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hot cake!


こんなにも、スイーツバイキングが似合わない人って珍しいかもしれない。いや、こんなにも浮いてしまっていても大丈夫なものなのだろうか?

「…甘子さん、そんなにこちらを凝視しないでいただけませんか…」

「……あ、すみません」

咳ばらいをして俯き小さな声で呟いた

「あちらに行ってみたらどうなんです?貴女は好きな物を食べていたらいいでしょう」

「ああ、はい…あ、石神さんは何か食べますか?」

「いえ、私はなにも…必要ありませんから」

「プリンとかがいいですか?」

「…必要ありません」

照れているのか眼鏡の下が赤い

潜入捜査らしいが、一緒に潜入するはずだった婦警さんが他の現場に駆け付けてしまったらしく、時間を持て余していた私が相手役に抜擢された…−こんなのありえないと思う

「でも何にも食べないのも怪しいですよ〜」

「…ならば、アレで」

「アレ?」

指をさした方を見てみると、

「ホットケーキ?ですか」

「まあ、アレならなんとか食べられるかと」

「わかりました!一緒に持ってきますね」

張り切ってホットケーキを取りに来たのは悪戯目的もあったから
甘いものが苦手と言う彼に、デコレーションしたホットケーキを持っていったらどんな顔をするだろうか…−

ホットケーキを2枚重ねる、その間に生クリームとチョコレートクリームにチョコスプレーを挟んで、1番上にはバターとハチミツを少しだけ。
外側からクリームは見えない

いつも、クールで表情を崩さない石神さんがどんな顔するだろう?

「はい!どーぞ」

さっきのホットケーキが乗ったお皿をにこやかに差し出した

「…これはどうも」

「いえいえ…でも意外でした まさかホットケーキを注文されるなんて」

「…思い出の品、とでもいったところですかね」

「…思い出?ですか」

昔を懐かしむように、鋭かった目元が緩みやんわり笑顔を見せた

「祖母によく…作ってもらいました」

「石神さんの、おばあちゃんが」

「ええ、共働きだった両親に変わって面倒を見てもらっていました 甘い物が苦手な子供相手におやつには苦労してたようです 間食は子供には必要ですからね」

「……それは、素敵なお話ですね」

石神さんの話に夢中になって自分のした悪戯などすっかり忘れ去っていた

「ふっ、そう言ってもらえるとは思いませんでした…では、いただきますか」

「ああ…はいどう……っあ!」

今更思い出しても手遅れだ
懐かしむ表情のままに一口大に切り分けたホットケーキを口へ運んでしまった

「…?なにをそんな…っ!なっ!こっこれは」

「……あわわわ、すっすみません ちょっとした悪戯で…そんな良い話があるなんて思ってなくて」

「………甘子さん」

「はい…あの、これどうぞ」

ソロリと水の入ったコップを差し出した

「……」

一気に飲み干したコップをテーブルに静かに叩きつけて 鋭い視線を上げてじっと見据えられた

−その無言が怖いんですけど

「…今夜は、覚えておいてくださいね……しっかり、躾し直さなければならないようですので」

「なっ!それは……」

願ったり叶ったりだったりして…


今宵、









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