未来へ


そらさんはごめんね、と私の頭の下から腕を抜いて、

ベッドから抜け出して、床に落ちていた服を着ながら玄関へと向かう。

私はそんなそらさんの背中が見えなくなってから、

ベッドを降りた。



寝室を出て白いソファに座ると、



「服、着ちゃったの?残念〜」



荷物を小脇に抱えたそらさんが戻ってきて。



「もっといちゃいちゃしたかったのにー」



私の隣に腰掛けて、空いている方の腕で私の肩を抱いて。

ちゅ、とこめかみにキスをした。





「宅急便、ですか?」

「うん。園長からみたい」



そらさんはこと、と小包をテーブルの上に置く。



「大掃除してたら、出てきたんだって」



そらさんは同封されていた手紙を読んで、荷物の説明をしてくれて。



「また郁美ちゃんと遊びにおいで、だって」



にこっと笑って、静かに便箋を封筒にしまう。



「また行きたいです、そらさんの地元」

「ホント?」

「はい。施設のみなさんにも会いたいですし、海も見たいし、星も見たいです」

「そっか。じゃ、今度のオレの休みに行こっか?」

「はい!」



そらさんからのお誘いに嬉しくなって二つ返事で頷くと。

そらさんは目尻を下げて微笑んだ。



「郁美ちゃんの、その笑顔。可愛いなぁ…」



寝顔も可愛いけど、笑顔はもっと可愛い、と。

そらさんはまた、私の髪を撫でる。



「そらさん…」



そして赤くなった私の頬に、そっと口付けた。





「なーにが入っているのかな?」



二人で箱を覗き込む。



一番上には、少し錆びたお菓子の缶。

蓋には大きく、“そらのたからもの”と書いてあって。



「うわ、懐かし〜」



そらさんは缶の中を、目を細めて見つめた。



「集めてたんだよなぁ」



そう思い出したように言うそらさんの口調は、どこか幼くてまるで子どものようで。

古びた缶も、そこに力いっぱい書かれたお世辞にも上手とは言えない文字も、その簡素すぎる中身も、

私の心をじんわりとあったかくして。



またそらさんのことをひとつ知ることができて、

凄く、嬉しかった。



缶に蓋をして再び箱を見ると、

その中には更に小さな箱が入っていて。



「万年筆、ですね」

「ここにあったんだ…」


それを大事そうにそうっと手にして、少し掲げて穏やかな眼差しで見つめるそらさん。



「引っ越す時に無くしちゃったと思ってたんだけど、忘れてたんだ…」



私に言うというよりも、自分と対話するようにそう呟くそらさんを、

私は黙って見つめてた。



「親父の、なんだ、コレ」

「お父さんの?」



そらさんが小さい頃に亡くなってしまった、そらさんのお父さん。

そらさんはお父さんが好きだったって、言ってたね。



「うん。この万年筆、ね…」



そらさんはこの小さい万年筆にたくさん詰まっているお父さんとの思い出を話してくれて。



「見つかって、良かった」



これから増えることはないけれど、色褪せることのない大切なお父さんの思い出と品物を、

丁寧な手つきで、そっとそっと箱にしまった。





箱の底には、もう一つ…











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