刹那誕生日2009(ライ刹)1 | ナノ


※設定からしてあまりにもくだらないです。
都合により、刹那は20歳のバースデーです。
それでもよろしい方のみどうぞ。


■簡易キャラ紹介
刹那:都内の大学に通う学生。
ライル:会社員。3年前に暴行されそうになった刹那を助けた。が、刹那を助けるために限定版のAVを失ったことを悔やんでいた。
ニール:刹那の通う大学の講師であり、刹那のゼミの担当。



「おー刹那」


講師のニールが、刹那に向かって手を振る。
刹那は振り返り、ニールの元まで歩く。
ニールは刹那のゼミの講師であり、ライルの双子の兄だった。
刹那はライルと3年前に逢っており、下種な男らに裏路地に連れ込まれたところを彼の持っていたAV一つで助けられた。
その時にライルは刹那のことを「貧相なガキを犯すぐらいならこれでも見ろ」と付け加えて。
そのAVが限定物だったこともあり、刹那は犯されずに済んだ。
しかし気に食わないのは当然だろう。AVの方が魅力的なのは構わないが、「貧相なガキ」というのが刹那の中で腹の立つ言葉だった。
3年後、大学内であの時の顔を見て腸が煮えくり返るような、そんな想いがした。
その時はニールもライルも区別がつかなかったし名前すら知らなかったので(双子だとも思わなかった)、大学の講師をしているニールが貧相なガキと言った男だと確信していた。
忘れられていることに腹立ち、押し倒したことはいい思い出だ。された方はトラウマになるかもしれないが未遂だったので赦してもらおう。
その後「貧相なガキ」と言ったのがライルと分かり、ニールに連れられ二人の住んでいる部屋まで案内してもらった。
そこで運命的…とは言わず必然的な再会を果たした。
それだけで終わらずうっかりライルを好きになってしまった刹那は、ニールに即ばれてからかわれている。あの時押し倒した仕返しだろう。
何だかんだ言ってニールに協力(?)してもらい、今に至る。


「何の用だ。先日の課題ならさっき出した」
「相変わらずだな、お前。今日お前の誕生日だろ?」


言われてみればそうだ。
刹那はこくんと頷いた。


「おめでとう。20歳かー、若いな」


ニールは28なのだから若い部類に入ると思ったが、刹那は言葉を呑み込んでお礼の言葉を述べた。


「…ありがとう」
「いえいえ。お前は何で俺には素直なのに、ライルには素直になれないのかなー」


刹那はうっと詰まった。
昨日のことだった。偶然にもバイト帰りにライルと逢った刹那は、何故か家まで送ってもらった。
ライルに優しいことをされた経験がなかったので戸惑ったが、内心はとても喜んでいた。
いつも喧嘩腰だったりするので、素直に礼を言おうとしたが…感情とは違い、


『暇人だな』


と言ってしまった。
その後不機嫌になったライルと口喧嘩したまま別れた。
ニールはライルからその話(愚痴)を聞いたのだろう。


「………」
「しょうがないな。そんなツンデレな刹那君に俺からの誕生日プレゼントだ」


ニールが苦笑いをしながら、刹那の手を取り掌に何かをのせる。
よく見ると、都内で有名なホテルのチケットだった。


「…ニール、これは?」
「いやー合鍵渡そうかと思ったけど、そんなことしたらライルが怒るだろ?俺もライルや刹那の愚痴に付き合うのはうんざりしてきたし…ゆっくり眠りたいんだ」


だから今日それでライルを誘ってこい。そのまま泊まってやってきてもいいから。
ニールは破顔してそう言った。
正直笑いごとではない。やる覚悟も出来ていないし、その前に…


「俺から誘うなんて天地がひっくりかえっても無理だ」
「大丈夫大丈夫。ここにライル呼んであるからな」


何が大丈夫なのか。
俺の逃げ道が塞がれただけだ。
刹那は大きな溜息を吐く。
そのまま楽しそうな(俺やライルをからかっている時はいきいきしている)ニールは、刹那を裏口まで引っ張っていった。






