突発的 | ナノ


▽ 「だって、私のことを愛してくれてるんでしょう」


最近、ほんの少し前から、かなり前から。
いや、もう付き合う以前、
生まれた瞬間から名前はあんな風だったんじゃないか。と思う。


でも、でも、やっぱり名前を好きで。
あんな名前をどこかで許していたんだ。

受け入れずにちゃんと嫌だといっていればどうなっていたんだろう。
そんなことをいって、今更直すことはできないとわかっているから、
彼女のそんな所も好きで、止められるのは自分だけだから
今日も名前の指示通り、なるべく他人を視界にいれずに過ごす。


もし入れてしまってその相手が殺されてしまうなんてことがあれば、
もうどうすればいいかわからない。




進退疑うことなかれ。





これは僕の心意気だが、全てを疑いたくなる。
そんな僕、神崎左門は苗字名前が好きで、愛している。



「左門、苗字が重くないの?」

「何言ってるんだ、藤内!名前はくのたまの中で一番軽いぞ!」

「そんなわけないじゃん・・・って違う!
苗字が嫌じゃないのかって聞いてるんだ!」

「嫌じゃないぞ!大好きだ!
だから、これからも離れることなんてないしずっと一緒だ!」



そんな名前を嫌わないでくれ。
アイツは脆いんだ。
本当は怖い、誰かが離れていくのが怖くて怖くてしょうがないと思っているんだ。
だから束縛して自分だけのものにしてしまわないと怖いんだ。



「まぁ、左門がそういうのなら・・・俺は止めないけど」

「おう!気にするな!じゃあな、藤内!」

そろそろ名前のところへいかないと。
寂しくて死んでしまわないように。








「名前!」

いつも通り適当に待ち合わせしていた場所へ。
あと数十メートル。

「おい、神崎!」

誰かに話しかけられたけど田村先輩でも潮江先輩でもないから無視。
みたら怒られてしまう。

「三年のくせに生意気な!こっちみろ!」

「あ」


名前の前でなんて自殺行為をするみたことのない六年生の先輩。
意図的にみてないから僕は大丈夫だけど、この先輩どうなるんザシュ
鈍い音がしたと思ったら目の前は先輩の顔から広い空になっていた。
視界の隅にうつるのは首。顔はない。



「何コイツ。左門が汚れちゃった。
強引に左門の顔を自分に向けるだなんて横暴すぎじゃない。大丈夫?左門」

「あ、あぁ。大丈夫だ」

「そう、それならよかった」



血まみれだけど綺麗に笑う名前。
人を殺したのに罪悪感のひとかけらももっていない。
けれどどこかそんな名前に惹かれる。
どうやら僕は感覚が狂ってしまったようだ。
どれだけ今大変なことをしでかしたのかわかっているけれど名前に見とれる。
でも、やっぱり怒らないと。



「名前、こんなことしたら学園から追い出されてしまう。それに殺したらいけない」

「大丈夫よ?私には左門がいる場所から離れはしないし。
殺さないと左門を見る害虫が増えるもの。当然のことだからいいの」

「それでも・・・」



「本当に大丈夫。だって、私のことを愛してくれてるんでしょう?」



「それは愛しているが「なら大丈夫。貴方が私を愛す限りどうにでもなる」・・・」



そのあと、生徒に、先生に、学園全体に伝わり
名前は連れていかれたけれど何事もなかったように帰ってきて、
何も処分はない、と笑う。

何をしたのかしらないが本当に何もなく日は過ぎる。
名前を怖く思うと同時にますます好きになった気がした。

自分もとうの昔から毒に浸っていたのかもしれない。

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