love care | ナノ


※既に出来あがってるライ刹17話から18話の間の話。
ライルに格好良さを求めている方は回れ右推奨です。


傍から見れば俺と刹那は抱き合っており、一応恋人同士の俺たちには今、最高にいい状態である。
実際には刹那が一人トレミーから離れていた時に敵に撃たれた傷を手当するだけなのだが。

【刹那の肩の怪我の包帯を取り、新しいものに取り換える】

これだけの行為が俺にとっては拷問である。昔のトラウマからか、血を見るだけで失神してしまうのだ。
それでも刹那の身体を他の奴に見せる気も触らせる気もなかったので自ら刹那の手当役を名乗り出たのだが、事情を知っている(というかダブルオーのコックピット内で気を失っていた刹那を最初に俺が引き上げようとして、血を見てぶっ倒れた場面を目撃した)ティエリアとアレルヤが眉を寄せた。
アニューに手当の仕方を一通り習った俺は、彼らの同意を求める前に刹那に逢いに行ってしまった。
すると刹那は自分で包帯を解いていたので、俺に任せろと豪語して返事も聞かずに手当を始めた。
刹那は自分での手当に慣れているようだが、手先が不器用なのかお世辞にも綺麗とは言えない。
手先の器用さには自信があったので、後は血を見てぶっ倒れなければ大丈夫だと思った。
だが世の中そんなに甘くはなく、包帯を解いて傷口を視界に入れた瞬間頭がふらりとした。
その様子を見た刹那が慌てて俺の頭を支えたらしい。慌てる刹那を見るのはベッドの中以外では初めてだったとか不謹慎なことを考えてしまった。

(というか、手当する人間が助けられてどうする)

その後刹那にも恥ずかしながら事情を説明し、それでもなお傷の手当をしたいと言った。
自分で出来ると言われるかと思ったが、何故か任せてもらうことが出来て倒れそうな頭(背中辺りも)を支えてもらっている。
事情を知っている人間が見れば、とても情けない姿である。


「…頑張れ俺頑張れ俺頑張れ俺頑張れ俺頑張れ俺…」
「…頑張ってくれ」


自らを励まし刹那にも励ましてもらいながら、刹那の肩の傷口を消毒して絆創膏の大きいものを貼る。
消毒する間怪我人よりも生きた心地がしなかったが、そこまでしてしまえば後は包帯を巻くだけだ。
ふう、と息を吐いて刹那の様子を確認した。
アニューに言わせると、暫くは安静にしなければならない。
カプセルに入っていろと皆言ったのだが、刹那は首を横に振った。
いつ敵襲があるか分からないから、と。
最初は猛反対したが刹那は一度決めたら頑固であり、なかなか意見を変えない。
結局妥協をし合うしかなかった。現状維持のために眠る間だけカプセルに入るように主にティエリアと俺で言い、刹那が首を縦に振った。


「よし」


包帯を巻き終えて、俺は満足気な声を出した。
刹那が自分でやるよりは綺麗に出来ただろう。
満足感に浸っていると、刹那が身体の具合を確かめふっと目元を和らげた。


「ありがとう」
「俺の我儘につき合わせて悪かったな」
「いや…それより大丈夫か?倒れないか?」
「…平気だ。お前もカプセルの中入れよ」


怪我人に心配される俺ってどれだけ情けないんだと思ったが、口には出さずに奥に仕舞い込んだ。代わりにもっともらしいことを言って誤魔化す。
抱き合えないことは分かっていたので、キスでもして甘やかしたかった。
だが血が苦手なせいでそんな気も吹き飛んでしまった。

(刹那にこれ以上負担をかけないためにも、さっさと退散するか)

使い終わった包帯と絆創膏を丸めてゴミにし、刹那から離れるために立ち上がる。
背中を向けた瞬間上着を引っ張られた。


「おわっ、」


上手く踏ん張れなかったので、危うく刹那の身体を潰すところだった。ぎりぎりで耐えたが。
何考えているんだと刹那の方に振り返ると、俯いて顔が見えない。

(一体何がしたいんだ?)


「刹那、休まないと怪我は治らないぜ?」


休んだとしても治るか分からない。アニューは直接俺たちにそうは言わなかったが、何となく深刻な表情から推測していた。
本当は戦いに出したくないし、このままカプセルの中にいてほしい。
しかし刹那は望まないし、もう立派な大人だ。本人が一番分かっているだろう。
刹那の意志を出来る限り尊重したいと思った。
何も言わない刹那の顔をとりあえず上げるために、顎に手を掛けた。
感情を揺さぶる強い視線が、こちらを捉える。


「…どうしたよ」
「…欲求不満だ」
「……」


(正直で素直なのは刹那の魅力の1つだと思うが、まず色気がない。そして怪我人が何を言う。更にこんな科白で煽られる俺どうよ)

血のせいで忘れていた劣情を取り戻しながらも、俺は溜息しか出なかった。
刹那が断られたと思いしゅんとする。まるで子犬のようだが、性格諸々そんな可愛いものではない。獣だ。

(冷静になれ俺。刹那は怪我人、俺は健常。年上である俺がびしっと決めないとな)

既に流されかけているにも関わらず、俺は心の中で唱え続けた。


「…怪我人はおとなしくしてなさい」
「怪我しているからこそやりたいと思うが」
「それ、種の保存機能かよ。だめだめ、せめて出血が止まるまでは我慢しろ」


刹那に上着を着せて、カプセルに寝かせる。
途端に不機嫌になった。初めのうちは何考えているのか分からないと思っていたが、こつを掴めば分かりやすい。
今はこつ等なくても分かるが。
やりたいと言った割には、暴れることなく俺の言うことを素直に聞いている。


「…ライル」
「治ったら、お前が根を上げるぐらいのやろうぜ?それまでおとなしくしていろ」
「分かった。だがそこまでは遠慮する」


そう言いつつキスを強請る。
まあ舌入れなきゃいいか…と思い、刹那の唇に口付けたら、あいつが引っ掻きまわしてきやがった。

(おいおい、スイッチ入ったらどうしてくれるよ)

実際には満更でもなく、刹那の舌に応えて吸い上げた。


「…おやすみ、刹那」
「おやすみ」


カプセルの蓋を閉じて、俺はメディカルルームから出ていった。


love care


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -