To most most my blue


「・・・どうしていいのか、分らないの。本当は」




何を書いたら良いのか、そして

自分は本当にこのまま幸せになって良いのか、も―――



不意に湧き上がった心の閊えが、確かな輪郭を持って現れる
もしかしたらこんな気持ちを、人は“マリッヂブルー”なんて呼ぶのかも知れない


小さな空笑いを浮かべれば、抱きしめる力が少しだけ強くなった




「郁美は、今、幸せ?」



突然の問い掛け
だけど間違えようも無いその問い掛けに、大きくひとつ、頷いた


「僕も。・・・だけどね、言葉だけじゃダメなんだ」



「・・・え?」

振り返って真意を知ろうとしたけれど、強く抱きしめる腕がそれを許さない

背中いっぱいのぬくもりと、速くなる二つの鼓動を聞きながら私は、次の言葉を待った



「言葉にしなくても、何かのカタチにならなくても、伝わる想いってあるでしょ?」

「・・・伝わる、想い・・・」




「それを、僕たちは作っていくんだ。・・・幸せになるんだよ。これから二人で」



いつもより強く通る声が
いつもより凛とした響きが

鼓膜を通り越し、真っ直ぐに胸の奥に沁みて、堪えきれなくなった想いが溢れ出す



私の幸せな姿を誰よりも願っていたのは、他でもないお母さんだったはずで

幸せになるな、なんてお母さんが言うはずが、ない




音も無く頬を離れた雫が文字を濡らして、真っ白な紙面には青い色を映した雲が浮かんだ



幾度となく見上げてきた、青く高い空


そこに浮かぶ白い雲のそのまた向こうから、見ていてくれているだろうか

今の、私の姿を




動けなくなってしまった私の手からそっとペンを取り上げて、瑞貴が何かを書き足していく




便箋に広がる雲の上に描かれたのは

大きく翼を広げて飛ぶ、青い鳥――――




「大丈夫。きっと伝わってる。きっと見ていてくれる。どんなに遠くからでも、ね」







幸せの青い鳥は、どこか遠い所にいると思っていた

それは決して簡単に現れるものではなくて、懸命に探した者だけが見つけられるものなのだと、そう思っていた

けれど、青い鳥は思いもかけない日常に潜んでいて、ある時突然に目の前に現れたりするんだろう

こんな風に







涙で滲んだ雲の合間を飛ぶ、青い鳥の下に私は記した

カタチにならないたくさんの想いを込めて





"幸せになります" と――――





END




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