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ちゃんと正しく生活してた、と思ってたのにな僕。
酷いじゃないですか、仏様。
こんなの不公平ですよ。


「・・・君の心臓は冬までもつかもたないかだろう」


秋、実家に帰って数日たったある日。
僕は体調を崩した。かかりつけの医者に行った。
そこで、僕は宣告をされる。

その日僕が感じるのは、肌寒い風と鈴虫の声だけだった。







僕は禁断な恋をしていました。
仕えるはずの相手に恋をしていました。
いけないことだとはわかっていました。
それでも彼女の笑顔に惹かれ続けました。

彼女は僕の1つ上で、先輩でもありました。
一国の城の姫であるために護身術や作法を身につけると自分から申し出て、
身分を隠してこの忍術学園に在籍しておられます。

僕は彼女の監視役でもありました。
だからなるべく関わらないようにしていました。

影が薄く、特定の人物以外と関わらない僕と、
明るく優しく、誰にでも接する彼女が、
関わることなんてどこにもなかったのですが。

ですが、それもあっけなく崩れ、
しまっておいた恋心が引き出されてしまいました。


「三反田君、大丈夫!?」

「ここらへんは喜八郎が掘った穴ばっかりだから気をつけて」

「三反田君はいつも危なっかしいなぁ」



合う回数なんてほかの誰よりも少ないのに名前を覚えてくれて、心配してくれる。
たったそれだけで心の奥底から喜びが溢れてくるのだ。
やっぱり僕は、彼女に恋してる。
今なら、彼女に───







言えるはずがなかった。
口に広がる鉄の味。
ふいに医者の言っていた言葉を思い出す。

「血を吐いたら、もう残り少ないと思いなさい」

治せなくてごめんね。と言われたのはついこの間だ。
もう、僕にはあと少ししか残っていない。
だったら、彼女に尽くしたい。
誰にも何も言わず、置き手紙だけを残して学校を飛び出した。
学費は一括ではなく毎月払っていたのでお金を余すこともなさそうだ。
実家に戻り、冬休みに帰る姫を待つ。
家族は察してくれたらしい。何も言わなかった。


冬休み、彼女は帰り普通に過ごした。
雰囲気は暗く、お付きのものが聞いたところ好きな人ができたらしい。
相手は聞いていないが、きっと四年生の誰かだろう。
ただ、その人は学園を辞め家に帰ってしまったらしい。
どうしてその人は帰ってしまったのだろうか。




冬の中頃、学園に向かう彼女を護衛するのは三反田家の忍で、
僕も混じっていた。冬までもってくれたこの体にすごく感謝したい。





好きな人に思いを馳せる彼女を傍目に僕は、刺客に、

散り逝く命なら、君の盾になって死のう。
(心臓に刀を刺された僕に姫が号泣していたことを僕は知らなかった)

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