怖い。ただそれだけ。
家族としてそれはどうかっていうのはわかってる。
でも、怖い。兄上が、

怖い。


「数馬ー、大丈夫か?」

こけた僕を心配するように聞いてくる。
でもその言葉は僕にとっては

「そんなとこでこけるなんて体大丈夫?おかしいんじゃねぇ?」

って言ってるようにしか聞こえない。それに僕はいつも怯えをなして

「大丈夫ですよ、兄上」

との一点張り。いつ「なんで同じ言葉しか言わないの?馬鹿なの?」
と聞かれてしまうのが不安だ。

「気をつけろよな、お前危なっかしいんだから」

あぁ、ごめんなさい。怒らないで、兄上。

黙って先を歩いていく兄上の姿に胸をおろす。
怒られなくてよかった。


それにしても、兄上となぜ行くことになってしまったのだろう。
怖い、怖い、怖い。


「欲しいものある?」

それはどういうことですか。貸しをつくる気ですか。
この前、買ってやっただろ。という気ですか。
そう考えると何も言えなくなる。

「ちっ、しょうがないな。団子でいいな」

いつも二人のときには最終的に兄上が決めてくださる。
喋っていないから呆れられているかもしれない。


団子を食べながら考える。
なぜ兄上をこんなに怖がるようになったのだろう。
思い返してみると浮かんでくるのは、
髪の色でいじめられた時。


僕みたいな色ならまだしも兄上は血に染まったような髪の毛。
斉藤先輩でも見たことがないと思う。

そして、誰かに聞かれた。
「なぜ、血を頭からかぶっているんだ」

この問いに兄上は本気か冗談かわからないような笑みをたたえ

「人を殺したから」

そのあと兄上は冗談だといっていたけど、
僕にはそんな風に思えなかった。

確かに、人を殺したように見えた。見えてしまった。

そうなると本能が僕に告げるようになった。


人殺し。下手な態度をとると殺されるかも知れない


それから、兄上が違うものに見えて、怖かった。


忍術学園に来た時には本当に殺されてしまう、と思うほどに。
愛用の武器を家に忘れ(忍者に向いていないのかも)
小松田さんに兄上がきているとよばれて何かと思ったら僕の武器を手に持つ兄上。


僕に選択肢は一つしかなかった。

そうとわかったら即行動。


土下座。先輩とか藤内達とか下級生がいるけど関係ない。
兄上のまえではプライドとか本当に関係ない。

それぐらい怖いんですから、先輩。殺気しまってください!!


土下座しながら謝る。少しの間何も兄上が言葉を発さなくて死にそうだった。
少し間が空いてから「いいから土下座をやめろ」との命令が下り許された。

あの時はそのまま帰ってしまって、何も言わなかったから長期休暇で実家に帰るときには恐れと不安でいっぱいだった。
乗り越えたから今があるんだけどね。

回想してたらいつの間にか忍術学園前。
無言なのはいつものことだった。

「ついたんだよ、気付け」

「あ・・・、はい、兄上。送っていただきありがとうございました」

「はっ!気にするな。また送ってやるから(なんで俺が・・・)」


え、そんなの無理です。いやです。心の中で嫌がってるし。
「いえ、お手を煩わせるわけにはいきませんので・・・」

その言葉を聞いた兄上はなぜか急に頭を揺さぶりだして。
でもそれが撫でていることに気付いた時、


あれ?なんか優しい?


見上げると兄上の顔は怖くなくなる前のすごい綺麗な笑顔だった。

「数馬、頑張れよ!」

去っていく兄上はまた怖い人に戻ったように見えたのに。
なんだろう、胸があったかい。



「はい、名前兄」






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