小説 | ナノ





Perrier


catered by ふわり


プシッ……

ゴクッ…ゴクッ…


(ふぅ……)


俺はペリエを一口飲み、小さく息を吐く。

(甘子…)

そして、ベッドの縁に腰を下ろし、甘子の髪を撫でた。


「んっ……」

甘子は小さく肩を動かし、閉じられた瞼がゆっくりと開けられていく。

「誠二…さん…」
「悪い…起こしたか…?」
「…ううん…なんか急に隣が寒いな、って思ったのと、髪の毛に何か触れた気がして…」
「ああ………すまない…」

俺は、甘子の肩をそっと抱きしめた。

「あったかいです。」

甘子は、ギュッと俺のTシャツを掴んだ。


「…誠二さんはいつも…ペリエを飲んでいるんですね。」
「ん?ああ。」
「ペリエって…美味しいんですか?」
「ただの炭酸水だからな。はっきりと旨いとは言えないが、俺の朝の目覚めにはちょうどいい。」
「…一口くれますか?」
「別に構わないが。あ…そうだ…」

俺はビンを渡そうとした手を止めた。

「?」

甘子は不思議そうな顔をしている。

俺はペリエを口に含むと、

「んっ……!」


甘子の口内に、ペリエを流し込んだ。


こく…こく…

ビックリしつつも、喉を鳴らしながら、飲み込む甘子。


そっと唇を離す。

「………」

甘子は顔を赤らめて、ぼうっとしていた。


甘子は、いわば俺が初めての男で、男を一切知らなかった。

「まだ、キスに慣れないのか?」
「っだって……こんなの、したことない……から……」
「そうだったな。で、ペリエはどうだった?」
「んと…味のない炭酸水ですね…」
「ペリエには、味の付いた物もあるから、それを飲んでみるか?これよりはまだ飲めるはずだ。」
「そうなんですか?」
「ああ。あとで買いに行くか。ちょうどペリエがなくなるから買いに行こうと思っていたからな。」
「はい!」





そのあと私たちは、郊外のショッピングモールに出かけた。

休日だけあって、店内は客でごった返していた。





「相変わらず混んでいるな。」
「そうですね…。早く買い物して帰りましょう。」
「せっかく来たんだから欲しいものがあったら買っていいぞ。」
「でも……時間掛かっちゃうだろうし…またにします。」

俺が人混みが苦手なことを知っている甘子は、買い物に来ても、いつも遠慮している。

「遠慮するな。お前の買い物には付き合いたいんだ。」
「え…」
「一緒に見て、買って、それを二人で眺めて……そういう小さな幸せを俺は感じたい…。」

柄にもない、と思ったが、素直な気持ちだった。

「……下着も、ですか?」
「えっ!あ、いや、下着はさすがに…まずいだろう?」

何を言うかと思ったら…

時々甘子の天然さには驚かされる。
いや、天然というか、小悪魔か…?

「お店で見なくても、ネットなら一緒に見ても大丈夫ですよね?」

甘子はニッコリと笑った。

「あ、ああ…お前さえ良ければ、だがな。」
「じゃあ、買い物して帰りましょう。」
「本当にいいのか?」
「私が今ここで買うのは、ペリエと食材ですけど……本当に欲しいものは下着だから…誠二さんにも見て欲しいです…」

本当に、コイツは…

「わかった。じゃあ、そうしよう。」
「はい……きゃっ!!」

俺は、甘子の手をグッと引き寄せて、恋人繋ぎする。

「…じっくりと見させてもらうから。」
「……はい/////」











それから、俺の冷蔵庫には、俺専用と甘子専用のペリエがそれぞれ置かれた。


二人で見たもの、買ったものが少しずつ増えていく。

想い出と共に、満たされていく俺の心。

味のないペリエに、ほんの少し甘子と言う、甘さが加わった、そんな気がした−−−



end



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