プレゼント選び


catered by 石神伊織



 郁美は、悩んでいた。

 偶然入ったアンティーク・ショップで、黒い万年筆とノック式のボールペン、キャップ式のボールペンを見つけたのだ。
 全て同じメーカーの製品である重厚なイメージのそれらは、それぞれがかなりいい値段の物で。
 ウィンドウの棚に載せられた3本のペンを前にさらに困った顔になる。

「郁美? どうした?」
「え? ……ひゃっ!?」

 クスクス笑いながら彼女の顔を覗いていたのは、桂木だった。

「あ、桂木さん」
「どうしたんだ?」
「桂木さんこそ、なぜここに?」
「ん? 郁美を見かけたから? 俺のことよりお前だよ。何してんだ?」
「バースデー・プレゼントに悩んでるんです」
「……バースデー・プレゼント?」
「はい。兄の」
「兄貴?」
「8月16日が誕生日だったんですけど、用事があってできなかったので」
「……なるほどな」
「桂木さんなら、何が欲しいですか?」

 言われて桂木がボールペンをいじる。

「……ボールペン、かな。仕事柄万年筆使う機会があるかどうかも怪しいしな」
「そうですね。参考にします」
「ああ」
「買っていくんだろ? 外で待ってる」

 ボールペンを置いて店を出る桂木。
 数分後レジに柄の違う2つの包みを受け取る郁美の姿があった。



 桂木が、2ヶ月後の誕生日にそのひとつを受け取る事になるのは、また別のお話。



──fin──



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