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Cappuccino


 

ぶっきらぼうに告げる後藤さんに、せめてきちんと謝らなければ…
私は思い切って顔を上げた


「!」


席に座った後藤さんは、カプチーノのカップを大きく傾けてメッセージごと飲んでいた


「座れよ…甘子」


口許の泡を手の甲で拭き取りながら、後藤さんは再度私を促す
私は機械仕掛けのようにぎこちなく、ゆっくりとケーキの前に座った


「…甘子」

「…」


後藤さんが私に視線を合わせる


「お前な…」

「…」


耳を塞ぎたくなるような言葉に私はまた俯いた
だけど…


「紅茶が冷えるぞ。ケーキを喰え」


後藤さんの声は優しく、想像しなかった言葉が降ってきた


「ごめんなさい…」

「何故甘子が謝る?」


ゆっくりと顔を上げると、後藤さんが微笑んで私を見ていた


「俺の方こそ、すまない」

「そ、そんなっ」



後藤さんは小さく呟くと、カプチーノをまた手にした
私は慌てて後藤さんの謝罪を遮った


「俺は、何とも思ってない女を誘ったりしない…」


後藤さんは私を見つめる


「だが…甘子はまだ、妹みたいな存在なんだ」

 
軽く頭を下げる後藤さんに、私は無言で頷いた
後藤さんは三度カップを持ち上げると、カプチーノを喉に流し込む


「何時もより、甘い。でも」


こくりと一口飲んで後藤さんはカップを置く


「旨いな、このカプチーノ」


呟く後藤さんの頬は少し赤くて
私は目に滲んだ涙を隠すため、慌ててケーキを頬張るのだった





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