壊れる3 | ナノ




普通の人間ならば、組織の目的を吐いて命乞いをするところかもしれない。
しかし刹那はKPSA、更にCBの教育を叩き込まれていたため、そんなことはなかった。


「げほっごほっ…は、…」
「兄ちゃんなかなか粘るな」


桶の中に顔をつっこまれて、顔や前髪は水で濡れている。
滴り落ちた水で、服も濡れていた。
だんだんと長く水に漬けられるので、息が苦しくて咳も止まらない。
喉も痛くて…気分も悪い。

(俺を生かしておいて、こいつらにメリットはあるのか?)

得体の知れない男を、一種の拷問によって目的を吐かせるなど時間も労力もかかる。
刹那は金色に光る目を2人から外さなかった。
すると眉を上げた3人の中のリーダー的存在が刹那の顎を持ち上げてこちらを見る。
まるで捕食者の目だ。
厭な予感がする。


「デニスが来る前にこいつ犯りたくなった。あれ持ってこい」
「こいつボスの好みでしたっけ?」
「強気そうなところがな」
「俺も後で混ぜてくださいよ」


扉の方にいた男が冗談交じりに言い、ははは、と笑う。
反吐が出る。
頭がぼうっとしようが、自分の立場とこれからどうなるのか予想はつく。
どこの世界にも下種はいるものだ。
以前は身体も小さかったため、そういう対象に見られていた時もある。
ほとんどは刹那自身が返り討ちにした。
まさか、大人になってまでとは思わなかったが。

その内下っ端が帰ってきて、リーダーの男に箱を渡す。


「ボス、すっげーいいのありましたぜ」


細長い男から渡された箱を見て、男は下卑た笑い声を漏らす。


「…お前もたまには役に立つな。さて、兄ちゃんよ」


ぐいっと前髪を掴まれ、刹那は呻いた。
刹那の様子に満足したのか、男は箱を破り薬を口に含んでその辺りに置いてあった水をと一緒にする。
そのまま刹那の顔に近づけて、水と一緒に刹那の口の中に流し込んだ。
抵抗し舌で押し戻すが、結局薬を呑み込んでしまう。


「っは、…げほっ…何を、呑ませた…?」
「媚薬だよ、ドラッグは俺たちが手に入れるには高価なんでね。てっとり早く気持ちよくなろうぜ」


そっちが一方的にだろう…と、刹那は心の中で呟いた。
やばいのかもしれない。
ドラッグならばCBに入る前と後に馴らされた。しかし媚薬の耐性はない。

(薬が回るのに早くて10分ぐらいか…?それまでに何とか…)

しかし、刹那の身体の上に男が乗りあがってきて今にも臨戦態勢である。
隣で細長い男もにやにやしているし、扉の方の男も鼻息を荒くして興奮状態である。
最悪だ。
濡れたシャツをたくしあげられ、気持ち悪い手つきで肌をなぞる男に吐き気がした。
いきなり突っ込まれないだけましかもしれないが、厭なものは厭である。
しかもこれが終われば売られるだけだ。その前になんとかしたい。
男が腫れていない方の瞳を舐めて、刹那の姿を見て舌舐めずりをする。

気持ち悪い。


「さあ、せいぜい可愛い声で啼いてくれよ」
「っく…」


その時、遠くの方で銃声が聞こえた。








ライルは車を走らせてある港近くの倉庫前に着いた。
ヴェーダによると、刹那の位置はここである。
ライルは一刻も早く刹那の安否を確かめたかったが、ここに奴らの仲間が来るらしき情報をトレミーから聞かされた。

(まずそいつらをぶっつぶさねーと…刹那、無事でいろよ)

ライルは腰に提げた二丁の銃とナイフに手をやり、強硬派の仲間が来るのを迎えうつために身を隠した。
ほんの10分ぐらいだったが、ライルには長く感じられた。
黒のベンツに乗った男3人が、無造作に車を停めて中から出てくる。
死角だらけの港の倉庫なのに、危機感はまるでない。

(さっさと終わらせてもらう)

ライルは狙いを定めて男たちの頭をぶち抜いた。
驚きと恐怖する暇を与えず、3人全て片づける。
ふっと息を吐き、倉庫内に侵入した。


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