バレンタイン2009(ダメンズ編) | ナノ


※刹那のお悩み解決コーナー(手伝いに幽霊ニールがいます)。
ニールは刹那にしか見えません。ティエリアは気配を感じています。ライルは刹那と接触したらニールを確認できるようになります。
ニールは幽霊なのに触れます。
若干ノマカプ注意!(アレマリ?とか沙慈ルイ?)ついでにディランディ警報も!お互いにブラコンしてます。


バレンタイン(ダメンズ編)


皆さん、こんばんは(棒読み)。刹那・F・セイエイだ。
2期になってから俺は、不幸すぎる青年沙慈・クロスロードやマイスターの中で最年長の男の愚痴を聞いたりしている。正直な話、沙慈はともかくライルは面倒だが。
1期で言うロックオン・ストラトスのようだ。あいつも俺やティエリアに苦労していたのだろう、今更ながらに彼の存在の大きさがよく分かる。
…おい、先程から隣でうるさいぞニール。それに抱きついてくるな、暑苦しい。
話が逸れたが(カンペを見ながら)、今日はバレンタインだ。最近は逆チョコというものが流行っているらしいが、あいにくトレミー内ではあまり浸透していないらしい。
ただし、ティエリア・アーデは何故か女性陣の中に混ざってチョコを作っているらしいが。あいつの料理は殺人的だが、貰った奴は大丈夫なんだろうか。ニール、お前は覚悟しておいた方が身のためだぞ。
今日の俺のミッションは、女性陣ではなくチョコレートを貰えない沈んだ野郎共の世話係らしい。正直な話面倒であるが…ミッションなので仕方がない。
順に聞いていこうと思う。ただし限定2人までだ。


ダメンズ(アレルヤ・ハプティズム)


「わーん、刹那ぁ!!」


早速今日の負け犬がやってきた。いやおかしい、アレルヤはマリーと言った女と四六時中いた筈では。
今年のバレンタインでは100%彼女から貰えると思っていたが、違ったのだろうか。


「うう…僕、マリーからのチョコが貰えないよー」
「何故だ?彼女はお前が好きだろう」
「……あれを見て」


アレルヤの指した方向には、マリーの姿があった。
女性陣とは離れたところで、両腕を胸の辺りで組んでへなへなと座り込んだアレルヤを見下している。
そのまま彼女はアレルヤのところまで来て、長い髪をうっとおしそうに後ろに流した。


「マリー…」
「その名で呼ぶなと言っている。私はソーマ・ピーリスだ!」


ソーマ・ピーリス?彼女には偽名があったのか。
偽名を使うと人格も変わるらしい。マリーの時はおしとやかで芯の強い女だと思ったが、ソーマを名乗ると攻撃的になる。アレルヤもハレルヤを名乗るとおかしくなるから、彼女も同じなのだろう。
ベストカップルではないか、と横からニールも言っている。何故か棒読みだが。関わりたくないのか。
俺もニールと同じ意見だ。何故ならS(彼女)とM(アレルヤ)は惹かれあうらしいからだ。これは自称百戦錬磨のライルが言っていた。
いつの間にか殴り合いを始めた(というか彼女の方がアレルヤを殴っているのだが)2人に、念のため用意しておいたチョコレート(しかもティエリアの試作)を取り出した。
そのまま戦地を進み、アレルヤに試作を差し出す。


「刹那?」
「お前には秘密にしていたが、以前マリー・パーファシーからお前宛てのチョコレートを預かった」
「え…!?」
「私はそんなもの…んぐ!!」


よし、ニール。そのままちょっと彼女の口を塞いでいてくれ。
手伝いのニールに感謝しながら、俺はそのまま続けた。


「でも、何で刹那に…」
「彼女が一生懸命お前のためにチョコレートを作っているところを目撃してしまったからだ。恥ずかしがり屋な彼女は、俺にこのチョコレートをアレルヤに渡すように言った」


殴られて泣いていたアレルヤの掌に、物体Xを置く。
アレルヤは放心状態で俺を見ていたが、やがて輝いた表情になり彼女の顔を見つめた。


「ありがとう!マリー!」
「だから私はソーマで、お前に何も…!」
「ねえ、一緒に食べようよ〜♪」


話の聞いていないアレルヤは、嫌がる彼女に抱きついて蹴飛ばされていた。

(願わくは、死にませんように)

とりあえず、一つ目は解決だ。


不幸青年(沙慈・クロスロード)


「……」


今日一番茸の生えそうな暗い雰囲気を出した沙慈・クロスロードに、俺は黙っていられず話し掛けることにした。
横からニールが「そいつに甘い!」と五月蠅いが、拾ってきたものを責任持って見ろと言ったのはあんただと言い包めた。


「沙慈・クロスロード…」
「刹那…」


声を掛けたら、沙慈は顔を上げたが再び蹲って顔を膝に埋めた。
十中八九恋人のルイス・ハレヴィのことを考えているのだろう。アロウズにいる彼女を取り戻さなければ、彼女どころかチョコレートすら貰えない。
バレンタインは男にとって酷な行事だとロックオンは言っていたが、まさしくその通りだ。
沙慈・クロスロードは生きた屍と化していた。
そんな沙慈を放っておく事など出来ずに、俺はすかさずポケットから袋を取り出した。


