白の、子守り歌 「あー・・・何が、いけなかったんだろ・・・わっかんねーや、ちくしょー・・・」 あはは、と無邪気に笑いながら天を仰いだそらさんを、両の腕で抱きしめた 無理に上げた口角の横を滑り落ちたのは、後悔の流れ星 「きっと・・・ほんの少し迷ってしまっただけ・・・目指す星を見誤っただけ・・・それだけです」 そらさんが暗闇に輝くひとつの星を目指したように、彼もまた、別の星を目指したのだろう 自分の信じる思いのままに 「あの人は・・・原田さんは、幸せ、だったのかな・・・」 信じたかった 最後の最後まで、ただ信じていたかった それでもどうすることもできなかった、互いの生き方 伸ばすことのできなかった腕を、掛けることができなかった言葉を そらさんが選んだ今の生き方を、原田さんが責めることはしないだろうと、私は思った そらさんの問いに、私は私の信じるものをぶつけてみる 「そらさんが、今のままでいてくれることが、原田さんにとっての“幸せ”になるんじゃないかなって、私は思います」 私の胸の中に埋めていた顔を驚いたように上げて、見開いた瞳が やがて静かに笑った 「・・・・・ありがとね、甘子ちゃん」 私の唇に、そらさんは口付けをひとつ落として「これでやっと眠れそうだよ」と呟いた 淡く溶けた痛みを抱いて、私たちはひとつの毛布に包まった 暗い闇の中でも離れることのないように、互いの背中をしっかりと抱いて 部屋の中を仄かに漂うミルクの甘い香りが、眠気を誘う 「オレ、SPになって良かった・・・。ありがとう・・・オレに・・・生きる・・・・意味・・・を、くれ・・・・て・・・」 寝息交じりの声が途切れて、部屋に夜の静寂が訪れた 眠りに落ちたそらさんの顔は、穏やかに微笑んでいるように見えた 夢と現実の狭間に零れたその言葉は、私に向けたものなのか、それとも“お世話になったお巡りさん”に向けられたものなのかわからなかったけれど 届いている 隣に居る私の胸にも あなたが追い続けた星の光のその先へも 「おやすみなさい、そらさん」 痛みはきっといつの日にか、消えて無くなる ひとつひとつ、冷たい夜を越えるたびに ひとつひとつ、明るい朝を迎えるたびに そして あなたが、また笑顔で星を目指して歩き出せるように 私はいつでもあなたのすぐそばで謡おう 白の、子守り歌を。 |