To most most my blue


catered by 美澄




青い鳥を探していた

幸せをもたらしてくれるという青い鳥を


ずっとずっと


探していた




To most most my blue




強い風が部屋に吹き込んで、机に広げた便箋を吹き飛ばした


開け放していた窓を閉めて窓辺から部屋の中を見渡すと、殺風景だった景色の中に自分の物が増えて、何だかどうしようもなく照れ臭い気持ちになる

予想もしていなかった急な鼓動を一人笑いで誤魔化して、もう一度、宛名だけ書かれた便箋と向き合った



なんて、書けばいいんだろう―――



この日の為に買い揃えた白い便箋もコバルトブルーのインクも、どうにも余所行きの雰囲気を醸し出していて、いまひとつ自分らしい言葉を作れずにいる

何枚か書いた手紙を読み返して、自分らしくないと思いつつも書き直そうしたところで何か新しい言葉が見つかる当ても無くて


こんな事になるのなら、少しでも多く手紙というものを書いておくんだった
そうすればきっと、こんなにもどかしい気持ちを抱かずに済んだのかもしれない


そしてもう一つ

得体の知れない何か別の気持ちが、喉の奥に閊えてそれが更に、進もうとする筆の邪魔をしているように思えた



いつまで経っても進まない筆先に小さな溜息を零して、指先のペンを弄んでいたら、背後から声を掛けられた



「何してるの?郁美」



いつ帰ってきたのだろう
そこにはスーツ姿のままの瑞貴が立っていて、にこやかに笑いながらこっちを見ていた



「びっくりした・・・!どうしたの?今日は早いんだね」

「だって明日は僕たちにとって、とても大切な日だから」


「そう、だよね・・・」




大切な日、大切な人

想えば想うほどに思いは膨らみ、それをカタチにしようとすると上手くいかない

言いたい事も、伝えたい事も、たくさんあるはずなのに


もやもやする気持ちを飲み込めば代わりに、下を向いた口元から短い溜息が漏れた




「・・・手紙?お母さん宛・・・?」



ふわり、と零れた溜息を掬い上げるように、後ろから抱きしめられて胸が詰まる



そうだ、こんな風に

いつも私を支えてくれる優しさの事を

いつも私を包んでくれるぬくもりの事を

そして、それらに出逢えた今までのことを、上手く言葉にして伝えられれば良いのに





頭の中の引き出しは、未だ閉まったままで


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