手首を押さえて残虐な笑みを浮かべた。
見たとこのない表情に、刹那は心を揺さぶられる。
ライルは馴れた手つきで刹那の服をたくし上げ、素肌に触れていく。
ライルの顔は怖いままだった。
抵抗しても上から押さえられているので、動かない。

(何やっても駄目だ…このまま犯されるのか…)

本当に最悪な場面だ。


「……な、…んだ…」
「あ?」
「お前は何が気に入らないんだ!?ニールから貰った誕生日プレゼントのホテルのチケットか?それでお前を誘ったことか!?」


刹那が大声を出し、ライルは目を瞠り手を止める。
誕生日が特別だとは思っていないが、そんな日にライルと喧嘩して犯されるなんて冗談ではない。一生後悔しそうだ。


「ホテルが気に入らないなら、行かなければ良かっただろう!」
「…ちが…、せつ…」
「俺はお前だから、誘ったのに…」


ライルには俺が尻軽にでも見えたのだろう。
怒るより前に哀しくなってきた。
ライルの押さえつける力が弱くなったので、起き上がってこのまま手首を縛られたままでも帰ろうと思った。
しかし、上から手首を取られて叶わない。


「離せ!!」
「暴れるなよ」
「俺のことは放っておけばいい!」


ライルの手から逃れるために暴れると、舌うちされて手首を掴む手とは反対の手で顎を取られた。
そのまま唇を重ねる…なんて優しいものではなく、感情をぶつけ合うのようなキスをされた。
無理な体勢だったため、身体は痛いし心も痛い。
刹那の様子を窺い、ライルは落ち着いたところで離した。


「自分ばっかり言いたいこと言って逃げるな。謝らせろよ」
「……」


謝る?
刹那の怪訝な表情に、ライルは視線を逸らした。


「…悪かった。俺だから誘ってくれたんだな…。誰にでもそうしてるのかと思ったんだよ」


ライルはそう言うと、手首を縛っていたネクタイを解く。
勝手に疑っておいて拘束したライルを自由になった手で殴ろうかと思ったが、何故か出来なかった。
惚れた弱みかもしれない。
せめてと思い睨みつけるが、ライルは気にせず続ける。


「けど、昨日だってわざわざお前のバイト先まで出向いたけど厭そうにするし、かと言えば今日は口にキスしてほしいとか言うし?俺はお前にすっげー振り回されてるんだよな」
「え…?」
「何でこんな奴好きになったんだ?って自分でも思う」


ライルは痕のついた刹那の手首に触れ、優しく撫でる。
若干失礼だと思ったが、それ以上にさらりと言われた言葉に耳を疑う。


「…俺が、好き…なのか?」
「好きだよ」


すぐに返事をされて、こちらが照れてしまう。


「そ、そうか…」


心拍数が上昇する。
刹那は羞恥からライルの顔を見ていられなくて俯いた。
ライルは刹那が怖がっているのだと思い、自分に対して失笑する。


「…酷いことをして悪かった」
「大丈夫だ…俺も、好き…だから」
「強姦しようとしたのに?」


ライルの言葉に刹那は首を横に振る。


「和姦だろう?誘ったのは俺だ」
「…刹那」


ゆっくりとライルの顔が近づいてくる。
刹那はライルの意志を酌み取って目を閉じた。
少しかさついたライルの唇の感触が、自分のと重なることで分かる。
先程は驚くだけでそんなことを考える余裕もなかった。
余所ごとを考えていたのがライルに伝わったのか、少し乱暴に舌を入れてきた。
ライルより経験値の低い刹那は、すっかり翻弄される。


「はっ…ぁ…」
「刹那」


そのまま、未知の世界に飛び込む。
かと思いきや、ライルが意地の悪い笑みを浮かべて頬を抓った。


「誕生日だって俺知らなかったんだけどさ、何で言わなかった?しかも兄さんが知ってて俺が知らないとかおかしいよな」
「いひゃい…!」


力を弱めるどころかかなり本気で抓るので、頬が伸びる。
ニールが知っていたのは、ゼミの中での自己紹介があるし記憶力がいいからだろう。
それ以外ないのだが。
暫くすると満足したのか、ライルが手を離した。
頬は勿論じんじんして痛い。


「ったく、何にも用意してねーぞ」
「…好きだと言ってくれただろう」
「誕生日に関係ないだろ」


格好つけているが、耳が赤い。
意地悪を言おうかと思ったが、また頬を抓られては敵わないため、やめた。


「…ニールのおかげだ」
「こんな時に…他の男の名前を出すなよ」


案外心の狭いライルは、刹那の身体を今度は優しくベッドに倒した。
真剣な、本能と理性が葛藤しているライルの表情に刹那は息を呑む。
刹那の表情に満足したライルはふっと笑った。


「…誕生日、おめでとう。お前と出逢えて良かった」
「…ああ」


(嬉しい、)

顔の近くに置かれた腕を曲げて、ライルの身体が近づく。
もう一度キスを交わし、ライルの手が刹那の服の中に忍び込む。
ライルと出逢うきっかけとなった事件のせいで少し恐怖を感じたが、それ以上にライルと先にいきたかった。
脇腹をつっとなぞられて、刹那はびくっと身体を震わせる。
ライルの指が背中に回り、額に口づけられた。
その時、

ぐー。


「……」
「……刹那」
「…ラ、イル…」
「そういや、何も食べてなかったな」


刹那の腹が鳴り、2人は一気に現実に戻った。
ライルは起き上がってルームサービスを頼みに電話をしに行く。

その時にメールの着信音が鳴った。




ニール・ディランディ
件:お楽しみの最中かな☆(゚ω゚☆)(☆゚ω゚)☆


音が鳴って邪魔したら;m m´∀`)ゴメンネェ↓
言い忘れたけど明日の研究発表お前だから、腰痛くてもちゃんとゼミ来るんだぞ((*´∀`))((*´∀`))ケタケタ



PS.ライルに明日の夕飯いらないって言っといてくれ。
ニールお兄さんより愛を込めて(//´∀`//)照





「自分で言え!」


刹那は携帯を隣のベッドに投げた。
ライルは受話器を持ったまま刹那の様子にぎょっとし、首を傾げた。


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