バレンタイン2009(ニル刹編) | ナノ


※刹那のお悩み解決コーナー終了後(手伝いに幽霊ニールがいます)。
ニールは刹那にしか見えません。ティエリアは気配を感じています。ライルは刹那と接触したらニールを確認できるようになります。
ニールは幽霊なのに触れます。


バレンタイン(ニル刹編)


トレミーの男クルーの悩みを無事解決に導いた(?)刹那は、自室に戻ると力を抜いてベッドの端に座った。
その隣に刹那の守護霊と化したニールが座る。
ニールは疲れて溜息を吐いた刹那の頭をふわりと撫でた。


『お疲れさん』


相変わらず頭を撫でるのが好きだな、と刹那は思いつつもニールの好きにさせた。
刹那もニールに撫でてもらうのが好きになっていた。
刹那がそれを口に出したことはないが、ニールは勿論分かっていた。


「お前も」
『俺は平気だよ。刹那が沙慈君にあげだ時は腹立たしかったが、まあそれもよしとする』


ライルと会話出来たのが余程嬉しかったようで、ニールは子供じみたことを言いながらも先程のように怒ってはいなかった。
わしゃわしゃと刹那の頭を掻き回したニールは、そのまま刹那の頬に手を滑らせた。
手袋をはめた手で刹那の唇をなぞり、期待でびくりと身体を震わせた彼にふっと微笑んだ。
なんとなく悔しい刹那はふと、疑問に思った事を述べる。


「…弟とは、もう良かったのか?」
『まあ、今日消えるわけじゃないからさ』
「…そうか」


あの後、ニールはライルの頭を子どもをあやすようによしよしと撫でて離れてしまった。
ライルも弟の表情ではなくいつもの軽い印象に戻り、2人は何もなかったかのように振舞った。
兄弟にたくさんの言葉は必要ではなかったと言うことらしい。


「…バレンタイン、か」


双子の再会を間近に見て、些か寂しいと感じた刹那はぼそりと呟いた。
ニールは刹那の言葉を聞き逃さず、声を掛ける。


『何かあったか?』
「いや…あんたにチョコレートをやったことはなかったな、と思っただけだ」
『そういやそっか…』


懐かしいな、とニールはまだ刹那が小さかった頃のバレンタインを思い出す。あの頃の刹那は人に無関心だった。
ホットチョコレートを贈ったり等さりげなくアプローチしたが、刹那にさりげなくは駄目だと思い知ったイベントでもあった。
それが今はこんなに大きくなって、周りに気を配り皆の心配をしている。
ニールはそんな自分よりも他人を気遣う刹那自身を見守ろうと決めていた。


「だから、今年は用意してみた」
『大丈夫。俺は貰えなくても…って、は?』


刹那はベッドから立ち上がり、デスクの中からラッピングされたチョコレートと思われる箱を取り出した。
そのままはにかんだ笑顔で(ニールのフィルター有り)その箱をニールの掌にのせる。
ニールは掌にのせられた箱と刹那の顔をまじまじと見て、感動のあまり声が出せなかった。


『…刹那…』


やがて出たのは、愛しい弟分の名前だけである。
刹那は苦笑いをしながら、教えてもらった言葉をニールに伝えた。


「この日の贈り物は、感謝の印でもあるそうだ。気持ちを形に変える事も大事なのだろう?」
『…そうだな。ありがとう、刹那』


ニールはふわりと笑い、箱を側に置いてデスクから戻ってきた刹那の腕を引いた。
刹那の身体がニールに倒れそうになったところを、彼は刹那の後ろ頭を手で押さえながらベッドの上に倒した。
その上からニールが覆い被さり、ゆっくりと顔を近づける。
いきなりの事で驚いていた刹那もニールが何をするのか分かり、背中に腕を回して目を閉じた。
ニールは刹那の唇を舌でなぞり、焦らすようにゆっくりと唇を重ねる。
時間をかけて唇を味わったニールは、刹那の唇から含みきれずに零れた唾液を拭った。
息を乱した刹那はうわ言のように相手の名前を呟いた。


「…ロック…オン…」


大人になった刹那の欲の含んだ声色と表情に、ニールは一瞬息を呑む。
取り繕って大人の余裕を見せたいと思っていたが、刹那ももう大人であるしそんな上辺だけは読まれる。
一緒にいた年月は長くなかったが、2人はそれだけ濃密な時間を過ごしてきた。


『…抱いて、いいか?』


ニールが素直に言えば、刹那は彼の手をとって頬に擦り寄せた。


「…ああ…」


返事を聞くとともにニールは早急に刹那の制服の上着を脱がし、捲り上げようとした。
その瞬間、刹那の部屋の扉が物凄い音とともに破壊された。


『な…!?』
「刹那!やっと出来たぞ!」
「ティエリア?」


破壊した扉の破片を避けながら、ティエリアは紫のエプロンを身につけて部屋に入り込んでくる。
何故かとてもいい笑顔だ。
刹那は慌ててニールを退かし、起き上がって上着を羽織る。
そんな刹那をお構いなしに、ティエリアはチョコレートを入れた袋を差し出した。


「君のために作ったチョコレートだ。出来栄えは良かった」
「……ああ、」
「ん?あ、そうか!君はロックオンと一緒だったのか?ロックオンの分もあるんだ。一緒に食べてくれ」


姿や声は確認出来ないが、ティエリアはニールの気配を感じ取る事が出来る。
いち早くニールの気配に気がつくと、ティエリアは照れた様子でデスクに向かってもう一つの袋を差し出した。
残念ながらニールはデスクの方ではなく、ベッド側にいる。逆方向である。
戸惑うニールだったが、刹那に視線で行けと言われてティエリアが持っている袋を受け取った。
姿を確認する事は出来ないがニールに受け取ってもらえて頬を赤くしたティエリアは、そのまま照れたまま部屋を出ていってしまった。
残された2人は目を合わせて、思わず溜息を吐く。


『どうするんだ?扉…』
「ティエリアがどうやって壊したのか分からないが、修理の間暫く他の部屋に厄介になる」
『やっぱり…お預けか』


がくっと項垂れたニールを後目に、刹那は先程の雰囲気など全くなかったかのように振舞う。
気が乗らないとこうだよな…とニールはもう一度大きい溜息を吐いてベッドに仰向けに転がった。


「それよりも、お前の生命の危機だ」


刹那はティエリアに貰った袋を見ながら、淡々と呟く。
なんだかんだ言って刹那はティエリアの手料理を食べているので、胃袋も慣れてきていると思うし死にはしない。しかし慣れていないニールには辛いかもしれない。
ニールは厭な予感がして、ぶるりと身体を震わせた。


『…食べたら、口直し貰ってもいいか?』
「口直しで済めばな」


もちろん口直しどころで済まなかったニールは、ライルの部屋で刹那と弟に看病をしてもらって有意義に過ごした。


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