壊れる4 | ナノ




銃声を聞いて驚いた3人の内、扉側にいた男が仲間と連絡を取るために端末を取り出す。
細長い男は冷汗を流しながらも、ある結論に達したらしく気持ちの悪い笑みを浮かべていた。


「お前のお迎えさんか?撃たれちまったんじゃねーか?」


その言葉を聞いて、刹那はふとライルの姿を思い浮かべる。
ここまで来たのだろうか…端末は壊したので、仮に来たとしてもどうやってか分からない。
しかし、ライルがそう簡単にやられる筈はない。
刹那は確信していたからこそ、その言葉に反応を示さなかった。
襲っていた男は連絡の取れない部下と刹那の様子に舌打ちして手を離した。


「おい、デニスと連絡は!?」


男は仲間に対して苛立ち、こちらを見ていない。
今がチャンスだと思い、刹那は身体を丸めて靴の中からナイフを取り出し、縛ってあった手首の縄を切った。
力が上手く入らないため些か時間がかかったが、頭に血が上った男たちはこちらを気にする様子はない。


「取れねーです!何で…俺、様子を見てきます!」
「待て、開けるな!」


扉近くにいた男はリーダーの男の制止も聞かず、ドアを開けた。
その時に頭を撃たれて後ろから倒れ込む。
男たちが驚いて隙を見せたところ、刹那も行動に移した。
立ち上がって懐に回り込んだところリーダーの男の心臓にナイフを突き刺し、腰に着けていた銃を抜き取って絶命させる。
リーダーの男が倒れたところで、後は細長い男だけになった。
おろおろする男に銃を向けようとするが、頭痛に加え眩暈がして刹那はふらつき膝をつく。
その様子を見た男が自分の懐から銃を取り出し、刹那に向けた瞬間、部屋に侵入した何者かに撃たれた。
どさりと男が倒れ、命の危機を救われる。
気配の消し方が、常に手合わせする男だと分かり、刹那は無意識に安堵した。


「ごほっ…ロック…オン…?」
「ったく、説教は後だ。立て…そうにないな。腕貸せ」


早足で寄ってきた男に、刹那はふっと笑みを零す。
刹那の右腕を自分の肩にかけてライルは部屋から出た。







刹那の状態は暗がりだったためよく分からなかった。
しかし聴覚に頼ると、雑音の混じった咳が酷く、濡れた顔や服から拷問のようなものを受けていたと推測した。

(もっと早く行けば…)

後悔しても、その時間は取り戻せない。
刹那を後部座席に寝かせてタオルを渡し、ライルは運転席に座った。
今からトレミーに戻ることは出来ない。
トレミーは他地域に潜伏しており、明日以降でないとイギリスに来ない。
ライルは舌打ちすると倉庫から適度に離れた田舎のホテルに向かうことにした。
些か派手にやったので目立たないところに身を隠す。
逃げやすい場所を選ぶ際に、そこが最適だとミッション前に考えていたところだった。
タオルで顔と身体を拭く刹那の姿を見遣り、ライルは車を発進させた。


「ごほっ、げほ……」
「すぐ着くからな」


横たわり、返事も難しい状態の刹那に言った。
刹那はライルの姿をミラーで確認して荒い息を吐く。


暫くしたところで、刹那の身体に変化が起きた。
ぞくりと背中から這い上がる欲望に、刹那はタオルを噛み締めて耐えるしか出来なかった。


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