「おまたせ、ライル」


講師や教授の駐車場の奥に、ライルは車を停めて側で立ち待っていた。
ニールと刹那を見て、不機嫌なのを露にする。
まるで昨夜と同じだ。


「おっせーよ。明日休みだからって一時間も待たすな」
「一時間…?」


今が7時半だから、ライルは会社が終わってすぐにここに来たということだ。
刹那はニールの後ろで驚いていた。
一方ライルは刹那をじろりと見た後、ニールを睨みつけるように見た。


「で、何でここに呼んだわけ?」
「刹那がお前に用があるんだよ。あ、俺はここで帰るから」
「は?」
「じゃあな、刹那。可愛くやれよ」


逃げるのか。しかも可愛くってどんなだ。
ニールは俺の肩を押して、ライルのすぐ前に立たせた。
ニールが車に乗って本当に帰ってしまい、刹那とライルは2人きりになった。
気まずい。昨日のことがあるから特に、この沈黙が苦しい。
俯いた刹那を、ライルはちらりと見ると溜息を吐き後ろ頭を掻いた。
びくりと刹那は身体を震わせる。


「…まあいい。ここだと目立つから、とりあえず乗れよ」


刹那は一瞬躊躇したが頷いた。
ライルは刹那を自分の車の助手席に乗せて、自分は運転席に座った。
そのまま大学を出て少し行ったところで左に寄せてエンジンを切る。


「それで?昨日暇人扱いしてくれた学生が、何の用だって?」


刺々しい口調だ。根に持っている。
ここで説明出来ずにだらだらしていたら、余計にライルを怒らせてしまう。
刹那は手に持ったチケットを握りしめて、一度ぎゅっと目を瞑りライルの方を向いた。
刹那の勢いにライルは目を瞬いた。


「ライル、俺と…一緒に……そ、の…」


言葉が続かない。
息を吐いて吸うが上手くいかないので、皺の寄ったホテルの予約チケットをライルの前に出した。
ライルはそれを無言で受け取り、眉を寄せて見つめる。


「何だこれ。ホテル…?お前…じゃないよな。兄さんの入れ知恵か」


案の定即ばれた。
刹那は先程の恥ずかしさと1人舞い上がっていた(顔には出ていない)事実にどん底まで落とされた。
このままここにいても仕方がないので、シートベルトを外して歩いて帰ろうとした。
しかしライルに横から顎を掴まれて、彼の方に引っ張られた。


「な、何だ…?」
「どこ行くつもりだ?」


いつもより真剣な言葉と態度に、刹那は困惑する。


「か、帰る…だけ、だ」
「ホテルに男を誘ったのに?」


侮蔑するように、ライルは吐き捨てる。
ここまできて、ライルが怒っていることに気付いた。
何かしただろうか。今日、失言はない筈だ。
暇人が尾を引いているのか。それともホテルに誘ったのが気に食わないのか。

(そんなに嫌われていたのか…)

認めたら余計に苦しくなった。


「ホテルのことは…厭ならいい。ニールから貰ったが、俺にはお前と行く以外に使い道はないから、お前が…」
「お前は、俺でいいわけ?」
「…ああ」


直接言われると肯定しづらくて刹那は一瞬躊躇った。
ライルはがしがしと頭を掻くと、掴んでいた顎を更にひいて頬に唇を落とす。


「ホテルに行ったら、これぐらいじゃ済まないからな」


顎から手を離したライルは、刹那にシートベルトをしろと言って車を発進させる。
どうやらホテルに向かうことになったらしい。
絶対に断ると思っていたので、刹那は今更ながらに心臓が高鳴る。
されっぱなしは悔しいので、厭味を忘れなかった。


「…頬より口が良かった…」


何故かライルが急ブレーキを踏んだ。
車通りの少ない道で良かった。
でなければ、追突されていただろうから。


****
素直になれないへたれとツンデレの攻防戦。


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