Banana-Muffin
catered by 成瀬
『ちくしょー、覚えてろよー!』
いわゆる捨て台詞ってやつを吐いて、半ズボンのクソガキたちは走って逃げていった。
その様子を見ながら、少女はふぅーっと息を吐き、手に付いた砂を払うと、『もう大丈夫だよ』と、足元にうずくまっていた首輪のついたネコを抱き上げた。
迷いネコにちょっかいを出していたクソガキたちに、どんな巧みな弁舌で煙に巻いたのかわからないが、最後に何か手を出したんだろう。
なに、あいつ…
すげえんだけど。
Banana-Muffin*
あいつは俺のテリトリーである、つまりは近所の公園でひとりでよく遊んでいた。
次の日も、その次の日も。
『おい、』
『えっ?』
ネコ事件…、って俺が勝手にそう呼んでるだけだけど、あの事件から一週間たったある日。
砂場で城みたいなのを作っている甘子に、気がつくと声をかけていた。
『キャッチボールやんねえ?』
『キャッチボール?』
『そ。』
女には無理だったかな?
『うん!』
太陽のように明るくなったその笑顔に、一瞬で見とれていた。
『あわ、わ、わ、わ!』
『ほら、ちゃんとボール見ろよ。』
お互い名前も知らないのに、日が暮れるまでずっとキャッチボールをしていた。
母ちゃんが働いてて、帰りが遅いんだとか。身体が弱くて病院に通ってる、とか。
あいつ人参苦手だ、とか。
公園からの帰り道、
『海司』
『ん?』
『また遊ぼうね!』
『ああ、気が向いたらな』
『ふふっ』
なんだよ、可愛いじゃねえか。
いつも笑ってればいいのに。
.