「どうしたの、長次」
そう問いかけてくる名前はとてもきれいだった。
「長次、バレーしない?小平太に誘われてるんだけど一緒にやらない?」
いつも元気な名前。
「ほら、そこ違うってば。ちょっと長次手伝ってよ。
馬鹿伊作と馬鹿小平太の脳みそはどうなってんの?
一年生とあまり変わらないんじゃないの」
賢くて人をけなすことだってあるが
本心では思ってないしちゃんと教える優しい名前。
「あはは、冗談よ。そう怒らないでよ文次郎。
留三郎もそれにつっかからないの。長次の冷静さを見習いなさい」
普通の軽口を叩いて明るくてみんなに諭す名前。
「こら、仙蔵。酷い目にあったからって一年生をいじめないの。
長次や留三郎みたいに優しく接しなさい」
怒る時も怖く怒らず優しく怒り下級生にも慕われる名前。
どの名前も愛しくていつの間にか恋に落ちていた。
しかし、そう気付いた時にはもう卒業がせまっていて。
私は南へ。名前は北へ。もう、会えないかもしれない。
「もう、卒業か・・・。短かったね。
長次とも会えないのか・・・。あ、桜が散ってる。
あれって狂い咲きで少し早く咲いちゃった木だったよね。
なんか、儚いよね。散る姿も、六年間も」
「・・・・・そうだな」
これから先、名前と一緒にいた思い出も、
名前に対しての思いもこうして儚く散ってしまうのだろうか。
「そんなに考え込んでどうしたの、長次?」
「・・・・・なんでもない」
素直に好いているとはいえず、離れてしまうこの私を許してくれ。
散っていく 桜も君への この思いも