地球儀の距離 catered by Q野くらら 時差、9時間。 距離、9564キロ。 所要時間、直行便で12時間。 それがゼロになるのは、1年後。 でも、海司だから…全部6文字。 「こんにちは…」 「郁美ちゃん!いらっしゃい♪」 海司がイギリスに発ってしばらくしたある日。 スケジュールの確認の為にSPルームにお邪魔した私は、ギョッとした。 海司のデスクの上に、何か、置いてある… 「えと、これ…地球儀…ですよね?」 一瞬、花瓶かと思った…びっくりした。 「ただの地球儀じゃないよ、郁美ちゃん」 じゃーん!と、そらさんは私の目の前に地球儀を突き出し、振って見せた。 ジャラジャラと音がする。 地球儀のてっぺんには、細長い穴が空いている。 「あ、貯金箱ですか?」 「そ!可愛いでしょ?」 「はい。でも、なんで海司の席に?」 「あー…」 とそらさん、昴さん、瑞貴さんが伏し目がちに目配せしあった。 「え…?私、何か残念なこと言いました…?」 「…まあいい。郁美はルールを知らなかったんだから、今は罰金対象外だ」 「ば、罰金!?」 昴さんの冷静なセリフに目を向くと、 「そ、海司って1回言ったら500円」 そらさんがうんざりしたように人差し指を立てた。 「あ、そらさん罰金ですよ」 目ざとく、瑞貴さんが指摘する。 「えー!?だって今のは郁美ちゃんに説明するために…!」 「対象外だったのは郁美だけだ」 「ちぇ…あーちょっと、千円札しかないんだけど」 「今朝も1回言ったの、ツケになってますよ」 「瑞貴、お前よく覚えてんな…」 そらさんは観念して、貯金箱に折り畳んだ千円札を押し込んだ。 「どうして、か…そんなルール作ったんですか?」 あ、危なかった… 「んー、まあ、なんていうか…」 そらさんが口ごもって、昴さんを見る。 「暑い時に暑いと言ったら、余計暑くなるだろう?その原理だ」 「はぁ…つまり…?」 その時、ガチャ!とドアが開いて、桂木さんが現れた。 「ん…?郁美さん、いらしてたんですか?」 「はい。お疲れ様です」 「オレそろそろ、警護に行かないと」 「オレ、ちょっと公安に顔出してきます」 「僕、キャサリンにエサを…」 「え?え?」 みんな、ゾロゾロと出て行ってしまい、部屋には、私と桂木さんだけになってしまった。 |