「…お前に渡したい物がある」
「え…?」
「これだ」


それは先程アレルヤにやったチョコレートの改良版、ティエリアの試作品2号である。
多分アレルヤにやった物よりは幾分かましな筈だ。そう祈る。
放心状態の沙慈の手を取って、掌に綺麗にラッピングされたチョコレートを乗せた。


「これ…刹那が?」


顔を上げた沙慈が驚いて俺の顔をまじまじと見る。
作ったのは俺ではないが、説明する気もないのでとりあえず頷いておく。
…ニール、頼むから射殺しそうな視線を沙慈や俺に送るな。今のあんたなら簡単に呪い殺せそうだから。


「えっと…もてない男への支給品だ(棒読み)」
「…台本見ながら、しかもその科白は余計に傷つくよ…」


別にルイスから貰えればいいんだけどね、と苦笑を浮かべた沙慈だが、しっかり物体Yを懐に収めている。ちゃっかりした奴だ。
言っていることとやっていることが違う気がするが、先程の死にそうな彼に比べたら笑顔(苦笑いだが)が戻っているから良しとした。


「…ありがとう、刹那」
「礼には及ばない」


胃薬を用意しておけ、と声を掛けて、今回のミッションは終了だ。
沙慈から離れると、物騒な笑顔を浮かべて仁王立ちをしているニールと目が合ってしまった。


『本当にちゃっかりしてるな、あの坊主』


前言撤回だ。射殺すのではなく、嬲り殺しそうだ。


番外編ダメンズ(ライル・ディランディ)


俺はもてない男の世話をする人数を2人と決めていたが、機嫌の悪いニールから少しでも逃れるために(拗ねても面倒だが)共に生贄になってくれそうな人物を探した。
いや、探さなくてもいた。隅の方で体育座りをしているニールの双子の弟、ライル・ディランディだ。
彼は普段は軽い男として通っているが、ニール曰く根はピュアらしい。

(ピュアって何だ?体育座りの29歳にも通じるのか)

話し掛けて欲しそうな雰囲気を醸し出しているライルに、俺は半分仕方なく半分自分のために声を掛けた。


「…ロックオン」
「刹那、か…お前はいいな。もてもてじゃねーか…」


それはチョコレートを作りに行く前にクルーの女性陣がくれると言った、義理チョコの話だろうか。
だがお前は彼女から貰えるだろう。イアンが絶賛していた、アニュー・リターナーから本命チョコが。
それを口にしたら、更に落ち込んでしまった。何故だ。


「…俺はさ、商社にいた頃…何十個って貰ってたんだよ!」
「……」
「なのにさ…今年は一個か…」


今の科白でライルはアニューだけでなく、世界中の男女を敵に回した。
側で聞いていた血の繋がった兄のニールも呆れている。
こんな男には、チョコレートよりも鉄拳をあげた方がいいだろう。少なくとも俺はそう思う。
止めるな、ニール。俺は世界の歪みを駆逐しなければならない。


「最低な男だな、ロックオン・ストラトス」
「ちょ、刹那さん?その拳しまってくれない?」
『せつなー!ライルに手を出すなー!俺と同じ顔に傷がついたら、俺が困る!』


ニールの顔ではないのだから、そんなことを言われても止める気はない。
ライルの胸倉を掴んで一発殴ろうとしたところ、ライルの瞳が見開かれた。
彼の瞳は俺を映していない。視線は隣にいて叫んでいるニールの方に向いていて…


「…兄さん?」
『え、ライル?俺が見えるのか?』


ライルの顔の前でひらひらと手を振るニールに、ライルは呆然としていた。
俺の方はすっかり殴る気が失せてしまったため、ライルの胸倉から手を離す。
すると、ライルはきょろきょろと辺りを見回した。何をしているのだろう。


「あれ…兄さんは…?」
「……!まさか、」


ライルの肩に手を触れると、彼はニールを探し出せたようでほっと息を吐く。
そして、彼はぎこちない笑顔を浮かべた。いつもとは違う、ニールの前だけの表情のような気がした。


「…今までで、最高のバレンタインだ」
『ライル?』
「きっと…今日だけなんだろ…?兄さん」


今日だけではなくて大分前からニールはいるが、勝手に結論付けたライルは立ち上がってニールの背中に左腕を回すと、ニールの肩に額をのせた。
普段から格好つけているので、情けない表情を兄にすら見られたくないのだろう。
ライルのそんな想いはニールにすぐに伝わったらしく、苦笑を浮かべながらライルの頭を撫でていた。

俺は双子の再会を邪魔したいとは思っていないが、明らかに邪魔な気がしていた。
だが俺が触れていないとライルにはニールが見えないらしく、暫く無言で背景と化した。


残念なニル刹編→


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