3人でおやすみなさい | ナノ



おかしい。
何がおかしいって、起きたら動けない事だ。しかも暑苦しい。
俺のつい最近買ったダブルベッド(もちろんそういう事をするため)に、俺以外に何かいる。
左に視線を移せば、俺の脚に絡みついてくっついて寝ている同じ顔。
右を向けば、先日恋人になった東洋の青年が俺の腰に腕を回している。
その真ん中に挟まれて、動けない俺。


「…3人は狭いんだけど」


昨夜は1人で眠った筈だ。
帰ってきたら俺そっちのけで楽しそうに話をしている刹那と兄さんを目の当たりにして、胃がむかむかして拗ねた。
そのまま不貞腐れて寝た気がする。どこのガキだ。
でも恋人そっちのけで兄さんと楽しく話している刹那も悪い。更に俺に気付かず刹那にばかり構う兄さんも悪い。

(うっわ…俺って欲張りなんだな)

認めたら凹んだので、目を瞑ってもう一度眠ることにした。
その時に左から腕が伸びてきて、身体を弄る。

(ぜってー起きてやがる、馬鹿兄貴)


「…おい、こら。セクハラで訴えるぞ」
「何だよーけちだな」


けちとかそういう問題ではない。
というか、さっさとやめろ。服の中に手を入れるな。
苛々しながら兄さんの手の甲を抓り、眠っている恋人に気を遣いながら小さな声で話す。


「あれだ、俺は刹那のもんだからさ」
「その通りだ。ニール・ディランディ、その手を今すぐ離さなければお前を駆逐する」


(お前も起きてたんだな…)

刹那はライルの腰に抱きつきながら、不機嫌そうな表情で言う。
その科白は嬉しいが、刹那の表情は眠いのが半分を占めていると思った。お前低血圧だしな。
そんな刹那に、兄さんは苦笑を浮かべて手を引っ込める。


「刹那、独占禁止法って知ってるか?ライルは皆のものだぞ」
「寝言は寝て言え。皆に渡すわけないだろう」
「それもそっか。じゃあ俺だけ」
「断る」


川の字の真ん中にいる俺を差し置いて話を進めるなよ、と思いつつも関わりたくなかった。
頭痛がしてきた。正直もう一度眠ってなかったことにしたい。
今日は休日だしまだ眠っていてもいいだろう。誰かそう言ってくれ。


「おいおい、ライル寝るのか?」


兄さんが小さい子を相手にするように俺の頭を撫でる。
そろそろ兄さんは俺が三十路前だという事を知るべきだと思う。変なフィルターかかってないか?
それでもその手は気持ちいいので、そのままにしておいた。
そうすれば、腰に回った手に力が入り思わず咳込みそうになる。こいつ馬鹿力だった。


「ちょ、おい…刹那、いきなりなんだ」
「別に」


振り向いて刹那の頭を撫でれば、納得いかないような表情をしている刹那と目が合う。
しょうがないな、と思いつつも刹那の前髪をあげて額に唇を落とした。
刹那は毛布を手繰り寄せてもぞもぞと動かし、顔を伏せてしまう。
照れているのだろうか。お前の表情をもっと見たかったのに。


「…寒いんだけど」


兄さんが面白くなさそうに言い、刹那が引っ張ってしまい身体の上からなくなった毛布を元に戻そうとする。
刹那は刹那で、それ以上いかないように毛布を引っ張る。
またしても俺は置いてけぼりだ。今は全然寂しくなんてないが。


「ったく、俺は寝るから、お前らは勝手にしろよ」


あと暴れるな、騒ぐな、と忠告して、仰向けになって目を閉じる。
すると2人はおとなしく毛布の中に収まった。
こうもあっさり落ち着くとは思わず驚いて左右を見ると、兄さんも刹那も丸まって俺の身体にくっつく。

(だから、暑苦しいんだって)

それでも嫌とは言えずに、暫く眠った。
こんな日もありかな、と思いながら。


3人で、おやすみなさい


「んーライルv」
「…おい、ライルの寝ている間にキスするな」
「おやすみのキスだからOKだろ。昔はライルもやってくれたし」
「いいわけがない。これからは俺がするから、ニールは壁にでもしていろ」
「何でだよ。あ、良い事思いついた。ライルにやった後の刹那にしてもいい?」
「……いいわけねーだろ」
「ライル起きてたのか。疲れてるだろうから眠ってろよ」
「(お前らが騒がしいからだろうが)…ったく」
「すまないな、ライル。おやすみ」
「ああ、おやすみ…刹那」
「はいはーい、2人ともおやすみ」


****
Q何故ニールはベッドから叩き出されないのか?
→ライルも刹那もニールの事は好きだから。

ライル総受けっぽいですが、ライ刹です。ライ刹です(大事なことなので2回言いました)。ブラコンの行き過ぎたニールと主張してみる。


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