Tragedy = Comedy2 | ナノ



ComedyTragedy


彼女を始め、みんなと顔を合わせたのはつい最近だった。
比較的安全と思われる場所に座り、改めてみんなが自己紹介する中、隣にいた彼女が酷く脅えたような目をしていたのが気になった。
時計周りに自己紹介をし、自分の番が回ってきたので話しかけるタイミングを見失ったが。


「バッツ・クラウザーだ。よろしくな!」
「…ティナ・ブランフォードです」


自分とは対照的に控えめな声が、耳に入ってきた。
見た目通りおとなしい子なんだな、と思った。その時はそれだけだった。
その後は同じく明るい性格をしているジタンや色んな奴と喋って馬鹿騒ぎをしてリーダーに怒られたりしたが、彼女…ティナと話すことはほとんどなかった。
たまたまいつかの野宿の時に、初めてちゃんと話をした。
旅には色んな経験が必要だ。特に人間同士が触れ合う経験。色々な人と話したり、仲間になったり、別れたり…
だから、彼女とも話をしてみたいと思っていたので実行に移した。


「ティナ、水汲みに行こうぜー」
「ええ」
「おいこらバッツ!レディーに重労働させんな!」


自称フェミニストのジタンが憤慨したが、ティナに重い水を持たせる気はなくただ会話のきっかけになればいいと思った。


「なんだよ、ジタン。お前は調理だろ?そっちには素敵な美丈夫(セシル)がいるじゃん!」
「うるせー!お前だけ良い目にあうなんて赦さねえ!」


ジタンと言い合いをしていると、ティナが側でくすくすと笑った。
初めて見た笑顔に、ジタンも俺も吃驚してティナの方を見た。
その視線に気付いたティナが、頬を緩める。


「二人は仲良いね」
「ち、違うよティナちゃん!…けっ、誰がバッツとなんか…」
「おい!なんかってなんだよ!」
「ふふ…バッツ、怒られちゃうから行きましょう?」


ティナがバッツとジタンの後ろで剣を構えている我らがリーダーの姿を指して、言った。
二人はすぐにやるべきことをするためにせかせかと働き始める。
ジタンは同じく調理の準備をしているセシルのところへ行き、バッツは水を入れるための容器を3つ持ってティナと近くの水辺へと出掛けた。
ティナはバッツの一歩後ろを歩く。


「あの、バッツ」
「ん?」
「私も持つわ」
「んー、水入れたら1個持ってもらうからいいよ」
「…ありがとう」


振り返ると、ティナがぎこちなく笑っていた。
さっきの笑顔の方がいいなーとか思いつつ、ティナに背を向けて水を汲む。
そのまま水を運び、いつもと変わらずに野宿をする予定だった。

カオスの連中が来るまでは。


「カオスの奴らが来たぞ!」


そう遠くないところからティーダの叫び声が聞こえ、バッツとティナは顔を見合わせて武器を出し、仲間の元へと戻ろうと走った。


「どーこへ行くのかなー?」


戻ろうとした方向にピエロのような姿をした狂人、後ずさりした方向にエクスデスが現れる。
バッツとティナは背中合わせに武器を構えた。
バッツの武器は、以前ジタンと手合わせをしていた時の彼のものである。


「ケフカ…!」
「迎えにきてやったんだよー?僕ちんの大事なお友達♪」
「お友達…?」


ティナは疑問を抱いて、そちらに気を取られてしまう。
バッツはなんだかいやな予感がして、ティナがケフカと呼んだピエロのような男に斬りかかろうとした。
しかし、エクスデスに先回りされて止められる。


「ちっ、エクスデス!」
「お前の相手はこの私だ」
「引っ込んでろ!」


バッツは喚き、仕方なくエクスデスを相手に技を仕掛けた。
その間に、とケフカは笑い、ティナのすぐ側に寄る。


「一緒にぜーんぶぶっ壊そう?」
「いや。私は…!」
「やるんだよぉ!!」
「や…いやあ!」


ケフカが叫んだかと思うと、ティナの悲鳴が辺りに響いた。


「ティナ!」
「よそ見をしている暇はないぞ」


ティナの悲鳴に注意を逸らしたバッツに、エクスデスは無の力を解き放つ。
バッツは気付くのが遅く、避け損ねた。
そのまま地面に叩きつけられたバッツは、ものまねをした武器を手放し、咳を溢した。


「っぐ…、ごほっ」
「貴様はそこで這いつくばって見ているといい。あの女が、我らにつくのをな」
「な、なに…を…!」


突っ伏した顔を上げてティナの方を向くと、いつの間にか額につけられたあやつりの輪に苦しめられている彼女の姿が見えた。
頭を押さえるティナに、バッツは腹を押さえながら立ち上がる。
エクスデスはバッツに容赦なく杖を向けた。
フリオニールの使う盾とライトの使う剣を出し、バッツは何とか受け止める。


「…くそっ、ティナ!」
「あ…あああ…、私、…は…」
「ティナ!!」


バッツの悲痛な叫びも虚しく、ティナはがくんと首から落ち、俯いた状態からゆっくりと顔を上げた。
微笑んだ彼女の姿はもうなく、闇に囚われた瞳をした無表情の少女であった。
まるでケフカの言ったように、表情のない人形だった。
ケフカはティナの姿を一通り確認すると、声を上げて笑った。


「きゃーはっは!傑作だねぇ!」
「ケフカ…てめえ!!」
「僕のお人形さん、まずはそこの死に底ないを壊しちゃいな!」
「お前!!」
「……これで…!」


光の力が彼女の周りに集まる。

(この技は自分も使える…!)

ティナのものまねで自分の技にした、ホーリーだ。
バッツはエクスデスの攻撃を受けとめながら、魔法を避けるために動いた。
非常にまずい。彼女が操られているため、今三対一である。


「バッツ!」


その時、スコールとオニオンナイトがこちらに来た。


「燃え去れ!」


オニオンナイトはファイガを唱えてエクスデスに向かって放った。
エクスデスもバッツも離れ、二人のいたところにティナの放ったホーリーが当たる。


「お仲間の登場ですか。もう少しで楽になれたのにねぇ?」
「……」
「ケフカ、ここはもういいだろう。行くぞ」
「はいはいー」


ケフカとエクスデス、そしてティナはスコールが技をだす前に瞬間移動で消えてしまった。
ティナも同じように消えてしまったことに、一部しか見ていなかった二人は驚く。
バッツにどういうことか問いただしたかったが、とりあえず傷の手当てが先だった。
オニオンナイトがバッツの身体にポーションを垂らした。
少し痛みの引いたバッツは、悔しそうな表情を浮かべて地面に拳をぶつけた。


「くそっ!!」
「バッツ…?ティナは…?」


オニオンナイトが信じられないとばかりに言葉を紡ぐが、バッツは応えなかった。
スコールはティナがカオスに連れ去られたという事実を、目の前で起きたために信じるしかなかった。




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