小説 | ナノ


 小春日和

オレ、広末そら。


こう見えても警察官。といっても、警護課勤務のSP。エスピーって知ってる?ちょっと前にドラマでやってたっしょ?『要人の動く盾』ってやつ。


だいたい大物政治家とか、あ、メインは総理の警護ね。総理って、日本の総理大臣だよ?すごくない?いや、その、オレがすごいってか、オレが所属してる班…警視庁警備部警護課第一係 桂木班ってんだけど、長ったらしい名前だけどカッコ良くない?ま、そこで一緒に仕事してるメンバーがすごくてさ。


まずオレの上司にあたる桂木さん。総理に『日本一のSP』って言われるぐらいすごい人で、オレなんかからすれば神みたい、って、大げさじゃなくて、うまく言えないけど、とにかくマジですごい人。あのひとを超すSPなんていないんじゃないの?


んで、昴さん。ハーバード大卒の超エリート。ハーバードがどれくらいすごいのかわかんないんだけどね。この人は、仕事以外もパーフェクトってゆーの?ルックスはずば抜けていいし、料理もめちゃくちゃ上手い。女の扱いなんかも慣れてて、んー、オレもそこは負けてないけどね。女性の大臣なんて、昴さんが警護の時はオレらの時とぜんっぜん態度違ったりするんだよ!


次は海司。オレの後輩。コイツは見た目めっちゃモテそうなんだけど、なんでも子どもの頃に好きだった幼なじみが忘れられないとかで、ソッチ関係は全然ダメ。けど、柔道の有段者で、オリンピックの日本代表にも選ばれた事があるくらい、これまたすげー奴。トレーニングばっかしてる筋肉バカだけどね。


最後、瑞貴。驚くかもだけど、元アイドルの、あの藤崎瑞貴。突然芸能界引退して、なんでか今は同じ班でSPやってる。コイツがまた不思議ちゃんでさー。動物と会話できるとか、オバケが見えるとか、おかしな事ばっか言ってやんの。だけどまあ、元国民的アイドルだけあって、ルックスはオレに負けず劣らずって感じ?不思議能力発揮して、すげー難しい警護もさらっとやってのけるよ。




ってな感じで、そんな桂木班でオレは日々活躍してるって訳なんだけど。まー大臣達の警護なんて、いくら自分で選んだ道とはいえウザい訳ですよ。オレ達の事、人間なんて思っちゃいないしね、あのひと達。


あー。今日早番だし、誰かとデートでもしよっかな。とりあえず休憩時間に何人か適当にメールしとこ。








身体張ってるから仕事は大変っちゃ大変だけど、給料もそこそこ貰ってるしー。女の子にも不自由してないし−。そんな毎日を過ごしてたオレに、ちょっとした神様からのプレゼント。




「そら。明日からの警護対象者だ。若い女性だからといって、くれぐれも気を抜いたり失礼の無いようにな」




さっき緊急ミーティングで告げられた新しいマルタイ。あ、マルタイって警護対象者ね。



現総理大臣の娘だなんて。


そもそも現総理は一度も結婚していない。班長の説明によると、総理がまだ学生時代にできた娘らしいんだけど、事情があってその子の母ちゃんとは結婚できなかったらしい。

今まで独身を貫いてきたのは、そんな若い頃の辛い思い出があるからなのかな、なんて、1歳の時に母親が若いオトコ作ってほってかれたオレからすれば茶番劇なんだけど。



ミーティングで写真を見ただけの総理の娘。大学生らしいけど、今どき珍しいぐらいの純情そうで大人しそうな可愛い子。特に目立たない、たくさんいるオレの彼女もどき達みたいな派手さは無く、だけど強い意思を持ったまなざしは総理によく似てるななんて、それぐらいにしか思ってなかったあくまでマルタイの彼女。













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