MISS YOU 《甘子Said》 玄関の鍵を回す音がした。 帰って来た! お帰りなさいって、大地さんに飛び付けば。 ただいまの言葉と共に、啄むようなキスが降ってくる。 抱き締めてくれる、その頼もしい腕に、あぁ、やっぱり、私はこの人無しでは、生きていけないんだなと、思い知らされる。 ごめんね、昼間、今日は家で食事しようって言っちゃって。 でもね、今年は、2人っきりで、バレンタインを過ごしたかったから。 大地さんの前に、イチゴタルトを出してみる。 「…全部、甘子が作ったのか?」 そうだよ、生クリームも、中のカスタードも、タルトの部分も。 市販のモノは甘過ぎて、大地さん苦手でしょ? これはね、タルトの部分は、お砂糖入れてないの。 クリームと、カスタードとイチゴの甘さで補ってね。 そう言ったら、後ろから、フワッと抱き締められて。 耳元で囁かれる、大地さんの甘くて、低い声。 「…ありがとう。」 あなたの声は、何よりも甘く、私の心を、身体を溶かして行くから。 その蕩けそうな、言葉と声に。 やはり、お砂糖入れなくて良かったと思ったのは、大地さんには、内緒にしておこう。 . |