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毎週金曜日は高校に入ってから一人暮らしを始めた侑士の家に泊まる事が習慣になっていた。
土曜、日曜と一緒に過ごし、学校がある日は出来るだけ一緒にいられるようにしている。
「景吾。ジャム、ラズベリーでええ?」
「ああ」
土曜日の朝は大抵侑士の作った朝食を食べて部活に行く。逆に日曜日は俺が作ることが多い。理由は……想像に任せる。
「景吾、どうかした?」
「いや、何でもない」
「ぼーっとしとるなんて珍しい」
そういって笑われるのは余りいい気はしなかったが、笑う侑士の口元に真っ赤なストロベリーのジャムが付いていたので引き寄せて舐め取ってやった。
「なっ……!」
「あめぇ」
顔を真っ赤にして口をパクパクする姿に笑いながら、何事も無かったように食事を続ける。
「付いとるなら口で言えばええやん!」
「良いじゃねぇか。減るもんじゃねぇし」
「そうやなくて……恥ずかしいやん!」
未だに顔の赤みが消えない侑士は唇を軽く尖らせながら、ぶつぶつと文句を並べた。
可愛らしいじゃねぇの。
などと思う自分に思わず笑えた。
「なん笑っとるん……」
「いいや。相変わらず可愛いってな」
「っ馬鹿にしとるやろ!」
またも顔を赤らめ怒る侑士に微笑む。
「俺が可愛いと思うのはお前だけだからな」
唇に触れるだけのキスを落とすと『男に可愛いなんて嬉しくないわ』と照れ隠しのようにそっぽを向いた。
馬鹿だな。
世界一で愛しているのはお前だけ。
愛しい恋人以外可愛いなんて思えるかよ。
耳元で囁くと侑士は勢いよく立ち上がる。
「きっ着替えて来る!」
うなじまで朱くした後ろ姿に愛おしさを改めて感じた。
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