クマとウサギと、チキンピラフ。 鶏肉、玉ねぎ、マッシュルーム。 バター、コンソメ、塩コショウ。 私は食材を調理台に並べ、一人頷いた。 チキンピラフなんて作るの初めてだけど、後はすば…『くまたんえぷろん』さんのレシピに沿ってやればいい。 本格ピラフのワンポイントも書いてある。 『お米は水ではなく、熱いスープで炊くこと!そうすれば炊きムラなくふっくらとしたピラフになりますよ♪』 うーん、主婦になりきってるなぁ… 昴さんと付き合う人はすごく大変か、すごく幸せかのどっちかだろうな…なんて思いながら、玉ねぎの皮を剥き始めた。 でも、どうしてこれで、海司の気持ちがわかるんだろう? 剥いた玉ねぎを見つめて考えていると、ボーッとしてきた。 私は、ハッとして包丁を握った。 式典の後は大学に行って、今年落とせない講義を受け、それからスーパーへ寄って買い物して… かなり疲れていたけど、海司のためだから。 『ウサギさん』に、負けられないから。 水に浸したお米をお鍋で炒めて、スープを加えて、蓋を取らずに10分、炊き込む… 忘れそうだから、キッチンタイマーの代わりに、携帯のアラームをセットした。 その間にもう1品、『くまたん』オススメのトマトスープを作る。 玉ねぎの残りとキャベツを刻んでお鍋に入れ、ホールトマトで煮込む。 と、アラームの前に、玄関のチャイムが鳴った。 海司だ、と濡れた手を拭いて玄関へ行こうとすると、ガチャ、バタンと玄関のドアが開閉する音がして、 「なんで開いてんだよ!」 ガチャ!とリビングのドアを開け、怒った海司が現れた。 「うそ!開いてた…!?」 「たく、オレじゃなかったらどうすんだ!バカ!」 険しい顔で近寄ってくる勢いに、もう一声罵倒されるかと身を固くすると、 ガバッ、と抱きしめられた。 「か、海司…?」 私は少し混乱しながら言った。 まるで久しぶりに会ったかのような抱擁。 昼間、式典でも顔を合わせてるのに。 「…甘子のエプロン姿、可愛すぎんだよ」 耳元で海司が呟いて、私の胸はズキンと痛んだ。 もしも海司が浮気してたら。 このセリフ、『ウサギさん』にも、言うのかな… 海司が私の顎に手をかけて、私は潤んだ目を上げた。 私の目を見て、海司は眉をひそめた。 「甘子…お前」 ♪〜♪〜♪〜!! 「きゃあっ!」 セットした携帯のアラームが思いのほか爆音で鳴り響いて、驚いた私は思わず海司にしがみついた。 |