分かり合う3 | ナノ




「安っぽいホテルなんだね」
「絞め殺されたいのかよ」


部屋に入りビリーのお金持ち的な発言に苛々するライルを刹那は一瞥し、それから腰に纏わりつく(抵抗しても無駄だと分かった)グラハムごと引き摺り、ソファに座り込んだ。
ライルがコーヒーをいれる間、グラハムを離してビリーの座るソファに身体ごと放る。
コーヒーを4人分注いだライルが刹那の隣に座り、早速話を切り出すよう促した。


「で?」
「そうだね、まずはこれを」


ビリーは黒のスーツケースの中から取り出したデータを前にいるライルに渡す。
そのデータを持っていたパソコンに入れて刹那にも見せながら、素早く内容を読み取った。
難しい単語もあったが、図からしてこれは…


「ツインドライヴの可能性…?」
「そう。オーライザーを使った時に起こる量子化や、人々の思念の伝達等摩訶不思議な現象を起こしていたから、気になってね。クジョウに頼まれなくても調べるつもりだったけど、今の時点で出た推論を書き出しておいた」


ライルはアニューと最期に会話をしたと思われる、あの時を思い出した。
すぐにそれを振り払い、何事もなかったかのように振舞う。


「…あれね。心の中読まれてる感じだったな」
「私も少年と全裸で会話したのがそのツインドライヴのおかげというわけか…」
「誤解を受ける言い方はやめろ」


刹那は厭そうに眉を寄せた。
これ以上話を遮られても困るので、ライルは出そうになった言葉を呑み込んだ。
その代わりにビリーに問い掛ける。


「これをあの人に渡しておけばいいんだな?」
「クジョウをあの人とかそういう言い方やめてくれるかな?」


(じゃあ何て呼べばいいんだ)

ビリーがスメラギに惚れているのは本人含めてトレミーの皆が知っている。
だから気を利かせて呼び捨てではなく他人行儀にしてやったというのに、この男は…とライルは更に苛々を募らせた。
刹那にも伝わったのか、ライルに視線を向けて目で押さえろ、と言われた気がした。本当のところはよく分からないが。
分かってる、と投げやりに頷き、再びビリーに向き合う。


「分かった分かった。それで?これで終わりか?」
「いや…刹那・F・セイエイ君だっけ?」
「ああ…」


突然刹那は呼ばれ、戸惑いながらも返事を返す。
ビリーはにこりともせずに真剣な表情を浮かべて刹那が隠しておきたかった事実を述べた。


「僕は医療は専門外なんだけど、人類初のイノベイターの身体はどうだい?」
「…!!」
「…イノベイター?」


刹那の驚愕に引きずられたように、ライルは刹那の方を見た。
刹那はライルに視線を合わせず、ビリーを睨みつける。


「何故お前が…」
「リボンズ・アルマークが言っていたから、気になってね」
「……」
「刹那…?」


ライルの呟きに刹那は何も答えない。
2人の様子を見て、ビリーは少し驚いたようだった。


「隣の彼は知らなかったのか…すまない」


ビリーは恐らく「純粋種」の事をライルが知っていると思い発した言葉だった。
しかし、刹那はティエリア以外にイノベイターの話はしていない。
刹那は苦々しい気持ちを抱えた。
ライルの方は少し冷静になり、戸惑いながらも刹那にもう一度問いかけた。


「刹那、それはどういう…」
「…それは…」


刹那はライルを見たがすぐに視線を逸らす。
言葉も喉に詰まり、上手く出てこない。
ライルに返事を出来ない分、刹那はビリーへの返事を先にした。


「……心配することは何もない。至って普通だ」
「おいっ!」


ライルが口を挟む前に刹那は部屋から出て行ってしまった。
すぐに、その後を無言でグラハムが追う。
本当はライルも追いかけたかったが、足が動かなかった。

(刹那が…イノベイター?)

そう言われてみれば、おかしなことが多々あった。
アニューの居場所が分かったあの時から、戦闘の時の不可思議な行動、ティエリアと定期的に連絡を取っていると言った方法。

(イノベイターは、ヴェーダとリンク出来て…脳量子波で特定の相手と会話出来て…?イノベイターって何だ?)

考え込んでいるライルに、残されたビリーが仕方なく話しかける。


「…僕は、君に話した方がいいのかな?」


ビリーが困った表情を浮かべ、こちらの様子を窺っている。
ライルはビリーを一瞥し、大きな溜息を吐いた。


「…刹那のことは本人に訊く」
「そう」
「だが、訊いておきたいことはある」


ライルは嘲笑を浮かべた。

(苛立って仕方ねえ。俺は、こいつとは気が合わねえな)


「もう一度訊く。あんたは何を考えている?」
「…クジョウに恩を返したいだけ…後は、彼に邪魔された時の意趣返しかな?」
「はっ、ねちっこい男は嫌われるぜ?」


厭味に厭味を重ねると、ビリーはむっとして押し黙った。


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