ディランディ誕生日2009(ライル編) | ナノ


ディランディ誕生日(ライル)


「兄さん、今日は俺達の誕生日だ。
とは言っても、兄さんは永遠の24歳だが俺はとうとう30歳になってしまった。
正直な話体力も落ちてきた気がするし、三十路は洒落にならない。
問題もたくさん起こしているし、そろそろ年齢を表理由にマイスターを下ろされるかもしれない。
そうしたら、アイルランドに戻って兄さんの墓を作ろうと思う。
ちゃんと両親の隣に作ってやるから安心して眠ってくれ。」
「…何勝手な事言ってんだ」
「いたのか、ライル」


(ここは俺の部屋なんだが)

刹那は大して驚きもせずにライルの隣で勝手な妄想を繰り広げてくれた。
よく見なくてもカンペを持っている。

(誰の差し金だ、笑えねえ)

ライルは心の中で毒づくと、刹那の肩に凭れかかった。
体重めいっぱいかけてやったので、刹那は案の定顔を顰めた。


「…重い」
「知らねー。俺は今ナーバスなんだからほっとけ」


じゃあ何故刹那を部屋に入れたのか、という話になるのだが、それはライルではなくハロが入れた。
そのままライルに一言も挨拶をせずに、今の妄想を披露した。

(三十路がどうした。体力は…それなりに落ちているかもしれないが、セックスならまだ大丈夫だ)

そんな自慢も出来ないことを、ライルは発してしまったらしく刹那を大いに呆れさせた。


「さすが下半身の男だな」
「人を最低みたいに言うな」


刹那の肩に凭れかかりながら、ライルは別の事を考えていた。
去年までは兄さんが生きていると信じていたが、今年は違う。
今まで一緒にいなくてもこの日だけは繋がっていると信じていたから、どうしたらいいのかも分からない。

(だから今日はミッションがない限り、部屋から一歩も出ないでおこうと思ったんだが…)

刹那は相変わらずペースを乱してくれる、とライルは目を閉じて思った。


「…happy birthday」
「は?」


突然誕生日おめでとうなどと言い出した刹那に、ライルは刹那の肩から起き上がって目を瞠る。
そんなことを言い出すとは思わなかった。


「誕生日までそんな顔をしていれば、ニールは泣くぞ」
「……」
「簡易だが三十路おめでとうパーティーも用意してある。俺がお前を呼ぶように…っ」


刹那が最後まで言うことは出来なかった。
ライルが正面から刹那の身体を抱き締めた。それこそ力強く、逃げだすことが出来ないように。
刹那は身体が軋んで痛かったが、黙ってライルの背中に腕を回した。


「…三十路は余計だ」


苦し紛れにライルが言い返すと、刹那は苦笑を浮かべてライルの背中を撫でた。
ライルは身体を震わせたが、何も言わずに刹那の好きにさせる。

(…かっこわりい。だが、嬉しい)

ライルは暫く刹那を離さず、新たな迎えが来るまでそのまま抱き締めた。



HAPPY BIRTHDAY!!



(兄さん、誕生日おめでとう。今日で俺は30になった。正直もう誕生日なんて嬉しくもなんともねーけど、久し振りに大勢に祝ってもらった気がする。あんたも生きていた時はそうだったのか…?今度地上に降りたら、兄さんとエイミーの好きだった花を供えておくよ)

(ライル、誕生日おめでとう。俺の頃は守秘義務なんていう面倒なものがあったから、祝ってもらえなかったぜ…だけど、お前は毎年俺の分まで祝ってくれてたんだな。ありがとう。ライル、お前が生きて未来を見つめることを俺は願うよ)

(お兄ちゃんたち誕生日おめでとう!!ってニールお兄ちゃんはいつも側にいるけどね。この日は3人で走り回った時を思い出すね。ライルお兄ちゃん、無茶はしないでね。お花楽しみにしてます!)


「…愛されているな、お前は」


パーティーの騒ぎで疲れて眠ったライルの側で、刹那は苦笑を浮かべた。
ライルの周りに佇む2つの白い影が刹那の身体の前に来ると、ふわっと浮かんで消えた。


「…ニールも、誕生日おめでとう」


今まで言えなかった言葉を刹那は呟いて、ライルの隣に寝転んだ。
ニールが笑って頭を撫でた気がした。


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刹那は変革しているので、幽霊見えたらいいな…という妄想です。


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