未来へ


そらさんが手に取ったのは、



「ペンダント…?」

「です、ね」



多分、シルバー製のそれは、以前は輝いていたのだろう。

しかし今はその名残はなく銀色はくすんでいて、古いものだということを無言で語っていた。



「あ、ロケットになってる」

「ロケット?なにそれ?」

「ほら、ここが開くようになってるんですよ。」

「ホントだ。ちっさいけど蝶番、付いてる」



こーゆーのロケットって言うんだー、と感心しているそらさんに、私は何の気なしに訊ねた。



「開けてみてもいいですか?」

「え?あ、うん…」



そらさんからそれを受け取って。

古いから開かないかな、とも思ったけれど、それはすんなり開いて。



「わ!可愛い!」



中には、赤ちゃんの古い写真が…



「これ、そらさん?」

「多分、ね」

「そらさん、赤ちゃんの頃から可愛いかったんですねー。目とか、今の面影あるー」

「こーら、可愛い可愛い言わないの!」

「え?赤ちゃんも可愛いって言っちゃダメなんですか?」



頬が緩むのを止められないまま、写真の笑顔の赤ちゃんのそらさんから現在のそらさんへと視線を戻すと。



そらさんは、ロケットを見て寂しそうに笑っていた。



あの、デパートで見たときのように…



「母さんの、かな?きっと新しいオトコ作って出て行くときに、要らなくなったから置いてったんだね」



“今更、母さんの話題でで傷ついたりしないから”

あの時そらさんは、そう言っていたっけ。



それは裏を返せば、今まで散々傷付いてきた、ってことで…。



「それで全部みたいだねー」



ヤケに明るく言いながら荷物を片付け始めたそらさんを見て、

私はさっきの自分の軽率さを悔やんだ。



これがそらさんのお母さんのものであることに、もっと早く気付くべきだったんだ。



ぱちん、とロケットを閉じ、口も真一文字に結ぶ。



手の中の、ロケットの表面にデザインされた星を人差し指で辿って、

そっと、裏返した。










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